タモキシフェンを転移してから飲み始める
(リンパ節転移と他臓器への転移は全く別ものです。リンパ節への転移は基本的に命の危険はありません。今回のブログの「転移」は全て他臓器への転移です。これは遠隔転移とも言い換えられます。)
まず、自分が恐ろしいことを言っていることは自覚しているつもりです。そして、このようなブログの題名にしていますが、それを自分の彼女に勧めるつもりはありません。申し訳ありません。
ただ、「(ルミナール型乳がんで)タモキシフェンを転移してから飲み始める」ことは、一理あるのです。道理の一つであることは事実です。
「彼女はすでに転移しているかもしれない」の回のブログで書いたように、乳がんの手術を行った後に転移再発が出る場合は、手術を行った時点ですでに微細転移している可能性が高いのです。
そして、今の医療技術だと、その判断ができない。
もしこれから医療技術が進んで、全身のごくわずかながん細胞も簡単な検査で見つけられるようになった場合は、初発乳がん発見時に転移が確認できる患者のみがタモキシフェンや抗がん剤のような全身治療を行うはずです。
今の技術だとすでに転移があるかどうかを判断できないので、可能性のみを考慮して、可能性が高い患者の全てにタモキシフェンや抗がん剤を使っています。
すでに微細転移している患者にしか有効ではない全身治療を、転移のない患者にまで行っているのです。手術時に転移のない患者は副作用のみを被ってしまいます。
このようなことは、通常の乳がんの標準治療を受ける場合には説明されません。ですが、おそらくこのことを正確に医師に聞けば、誠実な医師はその事実を認めてくれるはずです。
また、このような説明をすると、標準治療を否定しているように聞こえます。ですが、僕は標準治療自体を否定するつもりはありません。僕は標準治療を行う場合の説明方法に疑問を持っているだけです。説明方法によっては、患者の治療方針が変わってしまう可能性があるからです。
そして、現在の医療技術であえて転移再発を発見するまではタモキシフェンを飲まずに、転移再発を発見してからタモキシフェンを飲み始めるならば、転移のない患者がタモキシフェンの副作用のみを被ってしまうという事態が避けられる事実があるのです。
これは一つの選択肢のはずなのです。一つの選択肢としての可能性があります。臨床的な研究がされるべきだと思います。
もちろん、現実的にこれをするのは、あらゆる問題があります。あらゆる問題はありますが、その問題がクリアされた時には、選択肢の一つとして成立することは確かだと思います。
問題のクリアというか、その問題点が当てはまらない患者のみに、この選択肢を勧めればいいとなる場合が多いと思います。現実的な問題点と、問題が当てはまらない場合はどういう場合なのかを次回のブログで考えてみます。
ルミナール型の乳がんの場合は、転移再発を確認してからも(タモキシフェンを含む)ホルモン療法は非常に有効です。
そして、いずれ医療技術が進歩して、簡単な検査で全身のがん細胞を確認できるようになったのならば、ステージやサブタイプからの予想でホルモン療法や抗がん剤治療の全身療法をするしないを決めるのではなく、現在のステージⅠに相当する乳がんでも微細転移があれば全身療法をし、現在のステージⅢ相当であっても微細転移がなければ全身療法をしないことは確実です。(そもそもステージの概念がなくなりますが。)
また、もしルミナール型乳がんのステージⅢ以下で手術を行って、その後にホルモン療法をせずに転移再発が出てしまったならば、ホルモン療法をしなかったことを悔いるかもしれません。
ですが、ホルモン療法は基本的にはがん細胞を殺す力はないと言われています。がん細胞の餌であるエストロゲンを減らすことで、ルミナール型乳がんの進行を止めることがホルモン療法の目的です。
転移巣が小さい内にホルモン療法を行った場合にがん細胞を消滅させられるというエビデンスや、転移巣が小さい内のホルモン療法の方が効果が大きいというエビデンスがなければ、転移巣が大きくなってからのホルモン療法(=現在ならばステージ4を確認してからのホルモン療法)の選択肢は否定されないと思われます。
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ディスカッション
コメント一覧
特に最後7行あたりが重要なことだと思います。
以前のブログ記事全て読んでいないので、多くは言えませんが
ホルモン療法が微小転移がないと必ず不利益、かどうか、
科学的に証明できないことは認めていらっしゃいます。
何でもあの抗がん剤治療反対の医師にセカンドオピニオン受け劇薬の話から
彼女様が治療に難色を示されていると。
ホルモン療法でQOLが下がる。
不必要なのに不利益を受けるとは
そういうことを言われてるのだと感じますがいかがでしょうか。
ホルモン療法では「兵糧攻め」とよく例えられるように、
抗がん剤治療ほどの殺細胞効果はないのでしょう。
しかし乳癌学会のガイドラインでは、図式を使って
