小林麻央さんは、どこの病院で検査や入院をし、どのような治療を行ったなどの具体的なことは発表していません。

ですが、それを示唆するような発言はいくつかあります。それを元に週刊誌やネットでは、麻央さんがどのような治療歴をたどったのか、詳しく解説されています。

その治療が正しかったのか間違っていたのか、仕方なかったのか惜しまれることなのか、そういった判断は僕にはできません。また、乳がん患者ではない僕が、麻央さんのことについてブログで書くべきことは多くはないです。

 

僕は去年、この歳にしてはかなり仲が良かった姉を亡くしました。姉は突然死でした。前日まで犬の散歩をしていました。

姉が亡くなった直後は、僕は同情の言葉をかけて欲しくなかったです。もちろん、姉の死の理由についても、同じ苦しみを持つ家族以外には分析などして欲しくなかったです。

彼女から姉の死に「日にち薬」という表現をされた時に僕はかなり反発した覚えがあります。

大切な人の死は、その人に必要な方法と必要な時間をかけて受け入れるものだと思います。

「仕方なかった」と思うことは、受け入れ方の一つです。「惜しまれる」と思うこともそうです。「あの時~をしたならば・・」と思うことが必要な人もいれば、そんなことを思うと耐えられない人もいるはずです。

僕は麻央さんの乳がんの闘病について、こういったことを書くつもりはありません。

ただ、未だにこのブログを含めて、乳がんに関するブログを普段より多くの人が読んでいるようです。そういった人たちの多くは、乳がんを心配しているはずです。

なので、僕が彼女の乳がんの治療を通して得た知識の中で、一般的にはあまり認知されていないけれども、麻央さんの乳がん治療の中で重要であったであろうことを書いてみようと思います。

 

週刊誌に書かれた内容や、ネット上で得られる麻央さんの治療に関しての情報だけから想像すると、乳がんはとても恐ろしいものに思えてしまう人も多いと思います。ですが、どんなタイプやステージの乳がんにも対処する方法が必ずあります。

麻央さんが最初に乳がんらしきしこりを発見したのは授乳中とのことです。授乳中は良性のしこりができることが多いらしいです。そして、まだ若い人も多い可能性があることから合わせて、授乳中は乳がんの発見が遅れる可能性が高いことが指摘されています。

この話を聞いて、「乳がんの検査の技術というのは進歩していると聞いているけど、大したことがないなあ」と思われる方もいるかもしれません。

エコーやマンモグラフィー、MRIなどの画像で体内のしこりを見つける技術は日進月歩のようです。

ですが、そのしこりが良性か悪性(がん)かの判断の技術は、乳がんだと今のところ一定以上太い針をしこりに刺して組織を取り出し顕微鏡で見ることしかできません。

これを針生検(組織診)といいます。これをするには局部麻酔が必要です。

乳がんらしきしこりを発見しても、そのしこりが乳がんだと特定するのには、ある程度体に負担がかかる大掛かりな検査をしないといけないわけです。体に負担がかかる検査である以上、やたらとやるわけにはいかないです。

授乳中にしこりを発見したとして、それが乳がんであることを心配して針生検を行うことはあまりないようです。

授乳中には良性のしこりのできる可能性が上がること、針生検は(授乳中の)体への負担があることから、メリットが低くデメリットの高い検査になってしまうからです。

 

授乳中に乳房のしこりを発見した場合の対処法は二つあるようです。(しこりを発見するためには、視触診とエコーを行います。)

ひとつは針生検よりも軽い細胞診をすることです。細胞診は針生検よりも細い針をしこりに向かって刺し、針生検と同じようにしこりの組織を取り出して検査するものです。

ですが、針生検よりも細い針を使う分、組織が壊れてしまい、結果で分かることも少ないです。簡単に言うと、針生検よりも体への負担が低く、確度も低い検査です。

彼女も手術の前に針生検とは別に、この細胞診を何回もしました。いずれも「おそらくは良性のしこりだろうけれど・・」となった部分への検査です。

(彼女には、手術の前に5個以上の「おそらく良性であろう」しこりがありました。それらに対しては未だに確実に悪性(がん)でない保証はありません。)

医師からこの細胞診の説明として「70%くらいの信頼性」と説明されていました。そのしこりが乳がんであれば70%くらいでがんだと分かるという意味です。

100%確実に乳がんか違うかが分からない検査ですが、体への負担とのバランスのいい検査です。

 

