彼女には中学生の時の同級生で、看護師をしている親友Sさんがいます。

Sさんは、今は遠く離れた土地で暮らしているのですが、彼女は電話やメールなどで今でも連絡を取り合っています。

そして、昨日そのSさんから彼女に電話あり、乳がんの話の流れの中で、彼女が僕と電話を変わってくれて、僕もSさんとお話をさせてもらいました。

Sさんはこのブログを読んで下さっていて、前回のこのブログの内容について、看護師の視点でいろいろなことを教えてくれました。

 

前回のブログ「信頼できない乳がん医師と信頼しない乳がん患者」での僕の結論は、乳がんの治療は確率的に行うもので、その確率に対する思いのズレから、医師と患者は信頼関係が築けない場合がある、というものです。

「乳がん治療で医師と患者が信頼関係を築けないことがある」という結論は、注意喚起としては成り立つと思うのですが、じゃあどうするの?ということを、僕はこのブログで書くかどうかを今まで悩んでいました。

 

彼女と僕は、乳がんの手術をしてもらった今の主治医と、まったくと言っていいほど信頼関係を築けませんでした。

乳がんの治療を行っている最中に、主治医が信じられなくなることは本当に辛かったです。

そういう辛い思いをしたくないのなら医師を信じるべきだ、となるかもしれませんが、こちらの意見を聞いてくれないのに、無条件で主治医を信じることは彼女と僕には無理でした。

そういった訳で、僕には彼女の乳がん治療を通して、主治医を信頼できなかった理由や、信頼できなかった辛さは語ることができます。

ですが、実際に上手く行かなかった彼女と僕の経験から、その反面教師的な意味だけで、「医師を信頼する方法」を方法論のように語っていいのだろうか?と思い、今までブログのテーマにはしませんでした。

 

そう思っていたところに、冒頭で紹介したSさんが、看護師から見た医師と患者の関係についていろいろ教えてくれました。

その内容が僕の考えていたことと一致する部分もいくつかあったので、今回のブログのテーマとして「医師を信頼するために」ということを書いてみようと思った次第です。

 

まずSさんが言っていたことは、大病院はとにかく忙しい、ということです。患者数が多いのです。

なので、大病院に務める医師はどうしても患者に対して流れ作業的になってしまう可能性がある、と言っていました。

非常に多い患者を、とにかくこなしていかなければならないのです。

これは経営的な視点からみると当然なのかもしれません。多くの患者が集まる病院であるからこそ、高価で最新の医療機器などを導入できるのです。手術経験の多い医師に手術をしてもらえるのです。

手術数や病床数、最新の医療機器の有無などはその病院を評価する材料にされています。ですが、そういったものが多く揃っている病院は、患者数も必ず多いわけです。患者が少なければ、高価な医療機器を入れるのは無理です。

大病院は患者数が多いから大病院なのです。手術経験の多い医師がいたり、最新機器があったりするから大病院なわけではないです。

ひとつの病院で患者数が多ければ多いほど、患者一人当たりの検査や診察、治療の時間は相対的に減ってしまいます。もしくは、診察と診察の間の日数や、手術待ちの日数が増えてしまいます。これは患者のデメリットです。

医師の側から見ても、患者が多ければ多いほど、患者一人ひとりに対するケアは減ってしまうことも仕方がないと言えます。大きく間隔が空いてしか会わない患者の顔は忘れるかもしれません。

(大病院について起こり得るデメリットは、過去に何度もこのブログで書かせてもらっています。「大病院のデメリット」)

 

