前回のブログを書きながら、僕は彼女と母ががんの検査と診察でたどった過程をよく思い出してみました。

そして、大病院のデメリットはやはりあると思いました。

自分で文章を書きながら、「良心的と言える医者はほとんど開業医だったな・・・」と思ってしまったのです。

 

大病院やがん専門病院、大学病院には大人の事情が渦巻いています。

大病院の中で、医師がその病院の方針を超えて誠実な診察や治療をしてしまうと、出る杭として打たれてしまうことがあるのかもしれません。

病院の方針に反するまで行かずとも、目上の医師の方針と違うことをしてしまうだけで、医師間で問題が起きてしまうかもしれません。

ある医師が大病院の中で誠実さを発揮すればするほど、その大病院の中の不誠実な医師の不誠実な部分が目立ってしまうのです。

大病院の中で、医師たちは足並みを揃える必要があるはずです。

そして、大きな病院ほど、全体の方針は無難になり防衛的になるはずです。病院には経営の問題があるので当然です。

一人の医師の軽率な(誠実な)診察や無謀な(先進的な)治療で、その病院の評判を落としてしまうかもしれない。病院全体が訴えられてしまうかもしれない。

誠実な医師であっても、大人の事情が渦巻くような大病院の中にあっては、自分の誠実さの全てを出せないかもしれないのです。

そう、これまでのブログで僕としての結論を出していました。

 

ですが、このブログのコメントにも、大病院で信頼できる先生に出会ったと書いて下さる方も複数いました。そう心から思われている様子が文章から伝わってきました。

ネット上の書き込みを見ても、大病院の中でも誠実に頑張っていらっしゃる医師は少なからずいるようです。

原理的に誠実さが委縮してしまう可能性のある大病院の中にあって、自分の誠実さを貫かれている医師ほど、乳がんの患者にとって信頼できる医師はいません。

大病院の中での医師の誠実さは通常の2倍増しのくらいの誠実さと考えるべきです。

大病院には患者のことを第一に考える誠実な医師が少ないけれど、もし大病院で誠実な医師に当たった場合は、それは大当たりです。

その医師は誠実さと共に、周りから悪しき影響を受けない反骨精神も持っていることになります。

もしくは、その大病院は出る杭を叩かない、懐の深い病院なのでしょう。

どちらにしても、患者にはこの上なくありがたいことです。

 

 

大病院での乳がんの検査は正確だと思います。大病院は小さな地域の病院よりも、高価で新しい検査機器がある可能性が高いです。

それぞれの検査に専門の技師がいる可能性もあります。

正確な検査は正確な診断につながります。

これは大病院のメリットと確実に言えるところです。

また、僕はこのブログで何度も「大病院の治療方針は無難なものになってしまう」と書いていて、その結果「過剰治療気味になる」と言っています。

治療を少し多めにしておくことが、患者からクレームや訴訟の対策になるからです。治らない場合も「手を尽くした」とも言えますし、副作用が強い場合も、それは製薬会社のせいにできます。

しかし「無難」であることは、ある意味でメリットです。期待以上のものは得られないかもしれませんが、期待を大きく下回ることも少ないはずです。無難なのですから。

ただ、大病院の医師は、患者の治療以外のことまで気を回す必要がある分だけ、患者第一の診察や治療ができない可能性が原理的にあるかもしれません。

 

大病院で乳がんの検査、診察、手術や治療を受ける方は、大病院の特徴をふまえた上で立ち回ることをお勧めします。

 

 

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乳がんの治療をする上で、一番重要なことは経験豊富で信頼できる医師に出会うことです。

乳がんの治療に限らず、どんな病気の治療も、どの医師にかかるかが一番重要なことは当たり前のことなのですが。

僕は彼女の乳がんが発覚してから、どうしても良い医師に治療をしてもらいたかった。

某有名大学病院から転院して、満を持してがん専門の大病院で彼女の手術をしてもらいました。

ですが、今は主治医に不満だらけです。

どうしてこうなってしまったのか・・・

僕が疑り深い人間だからなのでしょうか・・・

 

自分で自分のことを理解するのは難しいことですが、多分僕は、人を心から信じる前に、その人を信じる理由を欲しがっているのだと思います。

「医者の測る」だとか、「医者は嘘をつくのか?」などと、医者嫌いになった僕は、このブログでさんざん医者の悪口を書かせてもらいました。

読んで下さった人を不快にさせてしまったかもしれません。

罪滅ぼしに、逆の発想で今回のブログを書いてみたいと思います。

 

