彼女の乳がんはルミナールAで、手術後無治療ならば予想される転移再発率は10年間で20~25%と説明を受けました。

そして、タモキシフェンを5年間飲むことによって、それが40%~50%くらい減らせるということでした。

別の医師に聞いたところでも、大まかには同じでした。なので、この数字は信頼性が高いと思われます。

しかし、「タモキシフェンを転移してから飲み始める」でも書いたことなのですが、タモキシフェンには遠隔転移自体を抑える力はありません。タモキシフェンはがん細胞を直接的には殺すことが出来ないです。

40%~50%も転移再発率が減らせるというのはとても大きいことだと思います。なぜ、直接的にがん細胞を殺せないタモキシフェンが、乳がんに対して高い効果を発揮するのでしょうか。

 

まず、40%~50%転移再発率が減らせるといっても、それは10年間での話です。本来10年以内に転移再発するところが、10年以降で転移再発するだけの分が、この「40%~50%」に含まれていると思われます。

これはタモキシフェンの服用年数の推奨を5年間から10年間に延ばすかもしれないと言われていることからも、示唆されています。

つまり、5年や10年、そしてそれ以上ととても長い期間の話なので、実感することは難しいのかもしれませんが、タモキシフェンの効果は乳がんの進行を遅らせるだけだという事実があるのです。医者はあまりその辺りを説明しないですが・・

タモキシフェンはあくまで乳がんの進行を遅らせるだけで、転移を阻止することはできないし、乳がんのがん細胞を殺す力もないです。

これはとても嫌な事実です。ですが、その事実によって、乳がんの治療方針や患者の乳がんに対する見方が変わる可能性があります。なので、僕は重要な事実だと思います。

 

このことによって分かることで、まず重要だと思われることは、タモキシフェンは残念ながら転移再発してしまった場合の方が飲んでいた価値が高かった、と言えることです。

「彼女はすでに転移しているかもしれない」の回のブログでも書いたことですが、乳がんで手術した後に転移再発が出る場合は、手術した時点ですでに微細な転移巣があったことになります。手術をしてがん細胞は取ったわけですから、当たり前ですが、その後にそこから転移はしません。

そして、手術した時点からタモキシフェンを飲んでいたわけですから、すでにあった微細転移に対して、タモキシフェンの「乳がんの進行を遅らせる」という能力を100%発揮していたことになります。

タモキシフェンを飲んでいたにも関わらず転移再発してしまった場合は、タモキシフェンの飲んでいなかったら、間違いなくもっと早く乳がんの転移再発が発見され、進行が早まっていたことになります。

そして、これにさらに付け加えると、転移再発を発見した以降も、それまでタモキシフェンを飲んでいたことによって、タモキシフェンを飲んでいたかった時と比べて、乳がんの進行が遅くなる可能性があります。

タモキシフェンを5年間服用するのと、10年服用するのを比べると、10年服用した方が効果が強いのですが、その差が15年目まで以上出る、という原理からそう言えるのではないでしょうか。

転移再発が出るまでの期間を延ばし、そして転移再発が出てからの進行も遅らせる。タモキシフェンは再発転移を抑える薬として認識されているのですが、むしろ再発転移した場合にその進行をすでに抑えていた薬、なのです。ちょっと日本語がおかしいですが。

 

これに対して、タモキシフェンを5年間飲んで再発転移が出なかった(発見されなかった)場合を考えてみます。

タモキシフェンを飲んで再発転移が出なかった場合に、その意味を大きく三つに分けることができます。

一つ目は、手術した時点でも今でも、微細な転移は一切なく、まったく転移はなかった可能性になります。はっきり言えば、この場合、タモキシフェンは飲み損です。

ですが、微細な転移巣を発見する医療技術が今のところありません。今の技術では、転移している可能性があるだけで、タモキシフェンを飲むしかないです。

おそらく、将来的には、微細な転移巣を発見できる技術も開発されるでしょうから、「あなたは転移がないので、タモキシフェンや抗がん剤などの全身に対する治療はしなくていいです」という診断が出るようになるはずです。

 

