彼女が説明された抗がん剤の効果

経過がん専門病院, 抗がん剤治療

前回のブログで、主治医に「抗がん剤で20%~30%くらい再発を減らすことができると言われています」と説明されたと書きました。

この数字は完全におかしいです。意図的におかしい説明をして、抗がん剤治療を患者自らの意思でやらせようとしています。

どういうことか解説します。

(乳がんで「再発」というと、温存した乳房の中にまたがんができる局所再発と、肝臓や肺などの他の臓器に転移して再発する転移再発があります。その二つは再発する理由も違いますし、危険性も違います。話を分かりやすくするために、今回のブログで「再発」と書いた場合、それはすべて転移再発を指すことにします)

 

まず、明確に数字としての結論を出します。(僕はこれをしなかった医師に対して腹を立てているのですから)

彼女の乳がんの場合、10年間の無治療での再発率が20%~25%だと説明を受けました。そしてホルモン療法をすれば40%再発率が減り、抗がん剤治療をすれば20%~30%再発率が減る(と言われている)と説明を受けました。これをもとに彼女が抗がん剤治療をした場合に減らすことのできる再発率を計算します。

再発率20%~25%を分かりやすく22.5%、抗がん剤治療をした場合再発率が減る(と言われている)20%~30%を分かりやすく25%とします。

 

①抗がん剤治療をしなかった場合(ホルモン療法のみ)の再発率→(22.5%)×0.6=(13.5%)

②抗がん剤治療をした場合の再発率→(13.5)×0.75=(10.125%)

彼女が抗がん剤を使った時に減らせる再発率=①-②=3.375%

です。彼女にとっての抗がん剤の効果は約3.5%です。

この3.5%という数字とて、はっきり言って怪しいです。おそらくもっと低いです。彼女の主治医の出した数字を最大限に尊重して数値を計算した場合でも、彼女にとっての抗がん剤の効果は3.5%なのです。

それを20%~30%も効果があるかのように説明されたのです。

そして、実際に彼女は完全にミスリードされていました。彼女は全体の数字的な説明はしっかりと理解をしていないのに、20%~30%という数字だけははっきりと覚えていて、抗がん剤はよく効くものだからやった方がいい、とだけ感じていました。

 

ここまでの僕の説明がよく分からなかった人も多いと思います。それが普通です。分かりにくい話なのです。そもそも医者が(意図的に?)患者に分かりにくく説明しているのです。

最初から抗がん剤の効果は3.5%と言えばいいのです。それを20%~30%と言い換えているのです。

僕は学生時代、数学は得意でした。今でも数字的な計算や議論は好きです。(偉そうに言わせてもらって)その僕でも、上記の計算は家に帰ってからやってみて、初めて理解しました。説明されている間は、けむに巻かれているような感じでした。

 

数字での説明だけでは分かりにくいので、数字のトリックを言葉で説明していこうと思います。

言葉として結論を言うと、抗がん剤の効果を測るならば、まず全体から無治療でも再発しない人の人数を引き、次にホルモン療法を行った場合に再発しない人の人数を引き、さらに残った人たちの中で、抗がん剤治療によって助かる人の人数を計算しなければならない、ということです。

それがされていませんでした。されないどころか、逆に勘違いが起こるような説明が(意図的に?)されていました。

彼女が説明された、抗がん剤の効果としての20%~30%というのは割合です。無治療で助かる人、ホルモン療法で助かる人を引いて、残った中の20%~30%です。

なので、無治療やホルモン療法のみで助かる可能性の高い場合は、抗がん剤の効く割合が例え20%~30%であっても、ごくわずかな20%~30%になるのです。

それが3.5%なのです。

同じ20%~30%でも、その前提で大きく変わるのです。

これは彼女の乳がんが初期なのでもともと無治療での再発率が低いこと、そしてルミナール型の乳がんなのでホルモン療法の効果が高いことからの結果です。

逆に、乳がんの型がトリプルネガティブの場合は、残念ながら同じステージで比べると再発率はルミナール型より多少高いです。そしてホルモン療法は効果がないのでやりません。

よって、トリプルネガティブの場合、抗がん剤を使って20%~30%の効果が出るならば、非常に大きな20%~30%になるのです

このことは、乳がんの標準治療では本当に基本的なことです。標準治療ではルミナールAは抗がん剤は使いませんし、トリプルネガティブには抗がん剤を基本的に使用します。

抗がん剤を使う意義が大きい時には使い、意義が小さい時には使わないだけです。

 

抗がん剤の効果が20%~30%と言っても、その前提で20%~30%の持つ意味合いと意義が大きく変わるのです。

その意味合いや意義をほとんど説明せずに、彼女の主治医は抗がん剤の効果が20%~30%だと説明したのです。ご丁寧に「と言われている」を付け足して。

 

そしてさらに説明が悪質なのは、無治療再発率の20%~25%、ホルモン療法の効果40%、抗がん剤の効果20%~30%という数字を、ほぼ一気に言ったことです。

これらの数字は似たような大きさになっていますが、意味合いも前提も完全に違うので絶対に比べたりしてはいけない数字なのです。

詳しい前提の説明をせずに、この三つの数字を一気に言われると、まるで抗がん剤の効果がホルモン療法の効果の3/4~1/2くらいあるように聞こえます。40%と20%~30%を比べてです。

しかし、それは絶対に間違っています。

ルミナール型の乳がんの場合、ホルモン療法を単独でやることはあっても、抗がん剤治療を単独ではることはあり得ないからです。

ルミナール型の乳がんの人が抗がん剤治療をするならば、必ずホルモン療法もやります。なので、ルミナール型の乳がんで抗がん剤治療の効果を測るならば、まずはホルモン療法単独での効果を引かなければならないのです。

具体的に書くと、もしホルモン療法の効果が40%と説明するならば、抗がん剤の効果は20%~30%(×0.6)で12%~18%と説明すべきです。

そして、患者に無治の療再発率と、ホルモン療法の効果と、抗がん剤治療の効果を並べて誠実に(正しく)説明するならば

100人中、無治療でも再発しない人が約78人、ホルモン療法によって再発をまぬがれる人は9人、抗がん剤治療によって再発をまぬがれる人は約3.4人

としなければならないのです。

これはあくまで彼女の主治医が示してきた数値のソースを正しいと仮定した時の話です。

抗がん剤の効果としての20%~30%という数字が、ルミナール型の乳がんだけの統計をとった話でなければ、3.4という数値はもっと小さくなる可能性があります。

 

気が進みませんが、その辺りを次の彼女の診察の時に主治医に聞いてみようかと思います。はっきり言って、このような不誠実な説明をする医師が、大本のデータのソースをしっかりさせているとは思えませんが・・・

 

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