僕が医者の誠意を確信できる状況はいくつもあります。どれをとっても、その一つがあるだけで、僕はその医師を全面的に信頼できます。

例えその医師が下した診断が誤診だったとしても、それでも僕はその医師に対する信頼を変えないだろうと思います。

間違えない人間はいません。間違えを認めて改める人間であればいいだけです。

その医師の診断や治療法が正しいか間違っているかより、その医師が患者のことを第一に考えてくれているかが重要です。それが医者を信頼できるかどうかの全てのはずです。

 

まず、以前に「人当たりの良い医者」の回のブログで書いたことなのですが、乳がんの診察や診断に関して「大丈夫だろう」と言ってくれる医師は、それだけで良心的と言えます。信頼できます。

驚くくらい、がん関係の医師からは「大丈夫だろう」という言葉は出ません。

医師側の都合からすれば当然です。がんのような命の係わる病気の診断や治療で、「大丈夫だろう」などと軽口は叩けないのでしょう。

なので、こうなります。

「大丈夫だろう」と言う医師の言葉は、自分の都合(自分の仕事の評価)とはまったく関係のないところで発せられているのです。

乳がんのような病気は、絶対に「大丈夫」かどうかなど、医師でも分からないはずです。もし大丈夫でなかった場合は、患者に恨まれるかもしれません。訴えられるかもしれません。

そういう危険を鑑みずに、患者を安心させる目的で「大丈夫だろう」と言っているのです。

さらに、何も考えずに適当に「大丈夫だろう」とは言うわけがありません。そこまで適当な医師は存在しないと思います・・・

「大丈夫だろう」と言える医師は、必ずその病気について経験が豊富なのです。医学的なことや統計的なこと以前に、経験則から自信をもって「大丈夫だろう」と言っている可能性が高いです。

誠実かつ経験豊富な医師でなければ、「大丈夫だろう」などとは簡単に言えないのです。

 

次に、がん関係の医師を信頼できることとして、説明方法が客観的である、ということが挙げられます。

医師が患者に病状なり治療方法なりを主観的に説明してくると、信頼できる熱意のある医者に見える場合があります。実際にその場合もあると思います。

ですが、これはそうでない可能性もあります。

熱心に自分の責任が発生しない治療法を勧めている場合ありますし、熱心に自分の医師としての成績が上がる治療法を勧めている場合もあります。つまりどちらか判断できません。

では、客観的に説明してきた場合はどうか?

客観的に病状や治療方法を説明してくれる医師は良心的です。ですが、これも単に自分がどちらかを強く勧めることを回避するだけの目的(つまり責任回避)かもしれません。

ただ、医師の客観的な説明の中に、患者のことを第一に考えている様子がうかがえることがあります。

例えば、客観的な説明をした上で、時間をかけてよく考えることを勧める場合です。

家族とよく話し合うことを提案してくれたり、何か別の判断する材料を示唆してくれたりすることです。

そういう場合は、この医師が客観的な説明をしたことは、患者本人の気持ちを尊重してくれたが故のことだと分かります。

他にもいろいろなケースがありますが、医師による客観的な説明の目的が患者本位である場合だと判断できれば、その医師は全幅の信頼を置くべき医師となります。

責任逃れの客観性かどうかを考えるべきです。意外と誰でもすぐに判断できるはずです。

 

何か信頼する根拠がなければ医師を信頼できないことは、あまりいいことではないのかもしれません。

ですが、僕ならば何らかの根拠を元に、僕と彼女が信頼できる医師を探したいです。

乳がんの治療は長期戦だからです。長期に渡って信頼できる医師を見つけたいところです。

 

 

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結論から言うと、医者は患者に対して嘘をつきません。嘘をつく必要がありません。

医者はわざわざ嘘をつかなくても、医学的な説明の仕方を自在に操ることによって、患者の考えを変えることができます。

 

以前にこのブログで書いたことなのですが、確率というものを正確に理解するのは非常に難しいです。そして乳がんの治療は基本的に確率でしか効果を測れません。

何もしなければ、20%の確率で再発するとして、ある治療法(予防法)でその再発率が10%に下げられる統計があるとします。

医師がこの治療法を患者にやらせようと思った場合、医師はこう説明すればいいのです。

「この治療法を行えば再発率は10%に抑えられます。治療をしなかった場合は20%も再発してしまします。治療しなかった場合の再発率は治療した場合に比べて2倍になってしまいます。」と。