授乳中にしこりを発見した場合の対処法のもう一つは、経過観察をすることです。授乳中によってできた良性のしこりであれば、いずれ小さくなる可能性もあります。

逆に乳がんならば、少しずつ大きくなる可能性が高いです。

乳房にしこりを発見した女性が、「乳がんかどうか分からないので経過観察しましょう」と言われて、納得できると僕には思えません。

ですが、これが現状です。逆に言うと、乳がんの進行速度は基本的にかなり遅いのです。医者は乳がんの進行速度は遅い場合が多いと分かっているので、「経過観察」を指示するのです。

経過観察は3ヶ月~半年後に来院を指示されることが多いようです。

 

授乳中に乳房のしこりを見つけた場合の対処法は基本的にこの二つのようです。これらは僕の彼女の乳がんで行った検査の事情とはことなりますが、大きな共通的が一つあります。

どちらも乳がんを発見するメリットと、検査をして体への無用の負担を強いてしまうデメリットとを考え合わせた確率的な対処法だということです。

医者が勧めてくる検査や治療は、その医者が考える確率で患者のメリットが多い検査や治療方法です。

しかし、乳がんをとても気にしている患者にとっては、検査によって体の負担がかかることよりも、乳がんかどうかはっきりしないことの精神的なデメリットが大きくなるはずです。そして、その逆もしかりのはずです。

現在の乳がん医療は、検査から治療まであらゆる場面で確率的な処置をします。そして、その確率をどう思うかは患者それぞれ違うはずです。

麻央さんは主治医に授乳中のしこりに対して生検を提案しても、必要がないと言われたそうです。

それはその主治医の過去の経験からくる判断で、おそらくデメリットの方が大きくなるとの予想でしょう。

その判断が合っていたとか間違っていたとか、そういうことではなく、僕は乳がん治療では、患者の意思がまず初めにくるべきだと思います。

その判断は患者がすべきだと思います。

なぜなら、しつこいようですが、現在の乳がん治療は確率を元に行っていることで、その確率的なメリットとデメリットは患者によって捉え方が違うからです。

僕の彼女のように、手術以外は無治療を望む患者もいます。

治療の確率的な効果と副作用のデメリットを考えると、乳がん治療は患者によって目的(何%まで確実な治療を望むか)が違うと言えます。

 

 

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僕は彼女が乳がんになるまでは、がんについての知識があまりありませんでした。

彼女が乳がんの診断を受けてからは心配になり、ネットで検索をしたり本を読んだりして乳がんの知識を集めました。

実際に診察や治療を受けた医師からもいろいろ聞きました。セカンドオピニオンにも行きました。

それらで知りえたことを考え合わせると、乳がんは不治の病ではなくなりつつある、というのが僕の印象です。

 

乳がんはいまだ確実には治せる病気ではありません。特に他の臓器に乳がんが転移してしまうと、非常に治療しにくくなるようです。

ただ、治療しにくくなるとは言っても、確実に進行していくというものでもないです。ステージ4でも乳がんを生活の支障とせずに暮らしていらっしゃる方も多いようです。

また、現在乳がんはステージ3までは「標準治療」と呼ばれる治療のガイドラインが定められています。

標準治療は世界的な乳がんの臨床的な研究や統計が共有されています。標準治療のそれぞれには、「この治療をすると、~%再発率が下がった」のような根拠のある研究があるようです。

 

つまり、現在の乳がんの治療は、どの乳がんも確実に治せるという治療法は存在しないですが、どの乳がんにもその乳がんが進行することを確率的に防ぐ手立てはあるということです。

現在の乳がんの治療は確率的にしか行えませんが、乳がんの進行を防げる確率は治療法の開発によって上がっている、ということです。

治療法の選択肢が増え、それらの治療法の結果が世界的に共有されているようなのです。

 

僕の彼女の乳がんの場合も、手術後の病理検査によって「何も治療しなければ20%~25%の再発が予想される。ホルモン療法をすると、その再発をする可能性が約40%下げられる」という風に確率的な数字で表されました。

手術で取り出したがんの腫瘍を細胞や組織として分析し、詳細な結果が出ます。その結果にしたがって、乳がんが進行してしまう可能性や、それぞれの乳がんのタイプにより細分化された治療法の効果が予想されるのです。

