乳がんの診断を受けた彼女のお母さんと、一度電話でお話した後は、僕はまだお母さんと直接話をしていません。

ですが、お母さんの話は彼女から聞いています。

やはり心配です。

彼女のお母さんは、自分の健康のことも美容的なことも大切にしている人です。ただ、彼女の話を聞く限り、乳がんについて分かっていないこともあるような感じです。

 

お母さんがかかっている病院の側は、もうお母さんの手術を決めて、その準備を進めているようです。

次回の受診でMRIと生理検査と検体検査をやるようです。これは手術のための準備の検査です。

お母さんは医師の簡単な説明で全摘+再建を決めたようです。話を聞く限りでは、温存手術と全摘+再建のそれぞれのメリットとデメリットを理解しているようには思えません。

乳がんの治療をする上で僕が一番重要だと思う、局所再発と転移再発の違いも理解していないはずです。

高齢の患者が、そういった自分の体にとって重要な情報をよく理解していない状態でも、病院は温存と全摘を患者に決めさせ、手術を準備を着実にしています。

彼女はお父さんも健在で、お母さんは今の病院で2回受診していますが、そのどちらにもお父さんが付き添っています。

なので、病院側は、例えお母さんが理解していなかったとしても、お父さんにも話をしているので、それで良しとしているのかもしれません。

ですが、残念ながらお父さんもあまり乳がんのことを理解できていないようです。

 

なんと言うか、僕は彼女の乳がんの手術の時と、同じ気持ちになっています。悲しいです。

乳がんの手術をするというのは、患者にとってみれば、その人の生涯でも最大の重大事の一つのはずです。

そこに進むためには、僕は患者自身が乳がんのことをしっかりと知り、治療を受ける心構えを作る必要があると思います。

他の病気や他のがんならば話は違うと思います。一般的な病気なら、医者が信頼できるのならば、全てを任せればいい場合も多いです。

ですが、乳がんの治療法で、特に温存か全摘のみか、全摘+再建かなどは、患者が自分の意思で決めるべきことです。

美容的な問題が大きいからです。

ただ、その術式を選ぶ場合に、病気としての乳がんの状態が考慮される必要があるのです。

そして、それが結構難しくて、理解されていない場合もあります。

温存手術と全摘手術では生存率は変わらないです。もちろん、全摘+再建でも生存率は変わらない。

このことは、患者が医師に言われても、にわかには理解できないことのはずです。

そもそも、あまり説明しない医者もいます。

「再発が恐いから、全摘にしておこう」

そう思って全摘手術を選択する乳がん患者は多いと思います。

ですが、その「恐い」は局所再発が恐いのであって、「転移して完治しなくなるのが恐い」という意味の恐いとは話が全然違うのです。

局所再発は基本的に治ります。局所再発と転移再発は関係ないです。

 

もし、僕がお母さんに局所再発と転移再発の関係をごちゃごちゃと説明したとしても、理解してもらえないかもしれません。

理解してもらったとしても、お母さんの選択は変わらないかも知れません。

でも、僕はお母さんが手術を行う前に、このことをお母さんに説明しなければならないと思っています。

もし、自分が逆の立場だったら、そういうことを後から知るのは非常に辛いです。

そのことを知っているか知らないかで取ったであろう選択が変わらなかったとしても、正しい情報を前提に、良く考えた上での決断には意味があると思います。

 

 

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