彼女はタモキシフェン単独でのホルモン療法を始めました。

主治医からは選択肢として、抗がん剤やLH-RHアゴニスト製剤の話も出ました。僕と彼女は話し合った上で、どちらもしないでタモキシフェン(抗エストロゲン剤)だけにしました。

ルミナールタイプ(女性ホルモン依存型)の乳がんで抗がん剤やLH-RHアゴニストを使う基準はいくつかあります。僕は彼女にはその基準が当てはまるように思えなかったので、彼女にはどちらも勧めませんでした。

彼女自身はなるべく治療は少ないことを希望していました。

乳がんの治療法について、意外と医者によって言っていることが違う場合があります。そして今回彼女がしなかった、ルミナールタイプ乳がんでの抗がん剤とLH-RHアゴニストの二つの治療法は、医者によって言うことが違う典型的な例にあてはまるかもしれません。

 

まず、ルミナールタイプの乳がんでの抗がん剤治療について、僕が知りえたことを書いてみます。

基本はki67が高いか低いかでルミナールAになるのかルミナールBになるのかを決めて、ルミナールBでは抗がん剤治療を行うようです。

ki67は特定のタンパク質で、乳がんのがん細胞が増殖期にある場合にこのタンパク質が多く発現しているらしいです。なので、ki67によって乳がんの増殖能が分かるとされます。このタンパク質を染色してみて、全体のどのくらいが染まるかをパーセントで表したものが、ki67~%となるようです。

ki67が高いルミナールB型乳がんには抗がん剤治療が有効なのですが、そのki67がどの程度から高いとされるのかが、医師の間でいまだに議論されている状態のようなのです。

あまり適当なことは言えないのですが・・・どうやら少なくとも20%以下は低いとなり40%以上は高いと分類されるようではあります。

以前は14%以下が低いという分類だったので、もしかすると、これを基準に抗がん剤を検討する医師が今でもいるかもしれないのですが・・・

要するに、ルミナール型乳がんでki67が明らかに高いか明らかに低い場合を除くと、明確には抗がん剤の投与基準が定まっていないのが、現状の標準治療のようなのです。

抗がん剤治療は、乳がんの治療法の中でも一番デリケートにするしないを決めるべき治療法のはずなのにです。

患者から見ると、これはかなり困ることです。そして、僕と彼女のように、医師との話し合いがこじれる原因にもなり得ることです。

 

ki67が低くルミナールAだとなった場合は、基本的には抗がん剤の効果がほぼないことが分かっているようです。

ここで注意したいのは、ルミナールAというのは乳がんのタイプの分類であって、ステージとは別です。

ステージがⅡ以上である程度以上リスクが高いとされる場合であっても、サブタイプがルミナールAの場合は抗ガン剤治療をしない場合があるようです。

リンパ節転移が多い場合にはルミナールAでも抗がん剤治療をするようです。リンパ節転移はステージにも関係するので、話がややこしくなるのですが。

いずれにせよ、ルミナールAかBかの判断も医師によって違ってくることなので、ステージⅡやⅢのルミナールAの場合の抗がん剤の投与状況は、さらに医師間によって違いが出てしまうはずです。

 

これらのことを考えると、僕の彼女の乳がんの場合は、抗がん剤治療をするメリットがかなり低い場合のようでした。

主治医とは違う医者に聞いたところ、抗がん剤治療をするメリットはほぼゼロで、これで抗がん剤治療を勧める医師がいることが信じられない、というようなことまで言わしめました。

僕はこのブログで、もうずいぶん主治医の批判をしてしまったので、ここでは止めておきます。

ただ、抗がん剤使用についてはこういう場合も普通にあり得るとだけ、ここでは書いておきたいです。

僕の彼女の場合のように、ある医師は抗がん剤治療を勧めてくるのに、別の医師の考えでは絶対に必要ないとなる場合もあるのです。

ルミナール型乳がんの患者が抗がん剤治療をする場合は、慎重に検討するべきです。医師間によって意見が分かれるような場合も普通に存在するはずです。

その場合、僕は患者本人の希望を優先させるべきだと思っています。または、患者が自ら信頼できる医師をしっかりと選んでから、全てを任せるべきだと思います。

 

医師によって言っていることが違うということは、それについて現在はまだしっかりしたエビデンスが確立していないか、もしくは、どちらを取っても大きな違いはない場合のはずです。

それならば、患者自身の希望を優先させるべきです。

乳がんが心配でわずかにでも再発率を下げたいと思うのか、あまり副作用のある治療はやってくれるなと思うのか、患者によってどちらが納得できるかは違うはずなのですから。

 

 

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ようやく彼女のホルモン療法が始まりました。

タモキシフェンの副作用はどうなるか分かりませんが、一応これでやるべきことはすべてやって、後は結果を待つだけの体制になりました。

彼女が温存手術をしたのは約3ヶ月半前です。乳がんの告知を受けたのは昨年の11月の中旬くらいだったと思います。あれからもう半年以上も経ちました。

 

手術が終わるまでは、眠れない夜もありました。彼女本人はそんなことはなかったらしいのですが・・・

彼女に乳がんの疑いありとなった時点では、そこまで心配していませんでした。なぜなら、その約10カ月前に彼女は結構大きい胸のしこりを見つけて婦人科に行き、良性だと診断を受けてきていたからです。

また同じようなことなのだろう、とたかをくくっていました。

その上、それとほぼ同時期に、僕の母の咳が1か月近く止まらず、肺のレントゲンやCTには炎症と腫瘍の区別のつかない影が映っていたのです。

正直に言うと、母の方が心配でした。医者も腫瘍の可能性が高いので、肺の内視鏡をやろうと言っていました。

肺の内視鏡は他の内視鏡に比べるととても大変なものらしく、年老いた母には相当の体の負担になるものでした。それをあえてやるわけですから、画像からはかなりの肺がんの可能性が読み取れたということだったのでしょう。

