高齢者の乳がん、抗がん剤治療やホルモン療法は?

経過病理検査, 彼女のお母さん

彼女のお母さんは乳がんの手術を終えて、現在は病理検査の結果待ちの状態です。

お母さんの手術は、乳がん自体に対する心配もありましたが、それ以上にお母さんの健康状態について心配なことが多かったです。

何とか手術は無事に終わり退院できたので、乳がん以外のことでは、一応は安心できました。

 

僕が安心したとは言っても、車いす状態のお母さんは、今でもとても大変な日常生活を送っています。

乳がんの手術直後なのですから、乳房やリンパ節のメスを入れた部分をかばいながらの生活になるはずです。

そして、不慣れな車いすでの生活をしながら、少しでも健康的な食生活や生活習慣に戻し、できる限り体を動かす生活をするべき状態です。

 

このような大変な状況ではありますが、乳がんの治療全体から見ると、手術は局所治療で、治療本番はまだこれからです。

手術後の病理検査の結果から、お母さんの乳がんの正確な評価が分かり、全身に対する治療をどうするかを決めます。

お母さんが手術をしたがんセンターは、ちょうどとても空いている時期でした。

だからなのかは確認できませんでしたが、病理検査の結果は手術から3週間後に出るようです。

東京の某がん専門の大病院で彼女が2月に手術をした時には、病理検査の結果は5週間後でした。

 

お母さんが入院している時に、お母さんと主治医が術後の治療方針を話していた内容を彼女が聞いていました。

彼女の話によると、お母さんは抗がん剤治療はやりたくないということを、主治医に伝えていたらしいです。

そして、主治医もそれを了承しているような感じだったようです。

お母さんは肝臓に持病があります。肝臓について昔からずっと医者にかかっていて、一度は東京の病院に地元からわざわざ診てもらいに来たこともあります。

今回の手術でも、医師はお母さんの肝臓の状態を注視しています。

肝臓が悪いお母さんなので、抗がん剤の肝臓への副作用が一般的なものより強く出てしまう可能性が考えられます。

病理検査の結果で、よほど乳がんが抗がん剤治療の必要な状態でない限り、お母さんは抗がん剤治療はやらないことになりそうです。

 

おそらく、お母さんの年齢と肝臓の状態であれば、乳がんの抗がん剤治療をやらないことを支持する医師は多いと思います。

ですが、彼女の話によると、どうやらホルモン療法もやらない話も出ていたらしいのです。

彼女の話と、僕自身もお母さんの診察にお邪魔させてもらった感じからいうと、お母さんが手術した病院では、彼女が手術した病院とは違い、乳がんの治療は必要なもの以外は最低限度に抑えようとしている感じがあります。

そういった流れで、ホルモン療法の省略の話も出ているのでしょうか。

 

確かに、タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬とて、肝臓に負担がかかることは事実です。

また、それらは5年間のような、とても長い期間飲み続ける薬です。

服用期間が長ければ長いほど、肝臓への負担は増えます。

それは事実なので、飲まないで済むにことしたことはないのですが・・・

どうなんでしょう。これは僕にはまったく想像できないところです。

おそらく専門の医師でも、そのホルモン療法の効果と、肝臓への負担からくるデメリットを正確に天秤にかけて答えを出すことは難しいのではないでしょうか。

お母さんの主治医は、お母さんの足の骨折のことについて、整形外科の医師と密に連絡を取って手術に臨んでくれました。

なので、肝臓についても、お母さんのかかりつけの医師と相談をしてくれることでしょう。

ただ、たとえ二人の専門医が情報を出し合ったとしても、どちらが医療的に利益の大きいことになるのかを正確に測ることは難しいはずです。

となると、やはりお母さんの希望を優先することになるのでしょうか。

お母さんは、おそらくタモキシフェンもアロマターゼ阻害薬も拒否すると思います。

 

日本乳癌学会のガイドラインでは、高齢者に対する抗がん剤治療の推奨度はBとなっていて、信頼できるエビデンスに関する記述はありません。

また、某ネット上で多くの乳がんに関する質問に答えている医師のサイトでも、その医師は「高齢者に対する抗がん剤の有効性は示されていない」と答えています。

このことと、お母さんが肝臓の持病を持っていることを考えると、仮に病理検査の結果が、抗がん剤の適応のタイプの乳がんだということになっても、抗がん剤治療の省略は十分に考えられることだと思います。

しかし、日本乳癌学会のガイドラインで、高齢者に対するホルモン療法の推奨度はAで、「副作用には注意が必要だが、高齢者にもホルモン療法が有効である」となっています。

また、某医師も、ホルモン療法については、基本的に年齢に関係なく行っているようです。

こういった情報をみると、高齢者であってもホルモン療法は必須のように感じられます。

 

彼女が乳がん手術後の再発予防に、タモキシフェンをやるかやらないかを考えている時に、僕は「やらないにしても、まずはある程度の期間タモキシフェンを飲んでみて、副作用が起こったら服用を中止すればいいのでは?」と提案しました。

タモキシフェンは副作用が起こる可能性の高い薬ですが、人によってはまったく副作用が出ない場合もありますし、仮に副作用が出ても、我慢できるくらい小さいものの可能性があります。

一切飲まないで「副作用が嫌だから」と言って拒否するのは、もったいないと言えます。

ただ、彼女のお母さんのような場合に、同様に「まずは飲んでみて、副作用が出るかどうかを試すべき」と言えるのかは、分かりません。

肝臓に対する副作用を「試す」というようなことをしていいものなのかどうか・・・

アロマターゼ阻害薬は、タモキシフェンのような抗エストロゲン剤よりは副作用は小さいと言われていますが・・・

 

いずれにせよ、お母さんの乳腺の主治医と肝臓の医師が話し合って、そこにお母さんの希望を加えて方針を決めるしかないです。

また、病理検査の結果によっては選択肢もない可能性もあるので、今はこれ以上考えていても、仕方のないことなのかもしれません。

 

 

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