 

ただ、この「確率的な治療」というのが、なんとも言い難い微妙なものではあります。

人によっては「確率的にしか治療できないということは、確実に治るとはいないのではないか?」と必要以上に不安になってしまいます。

そうすると、心配になり、あらゆる治療法を全部やってほしいということになる。

本来、確率的な効果を期待してやる治療なのに、確率的には期待できる効果が薄い治療法まで全てやって欲しくなってしまう。

一つひとつの治療法は副作用も軽くはないです。あまり治療が過度になると、問題が出てきてしまう場合があります。

 

逆に僕の彼女のように、「何も治療せずとも確率的には治る可能性の多いのだから、副作用がある治療はしたくない」と思う人も出てくる場合もあります。

僕の彼女は自分の体や健康に対する恐怖心が異様に少ない人なので、稀なケースだとは思います。

ですが、彼女の主治医に聞いてみたところ、無治療を望む患者は、彼女以外にもごくわずかにはいるようです。

完全に無治療を望む人が彼女以外にもいることに驚きました。そして、ということは完全に無治療ではなく、最低限度くらいの少ない治療を望む人はもっと多いということになるでしょう。

 

そして、乳がんに対する治療法の進化と同時に、乳がんの検査をする機器の改良も日進月歩のようです。

確率的にしかできないという現在の乳がんの治療法の最大の欠点が、検査機器の進化によって補われる可能性があります。

現在の乳がんの治療は、乳がんのがん細胞が体の中で広がってしまうことを阻止しようとするものです。転移の阻止です。

そして、現在分かっていることによると、乳房にできた乳がんの腫瘍がまだ小さい段階で、すでに体の他の場所にがん細胞が広がってしまっている可能性があるらしいのです。

彼女はすでに転移しているかもしれない」の回のブログで書いたことなのですが、乳がんのがん細胞の成長の速度から逆算すると、手術をした段階ですでに転移するかしないかは、ある意味で決まっています。

もしそういったことが検査機器の進歩によって確認できるようになったならば、乳がんの治療方法は激変することになるはずです。

現在の乳がんの治療は、将来転移する可能性の大きい患者に対して抗がん剤を使ったり、他の治療法を行ったりして、転移を防ごうとするものです。

転移するかどうか分からない内に、先に副作用がある治療を予防的にしているのです。

もし、検査機器の進歩によって、将来転移するかどうかが今より高い精度で予想できるようになったら(=ごく小さい転移巣が発見できる検査機器が登場したら)、転移すると予想される患者だけに、現在よりも強い治療をして、転移しないと予想される患者には完全に無治療で済ませる、ということができることになります。

 

単に検査機器の精度が今よりも上がるだけで、乳がん治療の効果が現在より高くなって行くことは確実です。

そして、免疫系からのアプローチや、がん幹細胞の研究、新しい分子標的薬の相次ぐ認可など、乳がんを治療するための研究と臨床的なデータの蓄積が進んでいるようです。

 

 

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彼女と小林麻央さんの訃報について話をしました。

彼女は麻央さんのブログを読んでいたようです。

麻央さんについて聞いてみたところ、彼女は明石家さんまさんが好きで「恋のから騒ぎ」を初代(?)から見ていて、麻央さんは姉妹で出演していて~・・

と、思い出のようなことをたくさん語ってくれました。

麻央さんについて、彼女はいろいろ詳しい様子でした。

彼女は麻央さんのニュースによって自分の乳がんの恐怖が増しているというようなことは、少なそうでした。

もともと、彼女は自分の乳がんについて無治療を望むような豪胆な人なので、今回の麻央さんのニュースで、自分の乳がんの再発に過敏になってしまうようなことはないのかもしれません。

僕としては、そのことで取りあえず安心できました。

 

このブログで何度か書いていることなのですが、どうやら彼女が乳がんになったことを恐れてしまったのは、彼女自身よりも僕の方だったようです。

彼女は自分の体の怪我や病気などに耐える力が異様に強いところがあります。

なので、彼女自身があまり乳がんを恐れていなかったせいもあって(?)、彼女本人よりも僕の方が乳がんを恐れて、その結果として、僕は乳がんに関する知識を必死に集めました。

