説明されない転移2
乳がんは見つかってから手術も全身治療もせずにずっと放置しておくと、最後は必ず遠隔転移して、乳がんが原因で亡くなるものなのでしょうか?
それとも、一定の大きさになったら、それ以上大きくなったり転移したりしない乳がんも存在するのでしょうか?
もしそういった乳がんが存在するのならば、その割合はどのくらいなのでしょうか?
僕はそれを知りません。とても重要なことのはずですが、知りません。
多分、医師は知っているのではないでしょうか。しかし、実際の乳がん患者の方もほとんど知らないと思います。
それを知らないのに、乳がんだからとにかく標準治療を受ける、というのもおかしいような気もします。
放置しておくと、乳がんは必ずステージⅠ→ステージⅡ→ステージⅢ→ステージⅣとなるのでしょうか。
なんとなく、一般常識ではそうなるように言われています。ですが、僕は医師や医療関係者にそう説明されたことはありません。
もしこうなるのならば、標準治療を受ける必要性は高いはずです。こうならない可能性もあるのならば、相対的に標準治療を受ける価値は低くなるはずです。
こういった説明を誠実に行うだけで、標準治療を受けない人は減るのではないでしょうか。それとも、こういう説明をしてしまうと、逆に標準治療を受けたくなくなるものなのでしょうか。それならば、医師は患者に隠し事をしてしまっていることになります。
どちらにしても大切なことなのですから、患者には説明されてしかるべきだと思います。
全ての患者に説明する必要はないと思いますが、そういう説明を必要とする患者も多くいるはずです。
僕の彼女は浸潤径1.8cmで乳がんが見つかって、手術後に無治療だと再発率が20%~25%だと言われました。
それはすでに彼女は他の臓器に転移してしまっている確率が20%~25%だということなのでしょうか?僕はそう解釈していますが、違うのかもしれません。
彼女は乳がんの定期健診は受けていませんでした。もし発見がもっと遅れたならば、彼女の乳がんはもっと進行していたのでしょうか?
一般的な常識では、「発見が遅れれば進行する」と言われているので、そう感じます。
ですが、そういう説明を医師から受けてはいませんし、実際のデータで見たことはありません。
ましてや、そういったことと、「転移」を絡めた説明を、医師から受けませんでしたし、ネット上や本などでデータを見たことがありません。
もし、彼女の乳がんの発見が1年遅かったならば、腫瘍径はもっと大きくなっていたのでしょうか?
そして、手術後の転移再発率はもっと高くなっていたのでしょうか?
もしそうなら、それはつまり、1年経った分腫瘍が大きくなって、その間に転移した可能性があるということなのでしょうか?
例えば1年後には1.8cmの腫瘍が3cmくらいになっている可能性があるのでしょうか?
そして、そこで手術したのならば、その後の無治療の転移再発率は30%~35%などのように1年前に手術した場合より、上がっているのでしょうか?
つまり、腫瘍径が1.8cmから3cmになる間に、10%くらいの可能性で転移が起こったと予想されることなのでしょうか?
これらのことは、全て当たり前のことのように感じますが、どうやら当たり前のことではないようなのです。
彼女を含めた乳がん患者は、これらのことを当たり前のこととして治療にのぞむと思いますが、どうやら、その限りではないようです。
腫瘍がいくら大きくなっても転移が発生しない場合や、ごく小さい腫瘍の内に転移してしまう乳がんも多いらしいのです。その場合は転移と腫瘍径は関係ないです。
おそらく日本で一番有名な乳がんの転移再発予想検査であるオンコタイプDXに提出する項目に腫瘍径がないと聞いています。つまり、腫瘍径と転移が必ずしも直結しないということです。
早期発見早期治療は重要なことですが、早期発見早期治療が一般的に言われているほど万能なものではないようです。標準治療が万能なものではないのと同じです。
早期発見早期治療にとっても、標準治療にとっても、患者に対して説明したくない都合の悪い部分があります。それを言ってしまうと、患者が検診や標準治療を受けたくなくなるものです。
ステージⅢ以前での抗がん剤やホルモン療法などの全身療法は、手術後にすでに転移しているかいないかが今の技術では判断できないために、確率的に行うしかないということなどです。
転移していない患者に対しては、全く意味のない治療になってしまうということです。副作用の被り損です。
標準治療は全て確率的に行うので、基本的にこの「副作用の被り損」が発生する可能性があるのです。
そういったことはなかなか患者には説明されません。
また検診で早期発見しても、すでに転移してしまっていたり、放置しても転移しない可能性もあるのです。
それらも、はやり検診を受ける人間にはなかなか説明されないことと言えます。検診損やそれによる手術損も生まれる可能性が一定程度あります。
しかし、そういう損をしてしまうようなデメリットも含めて、トータルでデメリットよりメリットが上回るのが、標準治療のはずです。
副作用の被り損も含めてトータルのメリットを出すのが標準治療なのに、その副作用の被り損の部分を説明しないことに、僕は納得できませんでした。
それに納得できず、標準治療を拒否する人や、拒否するまではいかずとも、治療を受けるのが嫌になる人は多いかもしれません。
患者は治療のメリットとデメリットの全てを正確に説明されて、その治療を受けるかどうかを決めるべきです。
そのためには、乳がん治療において、もっと転移について説明されければならないと思います。
また、転移についてまだ分かっていないことは、分かっていないと患者に知らせるべきです。
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ディスカッション
コメント一覧
oomura さま
昨日のコメント返信拝読しました。
oomuraさんと彼女さんが主治医を信頼できないまま治療を受けられたことが理解できました。
私がコメントすべき内容ではないのですが、私がわかることでoomuraさんが少しスッキリできれば良いなと思いコメントします。
(療養中で時間があるので)
乳がんを放置しておくと、最後は必ず遠隔転移して、乳がんが原因で亡くなるものなのでしょうか?