タモキシフェンを飲んで再発転移が出なかった場合で考えらえる状態の二つ目は、その時点では転移が出ていないものの、残念ながらいずれ転移が出てきてしまう場合です。

これも、残念ではありますが、タモキシフェンの乳がんの進行を遅らせるという効果が確実に発揮されている状態だと言えます。タモキシフェンを飲んでいなかったら確実に乳がんの進行は早まっていたはずですし、転移を発見した以降も、タモキシフェンを飲んでいなかったことに比べれば、進行が遅くなっているはずです。

 

タモキシフェンを飲んで転移再発が出なかった場合で考えられる三つ目は、タモキシフェンを飲んだことによって、微細な転移巣の進行が最大限に遅くなり、転移が発見されるまでの年数が天寿を超えることです。

あまりに乳がんの進行がゆっくりになり、ほぼ進行しなくなったのと同じ状態です。がん細胞が体の中にあり続けるのですが、それが分からないために、根治したことと同じ状態になっています。

タモキシフェンで乳がんの転移再発率が大きく下げられる理由は、この状態にあるのではないかと推測することもできます。

 

タモキシフェンは抗がん剤のような直接がん細胞を殺すような薬とはまったく違う経路で、転移再発率を下げることができる薬だと言えます。

 

 

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彼女がタモキシフェンを飲み始めてから、まだ一週間も経っていません。

副作用が心配ではありますが、薬が合うか合わないかは個人差の大きいところであって、どうにもならないところです。

今のところ「彼女は少し寝苦しいような気がする」と言っている程度で、強い副作用は出ていません。

これから彼女のタモキシフェンの副作用はどうなるか分かりませんが、僕としてはやれることをやっていくだけです。少しずつタモキシフェンに関する情報を集めて行こうかと思っています。

 

まず、タモキシフェンを一日の内で何時頃に飲むのが最適なのかを調べてみようと思いました。

医師からの説明だと、たしか「何時でもいいけれど、飲み忘れがないように朝飲むといい」とのことでした。

最初はなぜ朝飲むと飲み忘れがないのか理解できませんでした。よく考えると、これはおそらく、飲み忘れた時のフォローが朝ならばやりやすい、ということなのでしょう。

タモキシフェンを飲み忘れた場合の対処方法は、「気づいた時刻が、飲む予定だった時刻から長く経っていない場合は、忘れていた分を飲む。次回飲む予定の時刻に近かったら、一回分を抜く形にして、次回の分を予定通りに飲む」とのことでした。

つまり、いつも朝飲んでいたなら、日中に飲み忘れたことを気づけるかもしれない。いつも寝る前に飲んでいたら、その後寝てしまうわけで、飲み忘れに気付くのは早くても朝になってしまいます。だから毎朝飲んだ方が飲み忘れた時のフォローがしやすい。という理屈なのでしょう。

このことは、タモキシフェンを一日の内で何時に飲むかはほとんど重要ではない、ということの裏返しのはずです。

実際に医師も「何時でもいい」と言っています。朝飲めば飲み忘れのフォローができるよ、と飲み忘れのフォローを優先できるくらい、何時に飲んでもいいということです。

 

タモキシフェンは人によってはホットフラッシュに代表される更年期障害に近い副作用が出るようです。ネット上で検索すると、とても辛いという書き込みも多いです。

なので、少しでもその副作用を緩和させるべく、一日の内に何時に飲むかを考えている人も少なくないようです。

普通に考えると、薬を飲んだ直後にその薬の血中濃度が高くなるはずなので、飲んだ直後に副作用が最大になると考えます。なので、例えば眠れなくなる副作用が出ている人は朝飲んだり、日中に辛い副作用が出る人は、逆に寝る前に飲んだ方がいいと考えます。

ですが、これらの時間調整も効果が薄いようです。

なぜかというと、タモキシフェンは毎日飲み続けることによって、少しずつ血中濃度が高くなって行く薬なので、1錠を飲んだ血中濃度の上昇分は全体から見ると低そうだからです。

 

ノルバデックスの添付文書には、「約6~7時間で血中濃度が最高になった」「血中半減期が20~30時間だった」「1日20mg飲んでいると約6週間目まで血中濃度が上昇した」となっています。(添付文書をブログにコピペしていいのか分からなかったので、アバウトに内容を書きました。)