ここまでは、僕の考えるような大病院のデメリットに、Sさんは概ね同意してくれていました。

そして、これに付け加える形で、とても興味深いことを看護師の視点から教えてくれました。

「務める病院に関係なく親身に診察する医師もいるし、逆にどんな環境にあっても流れ作業的に診察する医師もいる。でも、大病院では流れ作業的な診察になってしまう医師が多くなってしまう。それは患者が多く、次々に診察をこなさなければならないから、自然と医師がそうなってしまうから。そういう忙しいから流れ作業的になる医師は、患者から何も言わずに話を聞くだけだと、さらにどんどん流れ作業的になってしまう。そうではなく、こちらから意見や希望を言ったり、分からないことをしっかりと聞いたりすれば、意外と親切に対応してくれる医師も多い。

ということでした。

医師だって仕事で診察をしているわけで、慈善事業ではないです。なので、患者に説明をして患者が何も質問をしてこなければ終わりにしたいはずです。

また、どんなに親切な医師であったとしても、患者が何も言わなければ、患者が何を求め何を心配しているのが分からないので、それ以上のことを説明するのは無理です。なので、やはり説明は終わりになります。

つまり、大病院などの患者数が多い忙しい病院では、患者から医師に要望や質問などのアプローチをしなければ、自動的に多くの医師は流れ作業体制の診察に入ってしまう可能性がある、ということなのです。

このことは、乳がん治療において患者と医師が信頼関係を築く上での大きなヒントになりそうです。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

前回と前々回のブログで、僕は小林麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことを、色々好き勝手に書かせてもらいました。

情報の少ない中で主観的な内容で書いてしまい、読んで下さった方の中に気分を害された方もいらっしゃったかもしれません。

申し訳ありませんでした。

 

具体的な内容はいくつか書きましたが、全体として僕が麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことは、医師との信頼関係が築けなかったのだろう、ということでした。

僕自身が、僕の彼女の乳がん治療を通して「医師との信頼関係を築けなかった」と強く感じているので、それを麻央さんの治療歴に投影してしまっているのかもしれません。

ただ、現在の標準治療と呼ばれる多くの病院で行われている乳がんの治療の流れには、本質的に患者と医師が信頼関係を築けない危険性があると僕は感じています。

 

残念ながら、現在はまだ100%乳がんを治す治療法はありません。多くの治療法が開発されていますが、それらは、乳がんの進行や再発を確率的に減らすことができるだけです。

なので、乳がん患者に対する医師の説明は、「この治療法をすれば、再発率が~%下がる」などのようになります。全ては数字の話になります。

僕の彼女も、「手術後に何も転移再発の予防をしなければ、20%~25%の可能性で再発します。タモキシフェンを飲めば10%前後再発率を下げられます。」というように説明を受けました。

(まあ、実際はこのように明確には説明されませんでした・・・明確に説明してもらえなかったことで、僕と彼女は主治医に不信感を持ってしまうことになるのです・・・)

基本的に、乳がんの患者に対する医師の説明は確率的な数字を元にします。

また、前々回のブログで書いたように、乳がんは検査の段階でも確率的に処理されます。エコーやマンモグラフィー、MRIなどの画像の検査の結果で、確率的に乳がんの可能性の高い患者だけに、確実に乳がんかどうかを判別するための針の生検を行います。

 

そして、この確率というものは非常に曲者なのです。

確率に対する感じ方は人によって大きく違います。慎重なタイプの人から見た場合と、強気な人から見た場合だと、同じ数字の率でも全く違って見えます。

僕の彼女は恐ろしいほど強気なタイプで、「無治療で再発率が20%~25%程度ならば、75%~80%は何もしなくても治るということ。私はそれに賭けたい」と当初は言っていました。

逆に、「どんなに副作用があろうとも、転移再発率を1%でも下げられる治療法があるならば、その全てをやりたい」という乳がん患者も多くいるはずです。

 

つまり、患者によって、医師から提案される(確率的な)治療法の受け取り方が全く違う可能性があるのです。

しかし、医師からすると、副作用と効果のバランスを考え合わせた効率の良い治療法を、正しい治療法として患者に勧めるしかないです。

医師からバランスの良い治療法や検査方法が提案されたとしても、乳がんを強く心配する患者からは「どうしてもっとしっかり(完璧に)検査や治療をしてくれないんだ」と不満が出る可能性があります。

