僕が彼女が受けた標準治療を通して、一番納得できず、もっと説明が必要だと思ったことが転移についてです。

(遠隔)転移が乳がん治療での一番のキーポイントになることは、多くの人が認めるところだと思います。

乳がんは遠隔転移しなければ、命の危険はないです。(リンパ節転移は直接的に命の危険はないです。このブログでは、転移は遠隔転移の意味で統一しています。リンパ節転移には、必ず「リンパ節」転移とつけます。)

 

一般的な常識では、乳がんは早期発見早期治療が重要だということになっています。そして僕も彼女が乳がんになるまではそう思っていました。

なので、彼女の乳がんが発覚しているのに、3ヶ月近い手術待ちをしていた期間は地獄の苦しみでした。

小林麻央さんの報道があるので、今から乳がんの検査をして乳がんが発覚した人は、やはり長い手術待ちの期間で苦しみを味わうことになるかもしれません。

そして、多くの人が思うはずです。「手術待ちの間に転移してしまうのでは?」と。

これを僕は彼女を担当した何人もの医師たちにすべて聞きました。すべての医師は歯切れ悪く「大丈夫だろう」としか言いませんでした。

早期発見早期治療が重要な乳がんで、なんで何カ月も手術待ちをしていていいのでしょうか?

もしそれが危険なことならば、善良な医院は「うちは今混んでいるから、転移してしまう前に他の医院で手術をしてもらいなさい」ということになるはずです。

そういう話は聞かないのです。

「もし心配ならば、他の医院で手術してもらって下さい」と言われたことはあります。転移する可能性が心配なのに、それを答えずに、手術待ち期間をこちらの精神的な問題にしてしまうのです。

 

一体、どのくらい乳がんを放置したら転移するのでしょうか?

 

僕はそれを知りません。本やネットで調べ、医師にも聞いてみましたが、未だにその基準となる数値のようなものは見たことがありません。

転移していない乳がんをどのくらい放置すると転移してしまうのか。

このことは、間違いなく全ての乳がんの検診と治療の基準になるはずのことです。

期間でなくても、乳がんのしこりの大きさでもいいです。例えば、1cmで転移していないしこりが2cmになった時に、どのくらいの確率で転移が起きるのか。

その基準が数値としてまったくなければ、どのくらいの頻度でどのような乳がん検診を受けるべきかも決まらないはずです。

1cm→2cm→3cm→・・・とだんだん大きくなって行く乳がんの腫瘍の中で、どこで一番遠隔転移が起きやすいのか。常に均等なのか?

危険な期間や危険な大きさに合わせて、集中的に検診をして、何としてもその危険な大きさや期間に到達する前に、乳がんを発見すべきなはずです。

 

近藤誠という医師は、直径1mmのような、現在の技術では見つけることの難しい乳がんの腫瘍の大きさで、転移する乳がんはほぼ全て転移してしまう、と言っています。

なので、今の技術で見つけた乳がんはほとんど全て、治療しても意味がないらいしです。

転移する可能性のある乳がんは、今の技術で見つけられる大きさでは全てすでに転移しているし、今の技術で見つけられる大きさまで転移しなかった乳がんは、それ以降も転移しないらしいです。

つまり、「乳がんがいつ転移するか?」についての答えを、近藤誠はほぼ全て「1mm以下」としているのです。

なので、乳がんの検診も治療も無意味だと言っています。

 

非常に当たり前のことですが、僕にはこれが正しいのかどうかが分かりません。

近藤誠が間違っている、と言っている医師は何人も見たことがあります。

ですが、近藤誠を否定する医師の説明をみると、「1mm以下」で『全ての』乳がんが転移する、という『全ての』の部分が間違っている、というものしかないです。

驚くべきことですが、「1mm以下」で乳がんの転移が起こっていることは事実らしいのです。全体の何%くらいがで転移しているのかが分からないだけで、そういう乳がんもある(むしろ多い?)ことは事実なのです。