そもそも1か月近くも治らない肺炎というのもめずらしいと聞いていました。

 

しかし、いろいろあって、母は肺の内視鏡検査を受けずに肺炎だったことが判明しました。そしてその直後に、彼女の乳がんが確定してしまったのです。

 

「例え乳がんだったとしても、まだ1cmだし早期発見なので大丈夫」というのが、初めにかかった地元の婦人科の医師の言葉でした。

ですが、針生検をやるために紹介された大学病院では、「2cmくらい」だと言われ、その後の針生検の結果から乳がんが確定したことと同時に「ki67が高い」となりました。

このころが僕が一番彼女の乳がんを心配していた時期でした。

最初に1cmだと言われてから2cmだと言われるまでに、1か月くらいは経っていました。今ならば、それは検査や診察の方法の違いからくる診断のズレだと言い切れますが、当時は知識がなかったので「大きくなってしまったのかも」という思いも捨てられませんでした。

ましてや、ki67=増殖能が高いということが分かってしまったわけですから。

そしてさらに、この段階で、父から勧められていたがん専門の大病院に転院するかどうかを決めることになったのです。

大学病院はとても有名なところでしたので、手術待ちの期間もそれなりにありました。ですが、がん専門の大病院の方に転院して手術を受けるのならば、それにプラスして1か月以上は手術待ちの期間が増えるとのことでした。

かなり悩みましたが、彼女と相談のすえ、がん専門病院に転院することに決めました。

この手術待ちの期間が本当に辛かったです。

1cmのしこりが2cmになったと勘違いしていたこと、ki67が高いと言われていたこと、そして、転院することが正解なのかどうなのか。思い悩みました。

しかし、患者本人の彼女より僕の方が乳がんを気にしたり恐れたりするべきではないと、自分に必死に言い聞かせていました。

 

つらい期間も過ぎ去り、手術を受けてからはかなり気が楽になりました。

まず、手術中のセンチネルリンパ節生検によって、リンパ節の転移がないことが確定したことが大きかったです。

そして、その後の病理検査の結果では、針生検では高いとされていたki67が14.7とさほど高い数値ではない(むしろ低い)と分かりました。

このki67という指標は乳がんの治療法を決めるために重要な指標ではあるのですが、まだ各医療機関でその測定方法や扱い方が明確には決まっていないという、なんとも厄介なものらしいです。

リンパ節転移がなく、ki67も低かった。彼女の乳がんの治療は望外に順調に行っているはずでしたが、この後、主治医になぜか抗がん剤を勧められて、また問題発生となってしまうのです。

 

しかし、それももうすっきり解決しました。解決して、彼女のホルモン療法開始です。

今は感無量です。

 

 

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ここまで長かったです。本当に長かった・・

彼女は無治療を希望し、主治医には抗がん剤を含むフルコースの治療法を勧められ、僕は右往左往しまくっていた手術後の3ヶ月半でした。

彼女は今日からタモキシフェンの服用を開始します。

 

タモキシフェンはノルバデックスにしました。ジェネリックも選択できるし、途中からでも変えていい旨の説明を受けました。

1か月服用した後に血液検査をして、副作用の有無を自覚症状と併せて調べることになりました。

副作用は少ないことを願うことしかできません。副作用の種類によっては、それを軽減できる漢方薬などがあると、このブログのコメントでもアドバイスをいただいています。

 

彼女が温存手術を受けたのは今年の2月の下旬です。再発予防のための治療を開始するまで約3ヶ月半もかかってしまいました。

まあ、その内の5週間は病理検査の結果が出るまでの期間です。そして一般的な場合でも1か月くらいなら治療法を迷ってしかるべき期間なのではないでしょうか。

その期間にプラスして、僕の彼女は主治医との話し合いが上手く行かなかったり、引っ越ししたりしていた期間がプラスされました。

もう、彼女は凄い胆力だとしか言い様がないです。乳がんの治療法を決めずに、普通に引っ越しを一から計画し始めたのですから。

乳がんで気が滅入って、それをリフレッシュするための引っ越しとかでは決してないです。更新の条件について大家と不動産屋にムカついたからです・・

引っ越しをしている間に乳がんのことを一切考えなかったおかげで、治療法について彼女とも主治医とも話し合いが上手くいかず、気が滅入っていた僕の心がリフレッシュされました。

 

彼女のおかげでリフレッシュできて、前向きに術後の治療法について話し合えた結果、タモキシフェンは飲もうということになりました。

彼女は当初タモキシフェンも飲みたくないと言っていました。ですが、病理検査の結果で彼女の乳がんのタイプはルミナールのAだと分かり、その場合はタモキシフェンの効果は絶大です。

他の治療法はさて置いたとしても、タモキシフェンだけはやろうと彼女を説得し、彼女も受け入れてくれました。

 

だからという訳でもありませんが、彼女の術後の治療はタモキシフェン単独にしました。放射線治療もしないことにしました。

主治医に提案してもらった抗がん剤やリュープリンもやりません。

 

彼女の乳がんの状態と、患者本人である彼女の意向を考え合わせれば、術後の再発予防の治療がタモキシフェン単剤であることは必要十分だと思います。

 

以下、彼女の乳がんの状態

組織型・浸潤がん(硬がん)
浸潤径・1.8cm
リンパ節転移なし
ホルモンレセプター ER+(PS5 IS2) PgR+ (PS5 IS3)
HER2 1+
ki67 14.7
核グレード 2
脈管侵襲 中程度

 

 

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