温存か全摘か

乳がんで「温存療法」というと、それは乳房の部分切除をすることを意味します。「温存」というとまったく切らなで治療するように聞こえますが、そうではないです。

「全摘」と聞くと、女性にとって大切な胸を失ってしまう悲しい治療方法、「温存」と聞くと、乳がんにはなったけれども、見た目を変えずにきれいに治るありがたい治療方法、と思ってしまいますが、現在ではその限りではありません。

どちらの手術の方法も一長一短で、最終的には患者本人の意思で決めることになります。ただ、温存手術には一定の条件があり、それを満たさなければ温存手術はできません。

現在、温存手術が可能な乳がんの患者でも、全摘手術を行うことが普通にあるようです。その理由は「乳房再建」にあります。

乳房内の乳腺の大部分を摘出して、乳首や皮膚を残し、そこにシリコンなどを入れて形の良いきれいな乳房を「再建」する「乳房再建手術」が現在は多く行われています。2013年から健康保険適用されました。

温存手術ができる患者が全摘手術をする理由は、主に2点です。

一つは放射線治療です。温存手術を受けた患者は通常週5日、5週間前後の放射線治療を受けなければなりません。

これは乳房内の乳がん再発を減らす効果が確実にあるので、温存手術を受けた患者は基本的にこの治療を受けます。

放射線の照射自体の時間はすぐ終わるのですが、平日に一か月以上毎日通院するのは大変です。

仕事をしている人ならば、一時休職する必要も出てくるかもしれません。温存手術ができるくらいの乳がんの進行度で全摘手術を選んだ場合、放射線治療は必要ない場合が多いです。

温存手術ができる患者が全摘手術を選ぶもう一つの理由は、温存=部分切除後の乳房よも、全摘後に乳房再建をした場合の方が、乳房の見た目が良くなる場合があるからです。切った部分にシリコンを入れて再建をすることも可能ですが、どうやら一般的ではないようです。

切り取った乳腺の量や、切り取った場所によりますが、少しだけしか切り取らなければ、何も詰めずにもどしてもきれいになるようです。腫瘍が大きく、切り取る量が多くなる場合は、そのまま戻すと左右の乳房の位置や量が変わってしまいますし、乳首の方向も変わってしまう場合があります。

温存手術をしてもきれいに乳房が残るかどうかは医者の経験から予測するしかないです。元の乳房のボリュームがある場合や、腫瘍が乳房の上の方にある場合、腫瘍が乳首の近くにない場合などが、温存手術でも乳房がきれいに残る可能性が高い場合です。

Posted by oomura


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