彼女のお母さんは現在、乳がんの手術待ちの状態です。

お盆休みに彼女は実家へ帰っていたのですが、そこに彼女のお母さんが手術の予約をしている病院から突然電話がかかってきました。

電話の内容は「手術の担当医が〇〇さんのMRI画像をもう一度見直したところ、見つかっている部分とは違う場所に、がんの可能性のあるしこりを見つけた」「そのしこりの検査をするので、病院に来て欲しい」とのことでした。

嫌な内容の電話です。

新たに見つかったしこりは、乳がんだと確定しているしこりとは、乳房の中で反対側になる位置らしいです。

 

彼女のお母さんが乳がんの手術をする病院は、その地方のがん拠点病院で、非常に大きい病院です。

その病院のシステムでは、いくつもの検査の後に手術をすることが決まり、手術日などを決めた後で実際に手術をする医師が決まります。

乳がんの診断を出す医師と手術をする医師が違う訳です。

(ちなみに、彼女も違う地方のがん拠点病院で手術をしています。彼女の場合は乳がんの診断を受けてからその病院に転院したので、お母さんの病院と同じシステムなのかは分かりません。ですが、診察や検査を繰り返し、最後の最後に手術をする医師が決まったので、同様かそれに近いシステムだと推測されます。がん拠点病院では基本的にこのようなシステムなのでしょうか。)

手術を担当する医師が、その手術の準備のためにMRI画像を読影(画像からの診断)したところ、別の場所にしこりを発見したようです。

画像のダブルチェックをすることはよく聞くので、その結果「やはりもう一つしこりがあった」という結果になることは珍しくはないことなのかもしれません。

 

彼女は、電話があったその日の内にお母さんを病院に連れて行きました。

すぐにそのしこりの細胞診をすることが決まったらしいです。

そして、そのしこりに対して細胞診をしようとしたところ・・・

しこりがその場所に発見できなかった、らしいです。

細胞診はしこりに正確に針を刺すためにエコーを使うことが多いです。彼女もこのやり方で何度も細胞診をしています。

今回、お母さんの新たに発見されたしこりの場所を特定するためにエコーで調べたところ、そのようなしこりは発見できなかったらしいのです。

初めに使ったエコーでは発見できなかったため、(大病院の良いところですが)もう一つある精度の高いエコーを使ってさらに調べても、やはりしこりは発見できなかったらしいです。

 

MRI画像には白くしこりが映っているらしく、その大きさは8ミリと測定されています。

8ミリという大きさは、微妙ではあります。

ですが、病院に呼び出しまでかかるくらいは、はっきりとしている画像のはずです。

僕は一切その場にいなかったので、彼女から話を聞いただけなのですが、これは説明を詳しく聞きたいような話です。

 

いろいろあって、結局最後は「大勢には大きく関係しない」として、予定通り温存手術を行うそうです。

その新しくしこりが見つかった「らしき」場所は、「温存手術後の局所再発のための定期検査と同時に経過観察していく」らしいです。

 

なんとも歯がゆい限りの結果になってしまいました。

僕はこの一連の流れについてよく分からないです。

ただ、彼女の乳がんの手術の時に、がんのしこり以外にたくさん良性のしこりがあって、それを一つひとつ細胞診で良性だということを確かめていきました。

そういったことから予想すると、このような中途半端な状態で検査を止めてしまうことは、確率的な判断だと思われます。良性のしこりの可能性も考慮されているのでしょう。

エコーでまったく映らないということは、MRI画像での評価の8ミリという数字より小さい可能性が高いのかもしれません。

また、MRI画像からある程度は悪性の可能性を推測できているのかもしれません。

その場所によっても、がんが確定している場所と離れているならば、そのがんとは関係がない可能性が高いのかもしれません。(別の乳がんの可能性はあります。)

いろいろトータルで考えると、そのしこりの検査をこれ以上やることはバランスが悪いと判断したのではないでしょうか。

 

まあ、そもそも、そこにしこりなど最初からまったくなかった可能性もあるのかもしれません。

MRIでそういう風に映ってしまうことはあるのかも・・・

とても大きいがん拠点病院なのですから、この後も手術までにお母さんのMRI画像を他の医師や技師がチェックしてくれる可能性は高いです。

そういった訳で僕はこの一連の出来事と決定をそれ程大きなことだとは思いませんが・・・

しかし、やはり本人の身になって考えてみると、ちょっと考えられないくらい嫌な話だと思います。

しこりが新たに見つかって、病院まで呼び出されて、そのしこりの生検をしようとしたら「やっぱり無かったです」「気にせずに予定通り手術します」と言われたわけですから。

患者さんの性格によっては、夜も眠れなくなってしまうような出来事かもしれません。

彼女に聞く限り、幸いお母さんはそこまでこの出来事を気にしている様子ではないらしいです。

「そういうものなのだろうか・・」としか思えないような出来事だと思います。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

前回のブログで、彼女のお母さんの乳がんの治療は温存手術をする方向になったことを報告させてもらいました。

医師や看護師の説明を聞いて、お母さんの乳がんについて新しく分かったことがいくつもありました。

また、高齢者の乳がんについての一般的な話についても分かったことがあるので、少しずつ書いて行こうと思います。

 

