乳がんの治療法について、なぜいつも彼女と話がかみ合わないのかを考えてみました。
彼女がタモキシフェンを飲みたがらない理由を、僕は感覚的には理解できませんでした。ですがその理由について、僕は分からないままで良しとしました。彼女の気持ちを尊重しようとしました。
女性としての気持ちの部分なのですから、男の僕には共感できないのは仕方のないことです。無理にこじつけても仕方ないです。
ですが、彼女に何度も「あなたは私にタモキシフェンを飲ませようとしている」と指摘されました。自分の気持ちを押し付けようとしていると。
これは男の僕が、女の(そして乳がんの当事者の)彼女の気持ちを理解していないがために、そういう物言いになってしまったのだと、反省しようとしました。
しかし、何かが違う・・・
毎回僕がどれだけ慎重にどれだけ客観的な事実だけを説明しようとしても、どこか話がかみ合っていないのです。
彼女が乳がんになったショックで現実を見たくないのではないか?
だから、僕がありのままの説明をすると、厳しい現実を突き付けられたことによって、彼女は心を防衛するために怒り出すのではないか?
そう仮定しても、やはり何かが違うのです・・・
彼女はとても豪胆なのです。本当に、あらゆるものを恐れないのです。自分の体の不調や病気も、うざったいとは思うものの、恐いとは決して思う人ではないのです。
乳がんもあまり恐れているようには見えません。だからこそ、彼女は乳がんの再発率を下げる薬であるタモキシフェンを飲まないかどうか迷っているのです。
はたして、乳がんをあまり恐れていない人が、乳がんになって強いショックを受けて、現実を直視できなくなって、そして乳がんの再発率を下げる薬を飲むことを拒否するのでしょうか?
その可能性も完全には否定できませんが、今まで彼女と長く付き合ってきた僕から見ると、そうではないとしか思えません。
以前に彼女は非常に重篤な病気に陥りましたが、まったく恐がらず、我を忘れるようなことはなかったです。
それよも、彼女が乳がんの再発率と薬の副作用の関係をあまり考えようとしない原因で、思い当たることが僕にはあるのです・・・
おそらくこうなのです。
彼女はタモキシフェンを飲みたくない。そして乳がんの再発もしたくない。
ただ、それだけなのです。
「タモキシフェンを飲まなくても私の場合は75%~80%再発しないんでしょ? 私はそれに賭けたい」
と彼女は言っていたのです。
それは一つの選択肢としてあります。無治療の選択です。もし、この選択肢を取るならば、タモキシフェンを飲むことによる副作用は回避できますが、転移再発率は彼女の場合20%~25%となることを受け入れなければなりません。
そのことをしっかり理解し納得しなければならないことは間違いないはずです。ですが、そこで僕が再発率のことを言うと、彼女は怒り出すのです・・・
僕は思い当たるのです・・・
彼女はギャンブルに対しても、そういうスタンスだったなあ、と・・・
ギャンブルが好きで止められない人には特徴があります。一つはギャンブルに対して勝った時のイメージしかもてないこと。二つ目は、その瞬間我慢して将来に備える自制心が持てないこと。三つ目は数字に弱いこと。
彼女は三つをほぼ満たしています・・・それでギャンブルをして負けています・・・
彼女は乳がんの治療法を話し合っている時に、僕にこういうニュアンスのことを言っています。
「再発率が多少下がろうが、上がろうが、どちらでも再発しないかもしれないんだよね?」
「それなにの、今から5年間も女性ホルモンを抑えるのはいやだわ」と。
完全にギャンブル止められずに負け続けるタイプの人の発言を、彼女は乳がん治療においてしていました。
僕は乳がん治療はギャンブル・乳がん治療はギャンブル2と題してブログを書き、乳がん治療では確率が大きな役割を果たすと主張しました。ただ、そういう主張をしたかっただけです。
これを書いた時は、別に彼女が乳がんの治療をギャンブル的にとらえていると書いたわけではなかったのです。ですが、僕は深層心理で彼女のギャンブル心に危機感を抱いていたから、ギャンブルと題してブログを書いたのかもしれません。
それは彼女と話がかみ合わないわけです。僕は彼女に対して、治療や副作用というコストと、それで得られる乳がんの再発率の低下という利益の話をしていたのですから。
その確率や副作用の大きさなどはトレードオフ(何かと何かの交換)の話なのです。
ですが、彼女はそんな話は聞きたくなかったわけです。多少確率が下がろうが上がろうが、彼女にはさほど問題ではなかった。彼女は賭けをして、勝か負けるかの勝負の話をしていたのです。
確率などは考えずに、ひたすら大当たり(無治療で無再発)狙いだったのです。
ギャンブル(治療)を始める前から、悪い流れ(乳がんの再発)のことなどを口にする、僕に対して怒っていたのです・・・そんな弱気でどうする!と・・・
タモキシフェンは人によっては強い副作用が出て、服用を中止せざるを得ない場合があります。その場合は乳がんの再発率が上がってしまうことを受け入れなければなりません。
そもそもホルモン感受性が無ければ、ホルモン療法で再発率を下げることもできない。
僕はネット上で、多くの乳がん患者さんの発言を読ませてもらっています。正直、彼女の考え方に不謹慎なものを感じてしまい、許せなくなる時があります。
ですが、怒ったり叱りつけたりしても、それは彼女の乳がんをサポートすることにはならない・・・彼女の気持ちは尊重しなければならない。
地道に行くしかないですね・・・
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