この「6~7時間で血中濃度が最高になった」という内容から「6~7時間後に副作用も最大になる」と考えてしまうかもしれませんが、これは間違いです。

これはおそらく、タモキシフェン20mgを1錠だけ飲んだ時の血中濃度のことを言っています。毎日飲み続けた場合は、そうはなりません。

血中半減期が20時間~30時間なので、これはつまり1日=24時間で、体の中にあるタモキシフェンの量が半分にしかならないということです。

タモキシフェンを飲んだ後、最高になった血中濃度を100とすると、1日目は飲んだ後にまず100になり、そこから24時間後に50になります。そこでまたタモキシフェン20mgを飲むわけですから、50+100で150になります。そしてその24時間後には半分の75になります。そして100足すわけですから175になります。

これはかなりアバウトな計算です。細かく見るとまったく正確な計算ではないのですが、要するにタモキシフェンは毎日20mg飲み続けることによって、少しずつ体の中にたまって行く薬なのです。

最終的に飲み始めてから6週間くらい経つと、それ以上は体の中のタモキシフェンの量が増えなくなるということです。

なので、一応「タモキシフェンの副作用は6週間経ってからが本番だ」と言えなくもないのですが、これもまた正確にはそうではないのですよね・・・

6週間という期間はタモキシフェンの血中濃度が最大になるまでの期間で、そこでまず血中濃度が安定して、そこからホルモンのバランスが安定するまでは、さらに時間がかかってしかるべきのはずだからです。そして、

タモキシフェンの副作用の大部分はホルモンのバランスが以前と変わることで発生するはずです。なので、ホルモン物質の量が安定するまでは、副作用も安定しないはずです。ホルモンバランスが安定してから、副作用が安定するまでさらに時間がかかる可能性もあります。

 

また、体の中にその薬がどれだけあるかによって、それが半分になるまでの時間(半減期、つまり体から抜けやすいか抜けにくいか)が変わってくるはずなのです。

最初に出た「6~7時間で血中濃度が最高になった」という数字は、それまで1錠もタモキシフェンを飲んでいなかった人が、最初に1錠飲んだ場合の時間です。6週間以上飲み続けた人が1錠タモキシフェンを飲んだ場合には6~7時間で血中濃度が最高になるとは限らないのです。

それに、6週間タモキシフェンを飲み続けた後の血中濃度がかなり高いのならば、そこに1錠分の血中濃度を足したところで大して変わらないかもしれない。

この二つの理由で、タモキシフェンを飲んでから6~7時間後に副作用が一番強くなるだろうという予測は、正しくない可能性が高いです。

残念ながら、一日の内でタモキシフェンを飲むのに最適な時間というものはないようです。

 

 

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彼女はホルモン療法をタモキシフェン単独で始めました。

LH-RHアゴニスト製剤についても医師から勧められましたが、止めておきました。

ルミナール型乳がんでのLH-RHアゴニストの使用は、同型乳がんでの抗がん剤使用のように、医師間によって意見の分かれるところのようです。

(LH-RHアゴニスト製剤とは、商品名リュープリンやゾラデックスで知られている、視床下部から出るホルモン(LH-RH)に介入して、卵巣機能を制限する薬です。タモキシフェンのような抗エストロゲン剤とは作用機序が異なりますが、最終的にはエストロゲンが乳がんの細胞と結合することを防ぐ意味では同じ効果です。なので、どちらもホルモン療法としてのくくりになります。ホルモン療法はエストロゲン受容体陽性の乳がん(ルミナールタイプ)にしか行われません。)

 

抗がん剤についてもLH-RHアゴニストについても、ルミナール型乳がんで使う場合は限定されています。

抗がん剤については、前回のブログで書いたように、ki67の高いルミナールBと分類されるルミナール型乳がんに使われます。

LH-RHアゴニストについては、まず35歳以下の場合と、抗がん剤で一時閉経状態になってそれが回復した場合に、処方されるとなっています。

どちらも限定された場合で、これらの場合はしっかりとしたエビデンスがあるようです。

そして、これらの限定的な条件以外の場合だと、抗がん剤もLH-RHアゴニストも、大規模な臨床実験などの信頼できるエビデンスがない(?)ようなのです。

 

