彼女がタモキシフェンを飲み始めてから、まだ一週間も経っていません。

副作用が心配ではありますが、薬が合うか合わないかは個人差の大きいところであって、どうにもならないところです。

今のところ「彼女は少し寝苦しいような気がする」と言っている程度で、強い副作用は出ていません。

これから彼女のタモキシフェンの副作用はどうなるか分かりませんが、僕としてはやれることをやっていくだけです。少しずつタモキシフェンに関する情報を集めて行こうかと思っています。

 

まず、タモキシフェンを一日の内で何時頃に飲むのが最適なのかを調べてみようと思いました。

医師からの説明だと、たしか「何時でもいいけれど、飲み忘れがないように朝飲むといい」とのことでした。

最初はなぜ朝飲むと飲み忘れがないのか理解できませんでした。よく考えると、これはおそらく、飲み忘れた時のフォローが朝ならばやりやすい、ということなのでしょう。

タモキシフェンを飲み忘れた場合の対処方法は、「気づいた時刻が、飲む予定だった時刻から長く経っていない場合は、忘れていた分を飲む。次回飲む予定の時刻に近かったら、一回分を抜く形にして、次回の分を予定通りに飲む」とのことでした。

つまり、いつも朝飲んでいたなら、日中に飲み忘れたことを気づけるかもしれない。いつも寝る前に飲んでいたら、その後寝てしまうわけで、飲み忘れに気付くのは早くても朝になってしまいます。だから毎朝飲んだ方が飲み忘れた時のフォローがしやすい。という理屈なのでしょう。

このことは、タモキシフェンを一日の内で何時に飲むかはほとんど重要ではない、ということの裏返しのはずです。

実際に医師も「何時でもいい」と言っています。朝飲めば飲み忘れのフォローができるよ、と飲み忘れのフォローを優先できるくらい、何時に飲んでもいいということです。

 

タモキシフェンは人によってはホットフラッシュに代表される更年期障害に近い副作用が出るようです。ネット上で検索すると、とても辛いという書き込みも多いです。

なので、少しでもその副作用を緩和させるべく、一日の内に何時に飲むかを考えている人も少なくないようです。

普通に考えると、薬を飲んだ直後にその薬の血中濃度が高くなるはずなので、飲んだ直後に副作用が最大になると考えます。なので、例えば眠れなくなる副作用が出ている人は朝飲んだり、日中に辛い副作用が出る人は、逆に寝る前に飲んだ方がいいと考えます。

ですが、これらの時間調整も効果が薄いようです。

なぜかというと、タモキシフェンは毎日飲み続けることによって、少しずつ血中濃度が高くなって行く薬なので、1錠を飲んだ血中濃度の上昇分は全体から見ると低そうだからです。

 

ノルバデックスの添付文書には、「約6~7時間で血中濃度が最高になった」「血中半減期が20~30時間だった」「1日20mg飲んでいると約6週間目まで血中濃度が上昇した」となっています。(添付文書をブログにコピペしていいのか分からなかったので、アバウトに内容を書きました。)

この「6~7時間で血中濃度が最高になった」という内容から「6~7時間後に副作用も最大になる」と考えてしまうかもしれませんが、これは間違いです。

これはおそらく、タモキシフェン20mgを1錠だけ飲んだ時の血中濃度のことを言っています。毎日飲み続けた場合は、そうはなりません。

血中半減期が20時間~30時間なので、これはつまり1日=24時間で、体の中にあるタモキシフェンの量が半分にしかならないということです。

タモキシフェンを飲んだ後、最高になった血中濃度を100とすると、1日目は飲んだ後にまず100になり、そこから24時間後に50になります。そこでまたタモキシフェン20mgを飲むわけですから、50+100で150になります。そしてその24時間後には半分の75になります。そして100足すわけですから175になります。

これはかなりアバウトな計算です。細かく見るとまったく正確な計算ではないのですが、要するにタモキシフェンは毎日20mg飲み続けることによって、少しずつ体の中にたまって行く薬なのです。

最終的に飲み始めてから6週間くらい経つと、それ以上は体の中のタモキシフェンの量が増えなくなるということです。

なので、一応「タモキシフェンの副作用は6週間経ってからが本番だ」と言えなくもないのですが、これもまた正確にはそうではないのですよね・・・

6週間という期間はタモキシフェンの血中濃度が最大になるまでの期間で、そこでまず血中濃度が安定して、そこからホルモンのバランスが安定するまでは、さらに時間がかかってしかるべきのはずだからです。そして、