逆に僕の彼女のように強気な患者からは「10%程度、再発率を下げるために長い期間に渡って女性ホルモンを抑えるような薬を飲みたくない」と文句が出るのです。(彼女が今飲んでいるタモキシフェンは女性ホルモンを抑える薬で、5年間服用を続けることが一般的です。)

医師が誠意を持って忠実に職務の全うを目指したとしても、このように患者に不満を持たれてしまう可能性があるのです。

そして、多少なりとも医師側に大人の事情が加わってしまうと、乳がの治療において患者と医師の信頼関係が築けない可能性はさらに高くなります。

 

乳がんの治療は、医師から患者への治療法の医学的な説明とは別に、患者と医師の治療姿勢に対する話し合いが必要だと思います。

彼女と僕は、主治医と今に至るまで一切話し合いはできませんでした。

「先生から提案していただいた治療法の重要性は分かります。ですが、彼女の心理的な抵抗感から、その治療法はやりたくないです。やらない場合のリスクはどのくらいになるのでしょうか?やらないという選択肢はありませんか?」という問いに対して、

「病院側としての治療法はこれをすることです。患者側が治療を拒否するのならば、治療を病院側が強制することはできません。ですが、治療を受けない場合の責任は持てません。」

という回答以外には一切返ってきませんでした。

 

僕の彼女は比較的、自分の乳がんを恐れていないです。

ですが、乳がんが発覚してとても心配になる女性は多いはずです。

また、僕にはなかなか分からないことですが、乳がんが発覚して女性としての悩みを持つ患者も少なくないと思います。

そういった乳がん患者に対して、医学的な正論のみを押し付けようとする医師は非常に危険です。

そもそも、乳がんの治療は確率的なものです。

乳がん治療で得られる確率的なメリットの中に、患者本人の心理的なメリットも含めて、全体の治療方針を医師と患者でよく話し合うべきだと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

僕がネット上で知りえた小林麻央さんの乳がん治療の情報は多くはありません。

ですがその中の一つとして、麻央さんがガンマ線を用いた四次元ピンポイント照射というものを受けていたことは、かなり確度の高い情報だとネット上ではされているようです。

僕にはこの四次元ピンポイント照射という技術を批評するような知識はありません。なので、この治療法にどうのこうの言うつもりはありません。

ただ、これを行うクリニックのホームページにある、同クリニックの紹介文章を読んでみると、どうやら乳がんの標準治療を受け入れたくない患者のための治療法という位置づけにしているようです。

僕はこの話を聞いて、僕の彼女の乳がん治療を通して感じた問題点が、そのまま麻央さんの治療歴にも当てはまっているような気になりました。転移に対する誤解だな、と思いました。

 

僕の彼女は転院したことや同一医院内で何人かの医師の診察を受けたことで、トータルでは5人の乳腺科の医師に乳がんの説明を聞いたことになります。

その誰一人として、乳がんの転移について詳しく説明をしてくれませんでした。

がん治療の中で転移はその中心です。ステージⅢを含みそれより前の乳がんならば、その後に遠隔(他の臓器への)転移しなければ、命に係わることはありません。

なので、乳がんの治療はステージⅢより前ならば、治療のすべては、遠隔転移を阻止するための治療だと言えます。ステージⅣでも転移巣をそれ以上増やさないこと(それ以上の転移の阻止)が治療の目的の大きな部分です。

つまり、乳がんの治療は、遠隔転移を阻止するための治療だ、と言い換えられます。

なのに、彼女が診察を受けた乳がん医師の誰一人として、遠隔転移について詳しく説明してくれる人はいませんでした。乳がん治療で一番大切なことを、医師の誰一人としてまともに説明してくれなかったのです。