→その通りです。(他に病気がなければ!)
乳がんは必ずステージⅠ→ステージⅡ→ステージⅢ→ステージⅣと進行します。
一定の大きさになったら、それ以上大きくなったり転移したりしない乳がんも存在するのでしょうか?
→ありません。(乳がん=悪性腫瘍です。良性腫瘍は乳がんとは言いません。)
標準治療を受ける必要性は高いはずです。
→ゆえに医師は、標準治療をすすめるのです。
僕の彼女は浸潤径1.8cmで乳がんが見つかって、手術後に無治療だと再発率が20%~25%だと言われました。
それはすでに彼女は他の臓器に転移してしまっている確率が20%~25%だということなのでしょうか?
→違います。彼女の全身のどこかに残っているがん細胞があるとして、(ないか、あるかはわからない)全身のどこかに存在している細胞が遠隔転移し、どこかに再発する確率が統計的データーとしてだと思います。
発見がもっと遅れたならば、彼女の乳がんはもっと進行していたのでしょうか?
→進行していたでしょう。
術後病理のサブタイプで治療方針を決めていくので説明がされなかったことと、治療がなぜ必要かの理解ができずに治療を受けるとなると辛かったですよねー
でも彼女さんは、oomuraさんとともに悩み葛藤できたことで救われたと!ひとりでないと感謝しているかと、、、
日本乳癌学会、乳癌診療ガイドラインを参照して見てくだい。きっとスッキリできると思います。
昨日に続きコメントしていただいてありがとうございます。
実は乳がんがどのような原理で生まれて進行していくかは、まだ医学的に分かっていないことが多いです。
ひまわりさんが答えて下さったことは、多くの人が乳がんに対してそうだと認識していることです。マスメディアで取り上げられる場合は、おおむねこのような説明で行われるかもしれません。
ですが、科学的に厳密に見ると、どうやらこの限りではないようなのです。例外が多く存在します。下手をすると、それが例外と呼べないくらいの頻度で、そうならない場合があるらしいのです。
今回のブログにコメントして下さったマンゴさんが書いて下さったようになるのです。
今回僕が「~~なのでしょうか?」という書き方を多くしたのは、実際に僕が分からないからです。ですが、それと同時に、一部の医師やマスコミなどが、その分からないはずのことを確定していることのように説明していることへの問題提起として、反語としての「~~なのでしょうか?」という表現でもありました。
ひまわりさんにせっかく説明してもらったのに、それを否定するように言ってしまい、すみません。
ただ、必ずそうなることと、例外があって、おおむねそうなるけれどそうならない場合もあることは違います。それがあるために、乳がんの治療は確率的に~%で効果がある、というような表現しかできないのです。
また、そういう面があるので、標準治療を拒否して、怪しい民間療法へ流れてしまう患者もいるのです
はじめまして。
ちょっと自分の体験談を。参考になれば幸いです。
私は理論的思考が強い方で、乳がんの告知後は、治療方針などの理解に苦しみました。「なんで?メカニズムは?根拠は?確率って…標準治療が一番有効なの?ホント?」など自身が納得し理解するために調べ、可能な限り時間を割きました。主治医・医師に対しては、「説明が分かりづらい・説明時間が短い(それでも30分以上はありましたが)・なんで説明してくれないの?」という不満・不安も正直募りました。
その一方、「医学・生物学の知識が不十分な素人が乳がんや治療について深く理解するにはかなりの努力・時間がかかる」「現在の日本の医療報酬システムでは、1分の説明でも、1時間の説明でも診療報酬は同じ。経営破たんになる病院も多い。説明にもっと時間をさいてほしいから、弁護士のように面接時間により報酬を変えてほしいな…」という現実も感じ取りました。
そんな中、限られた術前の診察時間内で、なるべく自身の判断材料になる事項を引き出す努力をし
・「理論的には……言えるが(治療をしなくても大丈夫など)、その一方、……という事象も起こり得る(治療をしなかったために病状が重くなるなど)。癌細胞のメカニズムが解明されていない現状では、分からないことだらけ」
・「治療はやってみないと分からないことが多い。術前検査の結果も、手術で実際に開けてみないと分からないことが多い」