タモキシフェンの副作用の大部分はホルモンのバランスが以前と変わることで発生するはずです。なので、ホルモン物質の量が安定するまでは、副作用も安定しないはずです。ホルモンバランスが安定してから、副作用が安定するまでさらに時間がかかる可能性もあります。

 

また、体の中にその薬がどれだけあるかによって、それが半分になるまでの時間(半減期、つまり体から抜けやすいか抜けにくいか)が変わってくるはずなのです。

最初に出た「6~7時間で血中濃度が最高になった」という数字は、それまで1錠もタモキシフェンを飲んでいなかった人が、最初に1錠飲んだ場合の時間です。6週間以上飲み続けた人が1錠タモキシフェンを飲んだ場合には6~7時間で血中濃度が最高になるとは限らないのです。

それに、6週間タモキシフェンを飲み続けた後の血中濃度がかなり高いのならば、そこに1錠分の血中濃度を足したところで大して変わらないかもしれない。

この二つの理由で、タモキシフェンを飲んでから6~7時間後に副作用が一番強くなるだろうという予測は、正しくない可能性が高いです。

残念ながら、一日の内でタモキシフェンを飲むのに最適な時間というものはないようです。

 

 

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乳がんになっても、その乳がんを恐れる度合いは人それぞれです。

僕の彼女は、相当に恐れない方の女性だと思います。もし僕と付き合っていなかったり、僕が何も口を出さなかったとしたら、彼女は手術以外は無治療を選んだ可能性があります。

病気の治療は患者の意思が尊重されてしかるべきだと僕は思っているので、乳がんについていろいろ調べましたが、最終的には彼女の意思で治療法を決定してもらおうと思っています。

ただ、彼女の選択を客観的にみて、あまりにも効率が悪かったり、無治療ならばあまりにも危険になってしまう場合は、彼女を説得して治療方針に介入しようと思っていました。

そして、彼女が受ける可能性のある乳がんの治療法を一つひとつ検討して行きました。

乳がんの治療法には抗がん剤治療のような副作用の強いものも多いです。なので、標準治療の範囲内でも、軽い乳がんには抗がん剤治療を適用しないです。要するに、効果と副作用のバランスを考えて、乳がんは治療方針を立てるのです。

効果と副作用のバランスを考えて治療法を決定する時に、彼女の意思(なるべく治療しない)もそのバランスの中に含めればいいのではないか。そういう結論になりました。

多少、治療をしない側に選択肢を寄せて、その中の選択肢でしっかりと考えればいいと思いました。

 

まず、彼女の乳がんはルミナールAだと判明したので、抗がん剤治療は一切考えないことにしました。サブタイプがルミナールAの場合、抗がん剤の効果は非常に低いと言われています。

なので、これは彼女の意思を抜きにしても、普通の選択肢です。

次に局所再発予防の放射線治療をやるかやらなかを話し合いました。これはちょうど「彼女の意思を含めたバランス」で考えると、やらないということになりました。

彼女は病理検査の結果で断端陰性となり、他の不安要素も特にないので、予想される局所再発率は9%になりました。放射線治療は局所再発率を約1/3にすることが認められているので、放射線治療の効果は9×2/3=6%の局所再発率を減らすことです。

「局所再発と転移の裏事情」でも書いたのですが、この6%は命の危険には全く関係のない6%です。

このくらいならば、彼女の「治療はなるべくやりたくない」という意思を尊重して、放射線治療をやらないという選択肢は十分にあり得ると思いました。なので、選択は彼女にまかせました。

(もちろん局所再発率を6%減らせることは大きいです。僕はこのくらいの数字で放射線治療をしないことを勧めるつもりはありません。ネット上で多くの乳がん患者の質問に誠実に答えている某医師も、温存手術後の放射線治療はたとえ断端陰性だったとしても省略すべきでない、とおっしゃっています。僕が放射線治療をやらなくても問題ないと判断するのは、彼女の意思を尊重した結果です。)

 

こういった具合に、抗がん剤と放射線治療は彼女の意思を尊重することができました。ただ、ホルモン療法(タモキシフェン)に関しては、いかんともし難いです。

ルミナール型乳がんはホルモン療法が良く効きます。特にルミナールAに関しては、他のサブタイプと比べて、タモキシフェンの効果が一番大きい乳がんのサブタイプです。

ルミナールAの乳がん患者の彼女がタモキシフェンを飲まないことは、もったいないとすら言えるレベルなのです。

ですが、そこで前回のブログで書いた「タモキシフェンを転移してから飲み始める」という選択肢が出てきたわけです。

前回のブログで僕はタモキシフェンを転移してから飲み始めることは、「選択肢の一つになる可能性がある」と書いたのですが、現時点ではまず人には勧められない選択肢です。原理的にはあり得ることですが、エビデンスがありません。

