彼女の望みは無治療
彼女の乳がんはルミナールタイプです。温存手術後に転移再発予防のために考えられる治療法の選択肢は、抗がん剤治療とホルモン療法です。
全身に対する転移再発予防は、この両方をする選択と、ホルモン療法のみの選択、そして何もしない無治療が考えられます。
部分切除した乳房に放射線を照射する放射線治療もありますが、これは乳房のみの問題であって、全身に対する転移再発の予防とは違う話です。分けて考えなければならないです。
彼女の乳がんが発覚し、温存手術をすることに決めた辺りから、僕と彼女は手術後の治療をどうするかを少しずつ話し合っていました。
な、なかなか意見は一致しませんでしたが・・・
彼女は当初からすべて無治療の可能性を探っていました。治療自体を面倒くさがっているふしがありました。
それと、これまで自分が医者の世話にならずに健康に生きてきたことに誇りをもっているようで、そういう気持ちから積極的に治療ができないこともあるようでした。
また、女性として、薬を使って女性ホルモンを抑えることにも抵抗があったようです。
僕はそういった彼女の意思を尊重しようとは思ってはいました。
ですが、乳がんが転移再発したら治療が非常に難しくなることを知ってからは、彼女が嫌がらない範囲でのできる限りの治療の選択肢を模索し始めました。
そして、いろいろ調べているうちに、がんをまったく治療をしない人や、まったく治療しない方がいいと言っている医者がいることを知りました。かなりの衝撃でした。
確かに、そういう芸能人や有名人などがいるとテレビで聞いたことはありました。しかしそれは、そういう人たち特有の強いポリシーなどがそうさせるものだと勝手に思い込んでいました。
でも、がんについて知識を得るほど、「まったく治療しない」ことが精神的な問題だけではないことが分かりました。
結局、いくら医療の技術が進歩したとはいっても、現在の技術ではがんを根本的に治療するのは(一部のがんを除いては)無理なようなのです。
そこで、ならば現在の医学ががんに対して行っていることは何のか?となります。根本的に治療できないのに、何をするの?ということです。
僕の知りえた知識の範囲で結論を出すと、現在の医学ががんに対して行っていることはほぼ予防です。がんの再発や進行を予防するために、あらゆる治療を行っています。
がんが進行すると、原発臓器以外の臓器に転移します。転移した臓器でがん細胞が増殖すると、その臓器の機能が落ちます。臓器の機能が落ちたことに対する治療はとても重要で、これに関しては予防ではありません。直接の治療です。
ただ、そういった場合の治療以外のがんに対する治療はほぼ全て、将来がん細胞が増えることに対する予防と言っていいと思います。
そして、僕がこのブログでうざったいくらい繰り返していることですが、予防は確率の問題なので、メリットとデメリットをしっかりと考えた上でバランスよく行わなければならないと思います。
がんに対する過度の恐怖により、副作用を全く顧みずにできる治療はなんだってするというのはあまり賢明とは言えません。逆に過度の楽観で、どうせ何もしなくても再発する可能性はたかが知れていると言って、無治療にこだわることも危険です。
話を少し戻しますが、がんをまったく治療しない人やまったく治療しない方がいいと言っている医者は、つまり、がん(=病気)の予防はしない、という考えなのです。
予防というのは一長一短なのです。いつも良いことだけとは限らないのです。予防は、予め(あらかじめ)防ぐものです。来ることが確定していないものに対して、来ることを前提に、先に対処しておくことです。
来なかった場合は、丸損になります。キツい言い方ですし、不謹慎な言い方かもしれませんが、丸損なのです。
お金の損ならばいざしらず、副作用が出る治療が丸損になると、健康のための治療のはずが、本末転倒になってしまいます。
僕の彼女は術後の再発予防を全くせずに無治療の場合だと、「約20%~25%くらいで再発する」だろうと医師に言われました。そして、その再発率を少しでも下げるべく、抗がん剤治療やホルモン療法をやるように医師に勧められました。
再発率20%~25%ということは、少なくとも4人に3人は無治療でも再発しないということです。ホルモン治療を5年間やったり、抗がん剤治療をやったりしても、4人に3人はやり損ということになります。
こう言うと、おそらく多くの人は「将来再発するかどうかは今は分からないのだから、再発予防の治療が無駄になる、という言い方はおかしい」と思うはずです。
その通りです。将来再発するかどうか分からないからこそ、今行うことが「無駄になる」という言い方はおかしいのかもしれません。
しかし、将来どうなるか分からないことに対して、損得が測れないのならば、それならば「約20%~25%くらいで再発する」という数値は意味をなさないことになります。パーセンテージに関わらず、治療方針を変えるべきではない、ということになります。
将来どうなるかは今は分からないから、ホルモン治療も抗がん剤治療もやるべき。万全を期すべき。
将来どうなるかは今は分からないから、何もやらなくてもいい。むしろ副作用がある治療をするのは間違っている。
どちらが正しのでしょうか?
非常に難しいことですし、どうでもいいことにも見えることです。
僕はこれが、がん医療の本質だと思っています。
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ディスカッション
コメント一覧
彼氏さんががん患者なのかと思うほど
いろいろ調べられていて
彼女さんの気持ちがみえませんでした。
医師に脅されたと
彼女さんがいうならわかりますが
彼氏さんが怒ってるし。
彼女さんが医師と話してその方針で行くのならその程度の思いです。
彼氏さんの選択肢は必要なかったのではと
もう横から口を挟まずほっといてあげたらと思ったこともあります。
>どちらが正しいのでしょうか?
彼女さんが正しいと思った方に行かれればよいのでは。
コメントありがとうございます。
ほっておくのが筋でしょう。
ですが、ほっておいて事態が悪い方に向かった場合、僕は納得できないでしょう。
彼女自身は納得します。その場合、さらにほっておくべきです。
そうすべきですが、僕にはできません。
僕が耐えられません。それだけです。