ネット上で実際の乳がん患者の書き込みを見てみると、これは彼女が診察や治療を受けた医師達に限ったことではないようです。

日本で乳がんの標準治療を受ける限り、遠隔転移の原理を詳しく説明してくれる医者の方が、むしろ珍しい存在のようです。

 

遠隔転移とリンパ節転移は意味合いがまったく違います。命に対する危険度も大きく違います。ですが、実際の乳がん患者で、主治医からこの違いを詳しく説明してもらって、自信をもって他人に二つの違いを説明できる人は少ないはずです。

また、転移再発と局所再発の二つについても、意味合いや命の危険度も全然違います。この二つについても、実際の乳がん患者であったとしても、違いを詳しく説明できる人の方が少ないはずです。

「転移すると危険」「再発したら恐い」くらいの認識の方も多いはずです。少なくても、自分で乳がんについての勉強を積極的にしなかったのならばそうです。

日本の乳がん専門医は、なぜか、これらのことをあまり説明しないのです。

とても大切なことのはずです。これらの違いをしっかり理解することで、乳がんの治療方針を決めることができるはずです。

逆に言うと、これらのことをしっかり理解していないと、患者自らに治療法の選択の余地など生まれず、ただただ医師の言うままの治療法を受け入れるしかなくなるのです。

 

もし、仮に乳がんを発見しても、乳房にメスを入れたくないと思う方もいるかもしれません。抗がん剤治療を受けるのに抵抗がある方もいることでしょう。

そして、そういう人達を受け入れる目的で、冒頭の四次元ピンポイント照射で乳がんを治療するクリニックがあるようです。

そこで先進の医療であるガンマ線を使った四次元ピンポイント照射を受けたならば、もしかすると、乳房に対する通常の外科手術と同等か、それ以上の治療がメスを入れずにできるのかもしれません。(どの程度体に負担がなく、どの程度がん細胞の取り残しがなく治療できるのかは、僕には分かりません。)

ただ、それは乳房に対する局所の治療であって、全身に対する遠隔転移のための治療ではないです。どんなに上手く行ってもです。

その治療だけで終わった場合は、全身にする遠隔転移のための治療は一切やっていません。無治療です。乳がん治療で一番大切な遠隔転移を阻止するためには、何一つ対策を講じなかったことになるのです。

全身に対する遠隔転移阻止のための治療は、今のところ抗がん剤治療をするかホルモン療法をするか、分子標的薬を使うしかありません。

 

僕の彼女は、このことについて誤解をしていました。そしてその上、乳がんの治療自体にあまり積極的ではありませんでした。

彼女は無治療を望んでいたのですが、乳がんが発覚してから手術はしました。「手術したのだから、もういいでしょ」と思っていたフシがあります。

乳がんの手術は乳房にあるがん細胞を取り出すためのものです。乳がんは乳房から別の臓器に転移しなければ、命の危険はありません。

ですが、手術をした時点で、現在の検査機器では発見できないくらい小さいレベルで、すでに転移しているのかもしれないのです。

そのために、乳がんの手術後は全身に対する治療をします。抗がん剤治療やホルモン療法や分子標的治療です。

乳がんで転移を阻止する(=命の危険を回避する)ための治療は、手術が終わってからも続きます。むしろ、転移を阻止する(=命の危険を回避する)ための治療は、手術が終わってから本格的に行われる、と言えるかもしれません。

なので僕は、無治療を望む彼女に対して、何とかホルモン療法をやってもらうように説得をしました。転移に対する誤解を解く説明を続けました。

現在彼女はホルモン療法を始めています。

僕が自分で言うのもなんですが、もし僕が彼女の転移と再発に対する誤解を解かなかったならば、彼女は手術後に無治療を選んでいた可能性が高いと思います。

そのくらい、どの医師からも転移について説明を受けませんでした。

そして彼女の主治医は自分の思う治療法を彼女の意思に反して押し付けようとしてきたので、気の強い彼女は、反発心からも全ての治療を拒否していた可能性も現実的にあったと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

PAGE TOP