間違い

雑記乳がんの女性の彼氏

僕は根本的に間違っていました。

 

僕は彼女が乳がんの告知を受けた時から、彼女をサポートしようと思っていました。

ですが、彼女の乳がんは初期だったので、身の回りのことや生活のことなど特別に困ることはなかったです。

なので、僕は乳がんについての情報を集めることで彼女をサポートしようと思いました。少しでも多くの情報を集めて、治療について後悔のない判断をして欲しかったのです。

しかし、これは根本的に間違っていました。彼女の性格をよく考えれば、これが間違いだったことは明白でした。僕は彼女の性格をよく知っているつもりでしたが、考えが及びませんでした。

 

彼女は人に言われて自分の考え方を変えることはありません。本当に変えません。

それは彼女の短所ですが、長所でもあります。

僕は最初、彼女が意地になったり、簡単に考え方を変えることは恥だと思っていたり、そんな感じの理由で意図的に考え方を変えていないのだと思っていました。

ですが、長く彼女と付き合う内にそうではないことが分かりました。彼女には失礼な話なのですが、彼女には相手の考え方を理解して自分の考え方と融合させるような柔軟な知性がないのだと気づきました。

彼女はそもそも自分の考え方を変える能力に乏しいと思えました。変えないのではなく、上手く変えられないのだと。

 

フォローするわけではないのですが、一応書くと、彼女の頭が悪いと言いたいのではないです。

彼女は経験的に結論を出すようなことはとても得意なのですが、それとは逆の未経験のことを論理的に推測して考えるようなことが不得意なのです。

これを僕は重々承知していたつもりでしたが、それをふまえて彼女の乳がんの対応をすることができませんでした。

 

どういうことかというと・・・

まだ、起こっていないこと、これから起こる可能性があることで、彼女にとって嫌なことや辛いことを可能性として示すことは、彼女にとっては嫌がらせでしかなかったのです。

残念ですが、これが僕が結論です。

 

僕としては、彼女の乳がんの状態、つまりステージやタイプ、悪性度などから、まずどのような治療法の選択肢があるのかを調べました。

その後、それぞれの治療法の効果の大きさや副作用を調べようとしました。

そしてデータはほぼ集まり切りました。これ以上望むならば、オンコタイプDXをやるしかないですし、それも検討しています。

 

それらのデータから、僕は彼女に「アドバイス」をしました。

あくまでも「アドバイス」であって、最終的には彼女自身が決めなければならないと思っていました。そうでないと彼女が後で後悔する可能性が残ると思いました。後悔しないために、彼女自身がよく考えて治療法を自分で決めて欲しかった。

その時点で知り得る情報を洗い出してよく考えた結果の治療法選択ならば、例え選択した結果が悪い方に転んでしまったとしても後悔はしないだろうと。

その発想が間違いでした。

 

「後悔しない」ことは「納得する」と言い換えられます。

全力を出しても及ばなかった場合、多くの人はあきらめがつきます。全力を出しても無理だったのだと納得します。

全力を出さずに悪い結果になってしまった場合、あきらめられないかもしれません。自分はあの時にどうして全力を出さなかったのだ、と。

僕はこれが当たり前だと思っていたのですが、彼女は違ったのです。逆でした。

彼女は全力を出しても及ばなかった場合、むしろ納得できないのです。どうしてこんなにやったのに、上手く行かないのか!と。

彼女は全力を出さずに悪い結果になった場合、それは納得できるらしいのです。全力を出さなかったから悪い結果になった。それは当然だから納得。だと。

 

本当にすべてが間違っていました・・・

僕が彼女の乳がんの治療法について「僕ならこうするだろうけど、でもそれを君に無理にそうしてもらおうとは思わない。僕の意見はあくまで参考にして自分でよく考えて」と言いました。

そもそも人の意見によって自分の意見を変えることがない彼女には、相手が自分の意見を言っているのに、それが押し付けでなくて、参考にするためのもの、ということの意味を理解できなかったようです。

彼女は怒り出し、私にあたなの意見を押し付けようとするな、と言ってきました。

何度そうではないと説明しても、本質的に「自分とは違う意見を参考にする」ということの意味が分からないようでした。

彼女にとって、僕が自分だったらこうするだろうという意見を言うことは、すなわちその治療法を彼女にやらせようとしていることと同義だということでした。

 

また、僕は彼女の乳がんの予後予測について、良い可能性も悪い可能性も、治療法に合わせてすべて考えました。

無治療だった場合の再発率と各治療をした場合の再発率をいろいろなところで聞いたりデータを調べたりしました。

僕は良い方も悪い方も、すべての可能性を知っていた方が、後悔しない治療法選びができると思っていました。しかし、彼女は違いました。

悪い方のデータは見たくないと言っていました。悪い方のデータは見た分だけ後悔が残る、と言っていました。

例えば、薬の副作用で一般的な解説に乗っていないようなものを聞いたがゆえに、もしその薬を飲むことになったら嫌な気持ちになる、と言っていました。見なければよかったと言っていました。

その薬の副作用は使うか使わないかの参考にすべきデータにはならず、嫌な印象を与えるだけの情報になりました。彼女には「参考」はないのです。

再発率の数字も、彼女に嫌な感じを与える数字として見えたようです。彼女はタモキシフェンを飲みたくないので、飲まなかった時の再発率は、見せられると嫌な気持ちになるだけのものだったのです。

 

つまり、僕が彼女のサポートとしてやったことは、すべて彼女にとっては嫌なことだったわけです。

 

多分、これを読んで下さった多くの方は、「彼女は乳がんを恐れて、弱気になって、前向きになれないんだ、現実が見られないんだ」「そんな時こそ、彼氏が彼女を支えるべきだ」と思うことでしょう。

そんなコメントを下さる人もいるかもしれません。

でも多分、彼女はそれを見て、屈託のない笑みで否定することでしょう・・・

 

(追記)その後、何度も彼女と話し合いました。やはり、「後悔のない判断を彼女自身にしてほしい」という思いを彼女に何度も伝えました。どうも、僕がそういうことを言うことの意味が彼女に伝わっていないようでした。本文でも同じ意味合いのことを書きましたが、そもそも彼女と僕の「後悔」の基準が違うので、なかなか伝わらないとこです。ですが、どうやら僕が僕の考えた治療方法を強制しているのではないということは分かってもらえたようです。そして、僕の方も「僕だったら後悔しそうだから」という考え方を止めることにしました。

 

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Posted by oomura


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