と感じ取り、「要は、分からないのね!」と漠然と思いながらも、私は納得して手術を受けました。
術後しばらくして、形成外科医(私は一次再建をした)とあることを話していたとき、その医師から「….が起こる確率は10%という統計的なデータはあくまでも参考。あなたが10%入ってしまったら…..。個々人の確率は50%」といった言葉をもらい、細かいことに捉われすぎていた自身に気付き、ハッとしました。
大病院で治療を受けた私。同じ病院を始め乳がん患者の仲間に多く出会い、様々な症例(信じられない症例も結構あった)や情報に触れ疑問も増し、その都度いろいろ調べたり、医師に訊いたりもしました。お陰でそれなりに知識も深くなりました。
今はそれから4年。乳がん発覚から5年。今の私の考え方などを述べると、
・乳がんの微小転移(血流に乗ってしまっているもの)の時期は不明。調べる術もなし。また、血流などに乗って全身に回ってしまった癌細胞が必ずしも他の臓器などで再発するとは限らない。死滅するものもあれば、大人しくしているものもある。要は免疫力とのバランス。例えば、更年期になり骨密度が下がると骨付近で長年大人しくしていた癌細胞が活動を開始し再発となったりすることがある。
・病理結果から得られる様々な因子から、蓄積データを基に遠隔転移・再発の可能性(確率)を推測し行うのが標準治療
・標準治療は一定の効果はあると思うが万能ではない。効果には個人差が大きい。やってみないと分からないと私は理解している。副作用が大きい薬物治療については、期待できる効果と副作用を勘案し、患者自身の置かれている状況・考え方・生き方などに基づき自身で決めるしかない。薬物治療だけでなく、治療全てだが。
・統計的な確率はあくまでも参考程度。個々人の確率は「効果あり・なし」といった50%。
・慢性病の要素が強い乳がん。それがゆえに、生活習慣などの因子が再発に大きく影響する。比較対象がかなり難しい。なので、統計データーはあくまでも参考
・生活習慣の見直しなしに乳がんの克服は難しい。
・人の生命力は凄く神秘的。理論では説明できないことが、いい意味でも悪い意味でもよく起こる。医師は、特に大病院の医師は、それに日々直面している。いい意味で理論では説明できないことが起こった患者は病院には戻ってこない。病院に戻ってくる患者は、「え?まさか?」と悪い意味の方のみ。
・患者の基礎知識があがると、医師の説明も深くなる。
・どんな治療を選択しても、行きつくところは精神論。心の持ちようが身体に与える影響が大きい。
・細かいことに捉われず本筋を理解することが重要
ざっとこんな感じです。何かヒントになれば幸いです。
長文失礼しました
コメントをしていただいてありがとうございます。
マンゴさんがおっしゃることは、ほぼ僕の結論と同じです。
そして、僕はその結論に達するまでに、本やネットやセカンドオピニオンなどで奔走しました。
主治医から得られる情報だけでは到底たどり着けるものではありませんでした。
特にマンゴさんの書かれた転移に関することはそうです。
細かい原理でも、原理を脇に置いた大筋の説明でも、時間の短い説明でも長い説明でも、どういった形態の説明でも良いので、僕は筋の通った説明を主治医にして欲しかったのです。
残念ながら、主治医の説明は主治医が考える治療法を受けさせるための説明でしかなかったです。
まあ、今思うと、看護師のSさんが教えてくれたように、彼女と僕の方からもっといろいろなものを引き出すために主治医にアプローチをすべきではあったと思います。
乳がんの治療法の作用機序や確率的理解などは非常に複雑です。複雑で分かりにくいものだからと言って、医者が全て決めて、患者の意向が反映されないのはおかしいと思い、その思いがブログ本文のようになりました。
マンゴさんが書いて下さったことは、一つひとつを取り上げて話し合いたい内容なのです。ですが、それをするとあまりに長くなってしまうので、ここではしないことにします。すみません。
いずれこのブログで取り上させてもらい、意見を書かせてもらうかもしれません。
僕は標準治療は分からないことを分からないままに治療していることを認めるべきだと思います。そう説明すべきだと思います。分からいことを正直に伝えないことは不誠実だと思います。治療を受けるのは医師ではなく患者であり、その分からないことに自分の体を賭けるのは患者なのですから。