そして、全体の何%くらいが「1mm以下」で転移して、残りの何%くらいが1cm以上で転移して、さらに何%くらいが2cm以上で転移して・・・・というようなデータを僕は一切見たことがありません。

繰り返いしますが、こういうデータが乳がんの検診や治療で一番重要なデータになるはずです。

もしかしたら、近藤誠が言っているように、ほとんどの乳がんは「1mm以下」で転移しているかもしれないのです。

そうなると、それこそ近藤誠が言ってるように、「乳がんの検診や治療は無意味」となるのです。

それは現在の標準治療無意味であることを意味してしまいます。

 

何度も言いますが、当たり前のことですが、僕にはこれが正しいのかどうかが分かりません。

ただ、これが乳がん治療で一番重要なことであることは、僕にも分かります。

乳がん治療では遠隔転移すると、根治が難しくなるのです。

なので、その遠隔転移が起こる前に原発部分のがん細胞を取る、というのが標準治療のコンセプトなはずです。

早期発見早期治療というのは、そういう原理で行われています。早期発見早期治療の「早期」とはいつまでのことなのか?

 

そういうデータがあるのならば、乳がん患者全員にしっかりと見せて、それを元に治療方針を医師と患者で話し合って決めるべきです。

また、そういうデータをもとに、乳がんを心配する女性それぞれが、検診を受ける間隔を決めるべきです。

そういうデータがないのならば、ないことをしっかりと患者に説明して、「データはないが、臨床的にこうなっている」と正直に説明すべきです。

一番重要なことを「患者は知らなくていい」としてしまうから、標準治療にひずみが生まれます。

そのひずみを、僕の彼女は受けたと思っていますし、小林麻央さんももしかするとそういうことを感じて標準治療を拒否したのかもしれません。

標準治療では、一番重要なことがオープンになっていないから、近藤誠が「がんは治療しても意味がない」とう本を書くと、その一番重要な部分に触れていることに多くの人が驚き、それがベストセラーになるのです。

どちらが正しいか、ということとは別次元の話です。

人は隠し事をしている人の言っていることは、たとえ正しくても絶対にそうは思えないのです。

 

 

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6月29日発売の週刊新潮に小林麻央さんについてのショッキングな記事が書いてあるということを、6月30日の深夜にネットで知りました。

散歩がてらコンビニによって立ち読みでもしようと思いました。コンビニで立ち読みをして、ショックを受けました。週刊新潮を買って帰って何度も読み返しました。

内容としては、ネット上で得られる麻央さんの治療歴に関する情報の他に、麻央さんが行った「民間療法」と言われているものが「気功でがんを治す」というものだったということです。

「気功」で乳がんを治せないことは言うまでもありません。

なので、記事全体としては「がんにまつわるエセ情報が氾濫していて、それに騙されて標準治療を受けずに亡くなる人がいる」という感じで構成されています。

それはいいです。いいですが、僕はそれに違和感を強く感じました。

 

この記事全体で随所に乳がんの標準治療が万能のように書かれている印象を受けました。それはストレートに書いてありませんが、エセ情報や詐欺的な情報と比することで、そのように僕は感じました。

そして、その流れから、標準治療を受けなかった麻央さんに問題があるように行間から読み取れるような記事になっていました。

詐欺的な治療法をする人間はもちろん問題がありますが、標準治療を受けなかったことが麻央さんだけに責任があるとすることも問題があると思います。

標準治療受けるメリットとデメリットが適切に説明されなかった可能性はないのでしょうか?