前回のブログ「乳がんを心配する方へ」でも書いたことですが、乳がんは正しい知識をつけることによって、不要な不安の大部分が解消されます。

それを僕は身をもって体験したのですが、元々精神的に強い彼女には、それを体験する機会はなかったようです。

 

彼女が乳がんの診断を受けた時期とほぼ同時期に、僕の母は肺がんの疑いがあり、いくつかの病院で肺がんの検査をしていました。

最終的に彼女が手術してもらった病院で、僕の母も肺がんの検査をしています。結果は、母は肺がんではなく、肺炎でした。

彼女と母は、それぞれ地元で最寄りの医院から始まり、いくつもの病院でいくつものがんの検査を受けました。

トータールで10人以上の医師から検査の結果の所見や、がんの検査や治療に対する話を聞きました。僕はそれらの大部分に付き合いました。

それらについての僕の感想は、必要以上に患者を不安にさせるようなことを言う医者が予想外に多かった、ということです。

 

乳がんは、乳がんの可能性のある腫瘍から細胞の一部を太い針などによって取り出して、それを顕微鏡で実際に見て、がん細胞があると確認されるまでは確定診断は出ません。それが生検と呼ばれるものです。

現在ではマンモグラフィーやエコー、CTやMRIなどあらゆる画像での乳がんの検査が可能ですが、画像だけでは乳がんだとは診断はされません。それらはあくまで針で生検をするまでの予想に過ぎません。

これは乳がんだけでなく、僕の母の場合も含む、すべてのがんに共通することです。

ですが、画像による検査の段階でも、結果は医師から知らされます。エコーやマンモグラフィーの画像を医師と患者が一緒に見ながら、医師が可能性の範囲で所見を述べます。

乳がんに関してあまり知識がない人ならば、医師が視診や触診をして、エコーやマンモグラフィーの画像を見れば、それで乳がんかどうかの判断はできるのでは?と思うはずです。

ですが、この段階では医師には乳がんの可能性がどの程度あるのかの予想をすることしかできず、そのどの程度あるかの予想ですら、まったく合っていない可能性もあるのです。

 

僕は母の検査の時も、彼女の検査と診察の時も、医師の不必要に不安を煽る説明によって不快な思いを何度もしました。

これについて、後にいろいろ考察してみました。どうやら医師側としては「大丈夫でしょう」と言って実際には大丈夫でなかった場合は責任問題が発生してしまうことを回避しようとしているのではないか?という結論になりました。

逆に「危険な状態です。最悪の事態もありえます。」と説明しておいて、実際には大丈夫だった場合に、医師の責任が問われるような大きな問題が起きるとは思えません。

あなたがもし乳がんが心配で、今まであまり乳がんの検査を受けたことがなかったが、これからは受けてみようと思っているのであれば、こういったことが起こってしまう可能性もあると覚えておいた方がショックが少なくて済むと思います。

責任が発生することを恐れて、医師は患者の病状や乳がんである可能性を少し重く見積もろうとする場合がある、ということです。

お互いに何度も顔をあわせる主治医になった医師や、地元で開業をしていて何かとお世話になる開業医ならば、そういったことは少ないかもしれません。

ですが、1年や2年に一度だけ、乳がんの検診だけをする側とされる側の希薄な関係性の中でならば、こういったことは起きやすいかもしれません。

「私はあなたが乳がんの可能性が高いことをちゃんと指摘しました。この後どうするかはあなたの責任です。私の責任ではありません。」と言わんばかりに冷たい口調で、再検査をした方がよい旨の説明を受けると、自分は絶対に乳がんだと多くの人は確信してしまうと思います。

そして、落ち込むこともあるかもしれません。

ですが、そのような過度の心配はまったく必要のない場合があります。

万一乳がんの診断が出たとしても、乳がんは多くのステージやタイプやその他細かい状態に分けられ、大部分の乳がんは命にはかかわらない病気なのです。

画像の診断の時点で心配をする必要はまったくありません。

乳がんで命の心配をするのは、画像診断が全て終わり、針生検やマンモトープ検査で乳がんだと確定診断が出て、その後に手術を受けてがんの腫瘍をメスで取り出し、その取り出したがん細胞の病理検査からがんの状態や手術の状態が全て判明した、その後でいいと思います。

そこまで行かない限り、(余程確実な転移巣を発見するなどを除けば)乳がんでの命の危険性など絶対に分からないはずなのです。

 

 

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