治療をしない場合は、再発する可能性がとても高く聞こえる説明です。

逆に、医師がこの治療法を患者にやらせたくない場合は、医師はこう説明すればいいのです。

「この治療を行わなくても、あなたの場合は80%は再発しません。この治療を行った場合に再発しない可能性が10%上がって90%になります。80%で満足できない場合はこの治療をすることになりますが、副作用のことも考慮してこの治療を行うかどうか決める必要があります。」と。

この説明だと、そこまで効果の高い治療法には聞こえません。

 

これらの2つの説明はどちらも同じことを言っています。

どちらの説明をするかによって、医師は患者の治療に対する意思をコントロールすることができるはずです。

 

この確率的な例え話は以前このブログで書いたことです。

これを書いた当時は、「こうやって医師は患者をコントロールしちゃう可能性があるかもね」くらいの気持ちで書いていました。僕と彼女は主治医を疑ってはいましたが、患者をコントロールしようとしている確信はなかったです。

しかし、その後も同じような診察と説明があって、彼女と僕は主治医がとにかく治療を多くやらせようとしていると確信しました。

彼女がなるべく少ない治療を望んでいるにも関わらずです。

 

 

嘘は相手を騙すことが目的であり、なぜ騙すかというと、自分の都合の良いように相手を操るためです。

医者は嘘をつかなても、患者の治療に対する考え方をコントロールできる立場なのです。なので、嘘は基本的につきません。

自分で言うのもなんですが、こういった考えは危険です。

なぜなら、医者が嘘をつかずとも患者の治療に対する考え方を変えることができると仮定するならば、逆に考えると、医師が患者の治療に対する考え方を変えようとした場合、それは医師が嘘をついていることと同等のことをしている、となってしまう可能性があるからです。

 

しかし、医師が患者の治療に対する考え方に影響を与えることは、本来の医師としての仕事でもあります。

患者の病気に対しての認識が甘い場合に、それを客観的に指摘できるのは、患者本人よりその病気に対する知識と経験のある医師しかいません。

そう考えると、患者は医師の言うことを素直に聞き、自分の希望よりも医師の勧める治療法を選択すべきです。

 

難しい問題だと思います。主治医を信じられなければ、患者は治療を任せられません。

医師は専門家であるが故に、病気について患者より詳しい。自分より詳しい人にすべてを任せることは、有効な方法の一つです。

しかし、乳がんの治療の目的はがん細胞の将来の増殖を確率的に抑えることで、その目指す確率が医師と患者で違う場合がある。

医師と患者の意見が違うと、医師が強引に患者を押さえ込もうとすることが起きる。

それを僕は前回のブログで、医師の悪意と表現しました。

そして、それは嘘をつく必要のない医師という立場からすると、患者の考えを無理やり押さえ込むことは嘘にも等しく感じられてしまいます。

 

僕と彼女は主治医に詐欺にあっているような気分でした。

先に挙げたように、確率的な数字の説明方法を自由に操り、こちらの希望を無視して、とにかく多く治療をさせようとしてきました。

そんなに彼女のことが心配ならば、「あなたを心配してるからこの治療法を勧めるのだ」と、遠まわしにでもいいか言ってみろと言いたかったです。

この医師からは、転移再発した場合にどうなるのかの説明は一切なく、全摘と温存のメリットデメリットの説明も大してせずその場で決めさせ、抗がん剤の副作用の説明もなくルミナールAの彼女に抗がん剤治療を勧めてきました。

そんな人間が患者である彼女の心配などしているわけがなく、心配していないのに、ひたすら考えられる治療法はすべてやれと言ってきたのです。

 

話を戻します。

医師が患者の望む治療法を否定してきた場合、当たり前ですが、医師が患者のためを思って言っているのか、自分の都合で言っているのか、どちらかです。

その二つは完全に正反対なのですが、素人である患者から見ると、簡単には見分けが付かないことなのです。

患者は心から主治医を信頼して治療を任せるためにも、なんとかこれを見分けなければならない。

前回のブログで書いたように、患者の精神的なことを安易に否定する医師は、良くない方に見分けられる医師だと思われます。

それに追加して、今回のブログで言いたいことは「患者には難解な確率的な説明方法で患者の希望を否定する医師」も、悪い方に見分けられる医師です。

患者の希望する治療法を、患者のことを思って医師が否定する場合も、もちろんあります。

ですが、患者のことを第一に考える医師ならば、患者が理解できない難しい説明方法で、医師側の考える治療法を押し通すようなことは絶対にしないはずです。

 

 

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