僕は彼女の乳がんの治療法の説明を主治医から聞いて、心からその主治医が説明する標準治療を彼女に受けてもらいたくなくなった時期があります。

そのような状態におちいって、実際に標準治療から飛び出して行ったのが麻央さんで、苦渋の選択として嫌だけれど最低限度受け入れたのが僕の彼女なのです。

大きな違いはないはずです。

(前回のブログの結論として、僕は「患者の側から医師にアプローチをして、患者・医師間の信頼関係が築けるかもしれない」としました。今回のブログの内容は、それと矛盾するように見えるかもしれません。ですが、医師個人との信頼関係の問題と、乳がんの標準治療全体の話では問題点が違います。僕には麻央さんの問題は標準治療という枠組み全体の問題に見えます。そして、週刊新潮の記事も標準治療を受けるか受けないかの問題として取り扱っていました。なので、僕としては、前回のブログの内容と麻央さんの話は矛盾はしません。ご理解いただければ幸いです。)

 

現在の乳がんの標準治療は良い方向には向かっていますが、万能ではないです。

週刊新潮の記事を読むと万能のように読み取れます。万能なものを飛び出したバカがいたという記事の書き方は納得ができません。

麻央さんが「気功でがんを治す」治療を受けていた期間は無治療だということになります。

標準治療でも無治療での生存率を計算し、治療を行った場合の生存率の上昇率と副作用のバランスが良ければ、その治療を行います。バランスが悪ければ無治療が推奨される場合もあります。

ただ、標準治療には治療法がいくつも選択肢があるので、そのどれかをやった方が生存率が高まる場合が多いだけです。

以上のことから

標準治療を受けない→乳がんが確実に進行する 標準治療を受ける→乳がんが治る

というような単純な標準治療の説明の仕方は間違っています。

残念ながら、麻央さんが標準治療を受けても、助からなかった可能性もあるのです。麻央さんが標準治療を受けなくても、助かった可能性もあるのです。そのどちらの生存率が確率として高いかの問題です。

極端に誇張された標準治療の良い部分だけを世間に広めることこそ、実際には標準治療に失望して標準治療を受けない人を増やす原因になるかもしれません。

 

 

標準治療では生存率が推測され、無治療でも生存率があります。その差があるだけです。それは確率的な差です。

そして、標準治療には副作用がありますが、無治療には副作用がありません。乳がんが進行するデメリットはどちらにもあります。

それらすべてのことを考え合わせて、乳がんの診断を受けた女性は、標準治療を受けることが無難であるから標準治療を受けるのです。

誰だって、治療は受けたくないはずです。そして、その受けたくない治療を受けても100%確実に治るとは言えないのです。

標準治療を受けない選択肢が頭をよぎってしまう方が、むしろ多いのではないかとすら思います。

副作用があって嫌だけれども、乳がんが治る確証はないけれども、それでも標準治療を受けなければならないのです。

標準治療を乳がん患者に納得して受けてもらうよう説明することが最重要なのではないでしょうか。それはとても難しいことです。

そうするためには、現在の標準治療が万能でないことを医師が認めることも必要なはずです。医師が選んだ治療法には副作用などのデメリットあること認めなければならないはずです。

副作用や心理的なデメリットの話を大してせずに、「この治療が標準ですから」と一方的に押し付けられた治療法を、一体どの乳がん患者がやりたくなるのでしょうか?

 

 

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前回と前々回のブログで、僕は小林麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことを、色々好き勝手に書かせてもらいました。

情報の少ない中で主観的な内容で書いてしまい、読んで下さった方の中に気分を害された方もいらっしゃったかもしれません。

申し訳ありませんでした。

 

具体的な内容はいくつか書きましたが、全体として僕が麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことは、医師との信頼関係が築けなかったのだろう、ということでした。

僕自身が、僕の彼女の乳がん治療を通して「医師との信頼関係を築けなかった」と強く感じているので、それを麻央さんの治療歴に投影してしまっているのかもしれません。

ただ、現在の標準治療と呼ばれる多くの病院で行われている乳がんの治療の流れには、本質的に患者と医師が信頼関係を築けない危険性があると僕は感じています。

 

残念ながら、現在はまだ100%乳がんを治す治療法はありません。多くの治療法が開発されていますが、それらは、乳がんの進行や再発を確率的に減らすことができるだけです。

