彼女はすでに転移しているかもしれない
今後もし彼女に転移再発が出るのならば、今すでに彼女のがん細胞は他の臓器に転移しています。
このことは、医学的には常識のようです。
乳がんが局所の(乳房の)治療後に転移再発が発見されるのは、すでに転移していた発見できないくらい小さながん細胞のしこりが、後に大きくなって発見されたものです。
乳がんのしこりは1cmになるまでに10年以上かかると言われています。それは乳房の中での話ですが、他の臓器に転移した後のがん細胞の成長速度も大きくは変わらないらしいです。
なので、乳がんの転移が他の臓器で発見された場合、そのがん細胞は発見されるかなり前からすでに転移していたと考えられます。
原発の乳房の乳がんにしろ、転移先の腫瘍にしろ、それが発見されるのは、それが最初にでき始めてから10年以上経ってからだということなのです。
人間の視点から見ると(特に医師ではなく患者本人から見ると)、原発の乳房の乳がんが大きく成長してしまったが故に、他の臓器へ転移してしまったように見えます。
しかし、人間が乳がんのしこりに気付けるのは、今の技術だとせいぜい5mmくらいからです。しこりがそこまで成長するには、やはり長い時間が経っていて、その長い時間のうちにすでに転移してしまっている場合が多いようなのです。
このことは、局所再発で生存率が変わらないこととあわせて、医師が積極的に説明はしないけれど、患者が乳がんの治療方針を決めるために知っておくべき最重要な事実の一つだと思います。
局所再発の有無で生存率が変わらないことと、転移再発した場合のがん細胞は手術をする遥か以前にすでに転移していたこと。この二つはお互いに整合性があります。
手術する以前にすでに転移してしまっている。だけど、その転移したがん細胞が形成するしこりは微小なので発見できない。転移再発するかどうかは、そこに微小のがん細胞のしこりがすでにあるかないかで決まる。
時系列で見ると、局所再発するしないの遥か以前に、すでに転移するしないが決まっているのです。よって、局所再発するしないにまったく関わらず、転移再発するしないが決まるのです。
だから温存手術と全摘手術の生存率は変わらない。だから温存手術という術式が成立する。
一応、僕も慎重に情報を精査しているつもりです。そして、このことは、現在のほぼ全ての医者が同意するエビデンスのあることようなのです。
これらのことが正しいとなると、医者は患者にする説明方法をいくつか変えなくてはならなくなるかもしれません。
まず、一番重要だと思われることは、医師は患者に対して局所再発と転移再発をこれでもかというくらいはっきり分けて、別物だと説明しなければならない。
転移再発はむしろ「再発」という言葉を使ってはいけない。そこにあったがん細胞のしこりが大きくなって発見できただけなのだからです。局所再発は本物の「再発」です。
はっきり分けないから、局所再発と転移再発が同じような感じに受け取られてしまう。そして二つの混同から治療方針が不鮮明になってしまう。
局所再発と転移再発は危険度が全く違います。治療に対する方針だって変えて当然だと思います。
また、彼女は無治療の場合、「20%~25%くらいで転移再発する」と予想されています。上記の理屈でいくと、この説明は「20%~25%の確率ですでに転移している」とするべきです。その確認ができないだけです。
この二つの説明の仕方は大きく違います。ですが、医学的にそれに対して講じる手段は同じものにならざるを得ません。なので医師が勧める治療法は変わりません。
医師が勧める治療法が同じであったとしても、なぜその治療をするべきなのかの説明次第で、患者は治療を受けたくなったり受けたくなくなったりするはずです。
「20%~25%の確率ですでに転移している」のならば、逆に「75%~80%の確率で現在は他の臓器にがん細胞はない」と言えます。がん細胞のない臓器に向かって治療を施すのですから、それは丸損どころか、副作用の分の健康被害を受けることになります。
このような説明を受けた患者は、多少なりとも治療意欲が後退するのではないでしょうか。
僕はブログで過剰治療という言葉を使うくらい、病院での治療は最低限にした方がいいと思っている人間です。ですが、それを人に押し付けるつもりはありません。
ただ、医師は患者に対して科学的、医学的になるべく正しく説明するべきなんじゃないかな~、と思う次第です。
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ディスカッション
コメント一覧
仰る意味はほぼわかります。
ただ、思うのは、
ではどうやってその25%再発している患者とそうでない患者を見分けるか?
これは確率論ですよね?
ご存知のように乳がんのサブタイプが4パターンあります。
ステージ(病期)も細かく分類があり、
それによって術前、術後補助療法を再発率等を予測して行われる訳ですが、
それにしたって、予測を大きく反したケース、
例えば0期で完全切除で95%以上、ほぼ完全に治癒すると言われながら
転移してくる場合や顔つきが大人しいホルモン陽性乳がんでも
割と早く再発転移してきたりする場合があること。
大雑把に、こういう場合は3年注意して何もなければ、まあ多少安心、
こういう場合は10年以上たっても注意が必要、
とか色々あるわけですが、
患者によって、治療への思いはそれぞれだし、
治療意欲が持てない思いや、個別の事情により治療できない、中断など、
経験上もわかりますし、
時間とともに、治療の選択肢も増えたり、
診断技術、再発予測因子の判定の為の選択肢も増えています。
ただ、実感として、やってみて結果論でしかわからないし、
治療に対し、医師でもそれぞれの立場でいろんな考えがありますが、
絶対、というものはなく、
「再発(が既に存在してまだ判明してないとしても)に対し防御、ミクロン単位の
転移を抑え込む。等の目的で、できる限りの治療をして悔いのないように」というケースが
多いのではないでしょうか。
そんなことを思いました。
(反論とかそういう意味でのコメントではありません。)
良く検討されていらっしゃると思います。
彼女さんの無事を心から願います。
コメントをしていただき、ありがとうございます。
転移再発が25%と言っても、それは確率での話です。
そして、それに対する治療は、やってみなければ実際のところ分からない、結果としてのものになります。
サブタイプによって治療法を細かく適用し、少しでも転移再発をおさえるための治療が、現在の乳がん治療では行われています。
これ自体はすべての乳がん患者にとって好ましいことだと思っています。
ただそれが大人の事情によりねじ曲げられている部分があると僕は思っています。
そこにがん細胞があるかないか分からないところに向かって治療することは、そこに確実にがん細胞がないことが判明していない限り、有効なことです。
つまり予防は有効な行為です。
ただ、それを絶対的なものだとしたり、必要以上に行ったり、悪用されたりすることに対して、僕は警鐘を鳴らすべきだと思います。
そのためには、真実がすべて知らされた上で、議論される必要があると思っています。
治療法には罪はないです。
彼女にもブログにもお気遣いいただき、ありがとうございます。