ただ、もし彼女がたとえルミナールAでタモキシフェンを飲まないことがもったいないとすら言えることを理解して、なお飲むことを拒否するのならば、僕は「ならば・・・」と転移後のタモキシフェン服用を勧めることもできるのです。

 

タモキシフェンをあえて転移を確認してから飲むことのメリットは、初めから転移再発しない場合(微細転移が存在していない場合)に、タモキシフェンの副作用の被り損をしないことです。

彼女の無治療再発率は約25%なので、75%は再発しません。75%はタモキシフェンの副作用の被り損になってしまうということです。

タモキシフェンをあえて転移を確認してから飲むことのデメリットは、すでに転移していた場合に、進行が早まってしまうことです。

「タモキシフェンを飲まなかったから再発した」というのは、おそらく原理的に間違っています。術後にタモキシフェンを飲むか飲まないかを悩んでいる段階で、既に微細転移があるかないかが決まっています。

ただ、術後すぐにタモキシフェンを飲むことによって、微細転移が一切成長せずに、一生微細転移のままである可能性は出てきます。これは現実的にタモキシフェンが転移を抑えたことと同義です。

 

こういった事情をよく二人で話し合った上で、今は彼女はタモキシフェンによるホルモン療法はやる方向で考えています。

でも、僕はタモキシフェンを飲みたがらない彼女に対して、「それならば、転移再発してからタモキシフェンを飲もう」とアドバイスするかどうか、真剣に悩んでいた時期がありました。

 

 

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ここ数回はブログを書くのが辛かったです。

ブログの内容は僕にとって重要なことだったので、何を書くのかを迷うことはなかったです。内容的には辛くはなかったです。

しかし、それらの内容の伝え方について迷いました。

多くの人に、少なくても聞くだけは聞いて欲しい内容でしたが、聞いて欲しくあると同時に、これを読んだ人の気を悪くしてしまう可能性を強く感じていました。

多くの人が行っている治療法にケチをつけることになってしまうかもしれませんでした。それには覚悟が必要です。

しかし、ただ「ケチをつける」というようにはならない情報の伝え方(ブログの書き方)ができる可能性もあるかも、という思いもありました。

正しく伝えることによって、情報は相手の有益なものになります。逆に、伝え方によっては相手とのいさかいの原因にもなりえます。

このことは、彼女と僕の今までの関係性の中で、嫌というほど実践的に経験してきた事実です。か、完璧なエビデンスがあります・・・

 

そういったことを思いつつ、慎重に、標準治療とは少し見方の違ったことを書いてみたした。いかがだったでしょうか?

大人の事情をなるべく遠回し書きつつ、それを意識せずとも読めるように書いてみました。なので、書きながら変な疲れ方をしてしまいましたが・・・

 

今回のブログの題名の「タモキシフェンと最新治療」というのは、僕がこれからこのブログで書いて行きたいテーマです。

おそらく、どちらのテーマも大人の事情がからむ割合の少ないもののはずです。

タモキシフェンは乳がんのホルモン療法の代表的な薬で、その効果やエビデンスは疑いようがないです。

ジェネリックも多数出ているので、この意味でも大人の事情が少ない薬であることは間違いないです。

タモキシフェンについては、僕は知り得たことをすべて何も考えずに書けばいいですし、ほとんどの医師も大人の事情なしに医学的な事実を教えてくれるはずです。

 

最新の乳がんの治療法を調べて、それについてあれこれ考えてみるのも面白そうです。

将来実現するかもしれない治療法についてならば、素人目線で好きなことを言っても許されるはずです。

(まあ、僕はいつもこのブログで好きなことを言わせてもらっているのですが。)

そして、乳がん患者の家族や近しい人間にとっては、その想像は心がおどるに違いないはずです。

僕などは、乳がんについて良い事情を見つけるたびに彼女に報告して、彼女本人より心がおどりまくっていることが多いです。

予想外に彼女の心がおどってくれなかった時には、なんとか一人心おどり状態をキープしつつ勢いにまかせて、このブログで内容を報告しようと思います。

このブログが変なテンションの時は、一人おどり状態だということになります・・・

さ、察して下さると助かります・・・

 

 

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