なので、乳がん患者に対する医師の説明は、「この治療法をすれば、再発率が~%下がる」などのようになります。全ては数字の話になります。

僕の彼女も、「手術後に何も転移再発の予防をしなければ、20%~25%の可能性で再発します。タモキシフェンを飲めば10%前後再発率を下げられます。」というように説明を受けました。

(まあ、実際はこのように明確には説明されませんでした・・・明確に説明してもらえなかったことで、僕と彼女は主治医に不信感を持ってしまうことになるのです・・・)

基本的に、乳がんの患者に対する医師の説明は確率的な数字を元にします。

また、前々回のブログで書いたように、乳がんは検査の段階でも確率的に処理されます。エコーやマンモグラフィー、MRIなどの画像の検査の結果で、確率的に乳がんの可能性の高い患者だけに、確実に乳がんかどうかを判別するための針の生検を行います。

 

そして、この確率というものは非常に曲者なのです。

確率に対する感じ方は人によって大きく違います。慎重なタイプの人から見た場合と、強気な人から見た場合だと、同じ数字の率でも全く違って見えます。

僕の彼女は恐ろしいほど強気なタイプで、「無治療で再発率が20%~25%程度ならば、75%~80%は何もしなくても治るということ。私はそれに賭けたい」と当初は言っていました。

逆に、「どんなに副作用があろうとも、転移再発率を1%でも下げられる治療法があるならば、その全てをやりたい」という乳がん患者も多くいるはずです。

 

つまり、患者によって、医師から提案される(確率的な)治療法の受け取り方が全く違う可能性があるのです。

しかし、医師からすると、副作用と効果のバランスを考え合わせた効率の良い治療法を、正しい治療法として患者に勧めるしかないです。

医師からバランスの良い治療法や検査方法が提案されたとしても、乳がんを強く心配する患者からは「どうしてもっとしっかり(完璧に)検査や治療をしてくれないんだ」と不満が出る可能性があります。

逆に僕の彼女のように強気な患者からは「10%程度、再発率を下げるために長い期間に渡って女性ホルモンを抑えるような薬を飲みたくない」と文句が出るのです。(彼女が今飲んでいるタモキシフェンは女性ホルモンを抑える薬で、5年間服用を続けることが一般的です。)

医師が誠意を持って忠実に職務の全うを目指したとしても、このように患者に不満を持たれてしまう可能性があるのです。

そして、多少なりとも医師側に大人の事情が加わってしまうと、乳がの治療において患者と医師の信頼関係が築けない可能性はさらに高くなります。

 

乳がんの治療は、医師から患者への治療法の医学的な説明とは別に、患者と医師の治療姿勢に対する話し合いが必要だと思います。

彼女と僕は、主治医と今に至るまで一切話し合いはできませんでした。

「先生から提案していただいた治療法の重要性は分かります。ですが、彼女の心理的な抵抗感から、その治療法はやりたくないです。やらない場合のリスクはどのくらいになるのでしょうか?やらないという選択肢はありませんか?」という問いに対して、

「病院側としての治療法はこれをすることです。患者側が治療を拒否するのならば、治療を病院側が強制することはできません。ですが、治療を受けない場合の責任は持てません。」

という回答以外には一切返ってきませんでした。

 

僕の彼女は比較的、自分の乳がんを恐れていないです。

ですが、乳がんが発覚してとても心配になる女性は多いはずです。

また、僕にはなかなか分からないことですが、乳がんが発覚して女性としての悩みを持つ患者も少なくないと思います。

そういった乳がん患者に対して、医学的な正論のみを押し付けようとする医師は非常に危険です。

そもそも、乳がんの治療は確率的なものです。

乳がん治療で得られる確率的なメリットの中に、患者本人の心理的なメリットも含めて、全体の治療方針を医師と患者でよく話し合うべきだと思います。

 

 

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