まず、僕が気になっていた、手術の前に針生検をせずに細胞診のみで乳がんの確定診断としたことについて説明を受けました。

細胞診の結果については「陽性」となっていただけでクラスの表記はないようでした。そういう細胞診なのでしょう。

いずれにせよ、やはり画像と合わせての診断で信頼性が上がっているような話でした。

医師の説明は全体的に感じが良く丁寧なものだったのですが、正直に言うと細胞診の説明についてだけは少し中途半端な印象を受けました。

「擬陽性」についての説明もいまいちでしたし。

「うちの病院はこれでやってます。他の病院のことは知りません。」的な感じの話ぶりでした。

細胞診や組織診の信頼性などの話は、病理医の領分なのでしょうか。

彼女が自分の乳がんの時の話を聞かれて「私は最初に針生検でした」というと「それは〇〇大学病院さんが(画像診断の)自身がなかったのでしょう」という答えでした・・

まあ、確かに彼女の乳がんの場合は、医師から「がんかどうかは半々くらい」という説明がありました。

つまり、話を総合すると、画像での診断で非常に強く乳がんを疑われる場合は針生検をせずに細胞診にとどめる、という手法があるということみたいです。

 

上記の話をしている最中に、お母さんが午前中に撮影した造影剤を使ったMRIの写真が診察室のパソコンに送られてきました。

これを見て、医師は「お伝えしていたように、腫瘍が2つあります。そしてその二つの間に、さらに小さい腫瘍のようなものがいくつか見えます。これは乳管に沿ってできているようです。」という説明になりました。

こちらとしては、衝撃の強い結果でした。

ですが、この後にすぐ「これならば、温存手術ができるかもしれません。」という言葉が出て、前回のブログのような感じになった次第です。

お母さんの乳房が大きい方だということと、腫瘍の場所が乳房の上の方だったことが、温存手術の条件にあっていたようです。

 

前回のブログで書いたように、僕はお母さんの少し悲しそうな顔を見ていて、具体的な説明の一つひとつはあまり気にならなかったです。

ですが、よくよく思い出してみると、一つはっきりと気になったことがありました。

それはお母さんの気持ちの問題に関わる内容です。

医師と看護師の説明では「温存手術をできるのならば、温存手術をした方がいい」という感じが随所にありました。

強制するような言い方はできないので、お勧めするような言い方です。(お勧めするともはっきりは言えませんが。)

ただ、医師が温存手術を勧めている理由を注意深く考えると、「高齢者だから」ということは間違いないようでした。

温存手術での手術後の乳房の形は、医師には保証することはできません。ましてや、今回の場合、この医師が手術をするわけではないのです。

僕は確認のために診察の最後に「温存と全摘+再建を比べた場合、温存の方が治療全体での体への負担は少ない、と思っていいのでしょうか?」と聞きました。

そうしたところ、医師は感情を込めた語気で「ええ、それはそうです。」と答えて、「(だからお母さんに温存手術をした方がいいよと言ってあげて下さい)」と言っているように感じました。

(温存手術ならば一般的に術後は放射線をかけます。これは通常25日間も病院に通うという、高齢者には大変なものです。ただ、この病院では高齢者でかつ手術の結果に断端陰性の場合は放射線は省略するという説明を受けました。)

 

お母さんは美容の意識がとても高い人で、手術後の乳房の形はかなり気にしています。

なので、医師が高齢者の体への負担を考えてお母さんへ温存手術を勧めることと、お母さんの希望が少しズレているように感じました。

僕もお母さんの乳がんの話を聞いた当初は、お母さんには温存手術を勧めるべきだと思っていました。

それにはいくつも理由がありますが、お母さんの美容意識も込みで、温存手術の方がいいのではないかと思っていました。

ただ、今回の検査の結果によって、お母さんの乳がんは乳管内の進展があることが分かりました。

このような場合に温存手術をすると、手術後の乳房の形がどうなるのかは、当たり前ですが素人の僕に想像することは一切無理です。

この条件での手術が、お母さんの希望を満たしているのか少し心配です。

 

幸いなことに、この病院では過去の温存手術の結果の写真を多く保存してあり、それをお母さんに見せてもらえました。

その中には、お母さんのような乳管内進展があった例も含まれていたようです。

医師の診察が終わった後に、たっぷりと時間をとって別室で看護師さんがその写真を見せながら丁寧に説明してくれました。

とても親切な看護師さんの多い病院でした。看護師さんが一人の患者にかかり切りになってしまっても、問題の起きない体制だということです。

乳がんの治療は他の病気に比べて患者の心のケアが重要だと思います。

その意味でも、とてもいい病院でお母さんが手術してもらえることは嬉しい限りです。

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

彼女の地元に行って、お母さんの診察に付き合ってきました。

結論から書くと、お母さんは温存手術をすることになりそうです。

一応まだ手術方法を考えている最中で、一週間以内に決めて病院に連絡する予定になっています。

診察でMRIの結果を医師が見て、説明と共に温存手術が可能だと告げられました。

前回までのブログで書かせてもらったように、お母さんの乳房のしこりは2か所あります。

それでも、乳腺にそって紐状に切除することで、なんとか温存手術が可能らしいです。

 