原理的には、LH-RHアゴニストを使えば血中のエストロゲンは確実に減るので、エストロゲンが原因のルミナール型乳がんには効果がありそうに思えます。

ですが、タモキシフェンですでに十分エストロゲンが阻害されていて、それ以上やる必要のない状態なのかもしれないのです。(通常、LH-RHアゴニストを使う場合にはタモキシフェンにプラスして使います。LH-RHアゴニストをタモキシフェンの代わりに使うようなことはしないようです。)

それ以上やると副作用のみを被ってしまう状態になってしまうかもしれません。

日本乳癌学会のガイドラインにも、二つの限定的な状態以外のLH-RHアゴニストの使い方で推奨されるものはありません。

 

ただ、実際にはルミナールタイプの乳がんの中で、ステージⅡ以上でかつある程度リスクがある場合には、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤に上乗せする形でLH-RHアゴニストは処方されているようです。(そして、それを推奨する記述が海外の関係機関から出ていたはずです。すみません、これについては忘れました。)

原理的にはタモキシフェンの効果を高めることは間違いない、ということで処方されるのでしょうか。しかし、エビデンスがない以上、効果と副作用のバランスは不明になってしまいます。なので、リスクが高い場合のみに使うということが合理的だと思われます。

 

話をまとめると、ルミナールタイプの乳がんの場合、抗がん剤とLH-RHアゴニストはまず特定の場合に必ず使います。抗がん剤はki67が(かなり)高い場合、LH-RHアゴニストは35歳以下の場合と抗がん剤を使った一時的な閉経が再開した場合です。

そして、それとは別にリスクが高いと判断された場合に、上の条件に当てはまらなくても、抗がん剤もLH-RHアゴニストも、医師によって処方される場合があります。

この「リスクが高い」ということに注意が必要だと思います。ここで医者の意見が分かれるのです。

「乳がんの治療で医者に頼れないこと」の回のブログで書いたことなのですが、乳がんのリスクが高いか低いか、その治療法の効果が高いか低いかというのは数字の問題であり、相対的な問題であって、最終的には主観的な問題です。

エビデンスが乏しい治療法をするかしないかなどは、まさに主観の問題です。

タモキシフェンはしっかりとしたエビデンスがあり、ルミナールタイプの乳がんの再発率を確実に下げます。だから医者は必ずやるべきだ、と強く勧めるべきです。

逆に、ルミナールタイプでの抗がん剤やLH-RHアゴニストの使用は特定の場合を除いては確実に効果があるとは言い切れないので、使うかどうかは患者の意思で決めるべきです。

 

その線引きをしっかりすべきはずなのですが、なかなか線引きが出来ていないのが現状のようです。

このブログで過去に書いていることなのですが、僕の彼女は抗がん剤もLH-RHアゴニストも、どちらも適用される条件には当てはまらなかったのに、医師は強く勧めてきました。

まあ、僕の彼女の場合は極端な例として例外扱いでいいと思うのですが、他の場合でも線引きがあいまいになって行く場合はあるようです。

例えば、ki67が高い場合にルミナールタイプの乳がんでも抗がん剤を使うのですが、その「高い」が医師によって違うのです。医師によって違うどころか、同じ医師でも、他のがんの悪性度などを考慮して、抗がん剤を使うki67の値のボーダーラインを上下させる場合もあります。(それ自体は悪いことではないはずですが曖昧にはなります。)

また、35歳以下で適用されるLH-RHアゴニストですが、40歳以下でも適用される場合があるようです。そして、医師によっては、41~42歳でも・・となっていうような書き込みも見ました。

 

患者本人が乳がんを心配してわずかにでも再発率を下げる治療を受けたいと希望する場合は、抗がん剤を使うki67のボーダーラインを下げたり、LH-RHアゴニストを使う年齢のボーダーラインを上げるようなことは必要だと思います。

ただ、そういう場合は患者の希望によって自己責任で治療をしていることははっきりさせるべきです。

効果があるかないか分からない治療法を医者が曖昧に勧めたり、そうとは知らずに患者が治療を受けることはあってはならないと思います。

ルミナールタイプの乳がんで抗がん剤治療とLH-RHアゴニスト製剤を使う場合は、こういった注意が必要です。

 

(前回と今回のブログも含め、僕が書いているブログの内容はすべて転移再発を防ぐ手術後の治療の話になっています。転移が見つかってからの治療法とは全て異なります。その説明をせずに毎回ブログを書かせてもらっています。申し訳ありません。)

 

 

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