40%の患者の再発を抑止して命を守れる、という記と記憶しています。
ここを根底から覆すブログ内容に感じますので、
思わずコメントしました。
多くの方の目に触れるブログというもので、あなたのブログはブログ村注目記事にも
上位に来ておられます。
皆が鵜呑みにしているわけでもないでしょうが、
影響度は何らかの形であると思います。
わたしは、あくまでも中立の立場ですし、
学会の回し者でもありませんし、
がん治療の集学的治療には、様々な立場の医師が存在している現実があります。
お薬の添付文書の副作用発現率について、以前
「少なめに書かれている」とブログ記事で断定的に書かれて
その際、某乳腺外科医のホームページの記述が正しいとも書かれていましたが
どこにどういう根拠があってそう仰るのか、
何となくそうかもしれないと感じることであっても、
国の立証の上で書かれた文書(添付文書の事です)を根拠なく否定していいのでしょうか。
もしそうされるなら、きちんと対極にあるエビデンスを出すのが正しい反論というものです。
出ないと国の威信に関わることです。
某抗がん剤治療反対派医師が言われていることと同じです。
あの方の話も医師とともに検証したことがありますが、
結局あの方は、そういう科学的反論はせず、
腫瘍内科からの質問や対論には逃げ回り、
センセーショナルなタイトルの本を出している。
世間はセンセーショナルなものに飛びつく傾向があることが、
出版やテレビ等々のメディアでは有名で
それに悪ノリといえば言い過ぎかもしれませんが、
情報の正しさを冷静に判断する警告があちこちマトモな団体から発せられています。
あの抗がん剤治療反対派医師は、セカンドオピニオンを受けているようですが
大学にいた頃から、がん放置をして、経過観察もロクにせずに
結局、再発転移を見たりして、
全て患者の自己決定の結果として、
面倒も見ずに見殺し。という話が沢山あるということが公的に明らかになっています。
彼女様が自己決定を、正当に、冷静に、多角的に熟慮されての上なら
例えどんな結果が待っていようとも良いのでしょうが
(それは今は絶対わからない訳ですが)
それに、先ほど申しましたように多くの方々
が見られるブログの場で公然と国の文書を否定することなど
少し暴走を感じましたので、敢えてコメントいたしました。
順番に少しずつ答えて行きます。
まず、ホルモン療法ですが、ホルモン療法は全身に対する治療です。つまり転移に対する治療です。
微細転移がない=その時点では転移がない、ので、ホルモン療法は微細転移がなければ副作用だけ被るものになります。
通りすがりさんの言わんとしていることが、「ホルモン療法は局所治療にも効果がある」なのか、「手術時に微細転移がなくても、後に転移巣が生まれる」なのか、その他の意味なのかが分からないので、今はこのようにお答えするしかできません。
また、僕はタモキシフェンの効果の「40%」という数字を軽んじてはいません。重要視しています。だからこそ、無治療を希望する彼女に対して、タモキシフェンだけは飲むように何度も説得しているのです。ネット上で患者の質問に答えている某医師は、タモキシフェンの効果について、ルミナールAならばより高く、ルミナールBならば低くなると説明してくれました。ルミナールAの彼女の場合は60%にも及ぶということです。なので、タモキシフェンは僕としてはどうしても彼女にやって欲しい限りです。
ただ、40%の効果というのは、確か10年の再発率を減らせる値のはずです。それは40%の人のがん細胞を殺すことができることでないことは言うに及ばず、40%の人の命を助ける、という意味でもないです。少なくても10年間は転移再発することを阻止できる人が40%減らせる、ということです。タモキシフェンの効果は、基本的には「再発までの時間を長くする」ことです。何もしなかったら7年前後で転移再発する人が、タモキシフェンを飲んだ故に12年後に転移再発する。そういう場合も込みで「40%」の効果です。ただ、場合によっては、再発まで伸ばせる期間が「∞」になる人がいて、その人はタモキシフェンで命が助かったことと同等の意味になるのです。それらの人にしても、タモキシフェンの効果として、体の中からがん細胞がなくなっているかどうかは分からない。
それに、僕は上記の意味でタモキシフェンの効果を低く見積もるようには書いていますが、逆に、標準治療では説明されない、タモキシフェンの良い部分も説明しています。「再発を抑える」ことをタモキシフェンの効果だと説明してしまうと、40%から漏れた60%の人にはタモキシフェンの効果がなかったように感じてしまう。これは完全に逆です。タモキシフェンを飲んだのに転移再発してしまった人の方が、確実にタモキシフェンの恩恵を受けていると言えます。転移再発しなかった人より確実にです。転移再発してしまった人は、手術時点で微細転移があったわけで、その場合は転移巣が大きくなって発見されるまでの期間をタモキシフェンが確実に伸ばしてくれていたはずです。