医師を始めてとして、看護師の人も温存手術ができるという説明を患者の(お母さんの)喜ばしいこととして話している感じでした。

そして、娘であり乳がん患者としては先輩の彼女も、お母さんが温存手術が可能だという説明を聞いて喜んでいるようでした。彼女のお父さんも、あまり話が分かっていない様子ながらも安心をしている様子でした。

診察室の中が喜ばしい雰囲気になっている中、当人のお母さんは浮かない顔をしているように、僕には見えました。

 

この時、僕は頭の中でいろいろと考えていました。気になることが多かったです。

 

一番気になったのは、MRIの結果を見て温存手術が可能だとおっしゃっているこの先生に聞いたところ、手術をする先生は別だと言っていたことです。

MRIはこの日の午前中に撮影されていて、この診察の最中に結果がパソコンに転送されてきました。つまり、この医師が初めて見たことになります。

温存手術というのは、医師の腕に頼る部分が大きいです。

温存手術で局所再発を防ぐためには、実際のがんのしこりよりもマージンを取って大きく切除する必要があります。

ですが、大きく切除し過ぎると、今度は術後の乳房の形が悪くなってしまい、乳房をせっかく残す意味が低くなってしまいます。

乳がんの温存手術では「取り残しがない範囲でなるべく小さく切除する」という非常に繊細なことが要求されます。

僕は、実際に自分で手術をする医師の所見で、温存手術が可能かどうか判断すべきなんじゃないかなと、この時思っていました。

 

ただ、その時に僕はそう思ってはいましたが、それ程強い疑問としてそれを思っていたわけではないです。

「まあ、がんセンターの乳腺科の医師なのだから、経験が豊富で、こういう例をたくさん見ているのだろうな」と思い浮かべながら、なんとなくその場にいました。

 

温存手術について、良いことも多いですが、注意しなければいけないこともたくさんあります。

次々に医師と看護師から温存手術について説明されたのですが、それらを聞いていて、僕は少しずつお母さんが可哀そうな気持ちになってきました。

僕がそういう気持ちになったのは、おそらくお母さんがそう感じているのが僕に移ったんだと思います。

 

もしお母さんが事前に乳がんのことをいろいろ調べて知識を得ていて、そして温存手術を望んでいたのであれば、温存手術が可能だという結果を知った時に喜べたのかも知れません。

ですが、お母さんには、それはあまりないようでした。

 

乳がんの手術をしたい人なんていないと思います。自分が乳がんであるという事実を受け入れたくない患者だっていくらでもいるはずです。

まだ、自分の乳がんに対して完全に受け入れる体制ができてない彼女のお母さんにとって、手術の方法を自分で考えて決めることは辛いことなのかもしれません。

 

今更ですが、これが普通で当たり前なのだと感じました。自分の病気をしっかりと把握して、前向きかつ精力的に治療できる患者などは、ごく一部です。

多くの患者さんは、治療などはしたくないと心の奥では思っていても、しないとだめだから嫌々治療をするものでした。

がんのような大病ならば、なおさらそうなるのではないでしょうか。

 

僕の彼女の感性があまりに一般的な女性と違っているので、この当たり前のことを少し忘れていたような気がします。

「治療しないともっと悪くなってしまう」と言われた場合、多くの患者さんは悲しい気持ちになりますよね。

それは、頭では治療しなければならないと理解していても、気持ち的には治療などしたくないということがあって、葛藤が生まれているからです。

ですが、僕の彼女の場合は「治療しないと、もっと悪くなってしまう」と言われても、「それでも、やりたくない治療はやらない」「私は他の人と違うので、悪くならない」と本気で言う人です。

口で言ってるだけではなくて、本気でそう思っているのです。凄まじい胆力です。多分お父さんに似たんだと思います・・・

彼女のお母さんも彼女と同じように強気なところが多いのですが、本質的な部分では一般的な女性の感性に近い人のようです。

正直に言うと、お母さんが温存手術が可能だと聞いて彼女がとても喜んでいるのに、本人のお母さんが余り喜んでいない様子を見て、僕は彼女に対してもう少しお母さんの気持ちに寄り添ってあげられたらいいのになあ・・と思ってしまいました。

彼女自身が自分で温存手術を受けていて、良い結果を出せているので、これは仕方のないことなのかも知れませんけれど。

 

お母さんの乳がんの状態に関する具体的なことは、次回以降のこのブログで書かせてもらうことにします。

お母さんがお世話になっている某がんセンターの医師や看護師の様子や、センター全体の雰囲気などのも、いずれ詳しく書くことにします。とても良い感じでした。

あそこならば、お母さんの治療は安心できると思います。

 

しかし、診察室の中でお父さんの携帯電話が鳴りだした時にはドキっとしましたが、その電話をとって普通に話し出したお父さんにも驚かされました。

彼女の胆力は間違いなくお父さんから受け継いでいるようです。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

PAGE TOP