彼女の乳がんが発覚してから術後の治療法を決めるまでに、乳がんに関する本を結構買いました。

全ては読んでいなかったので、読み残した部分を今になって読んでいます。

ある本に大病院の特徴について書いてありました。主にデメリットについて書いたあったのですが、内容の客観性を保とうとするためか、まずは大病院のメリットについて書いてありました。

一通り読んでみた感想は、やはり大病院にはメリットもあるがデメリットもある、という当たり前?のものでした。そしてメリットもデメリットも、大病院は患者が多いということから発生することでした。

 

僕はこのブログで何度も大病院の問題点(という名の悪口かもしれません・・)を書かせてもらいました。

その主な批判内容は「医師が患者に親身にならない」ことと「過剰医療気味になる」ことです。

特に「医師が患者に親身にならない」ことは、乳がんの治療にとって、下手をすると致命的と言えるレベルのことではないかと、今でも思っています。

乳がんの治療は、思った以上に医師と患者の信頼関係が重要だと、僕は彼女の乳がんの治療を通して感じました。

 

ですが、「医師を信頼するために」の回のブログで紹介したSさんの話によって、僕にとっての大病院に勤める医師に対する見方は大きく変わりました。

また、冒頭でふれた乳がんについての本に書かれた大病院の特徴も、僕にとっては新たな大病院の見方でした。

それらをまとめて、現時点での僕が考える大病院のメリットとデメリットを書き出してみることにします。

 

大病院のメッリトもデメリットも患者数が多いことから生まれます。

ある病院で患者数が多いことから得られるメリットは、医師、検査技師、看護師などあらゆるスタッフの技術が向上しやすいということです。

医師の手術数がこれに当たる代表です。多く手術をこなしている医師は技術が高いと思って間違いないようです。

また、患者数の多い病院では、経験が稼ぎやすいためにあらゆる技師の技術も高くなりやすいようです。

乳がんならば、全ての検査の専門技師が大病院にはいて、それぞれ多くの患者を検査することで技術を磨いています。

意外なところでは、放射線の技師も経験によって実力が大きく変わるらしいです。

これはもちろん看護師にも言えるはずのことです。

このことは彼女と僕も真っ先に感じたことですし、いろいろなところで言われていることです。疑いようがないと思います。

冒頭の本にはこれに加えて、そういった良質な経験を稼ぎやすい場には、技術の向上を目指す若い医師や技師、看護師が集まってくる可能性が高い、と書いてありました。

若い医師や技師、看護師の目から見て良心的で自分達が成長できるような経営方針・治療方針の病院だからこそ、そういった精力的な人材があるまるらしいのです。

「若い人材」が多いか否かは、良い病院かどうかの一つの目安になりそうです。

今考えると、彼女が手術をしてもらった主治医もまさにそのような医師でした。がん専門の大病院で、乳がんの手術を年間(推定)200件前後こなしているようでした。

彼女の温存手術は、見た目は悪くなっていないと思いますし、がんの取り残しを評価する「断端」も陰性でした。

今まで僕はこのブログで大病院の文句ばかりを言っていましたが、まずはこういったことに感謝すべきでした。

 

また、僕はこのブログで何度も「大病院は防衛的になる」と主張してきました。大病院ほど、患者からのクレームや医療訴訟などから自分達を守ろうとする傾向があるはずだという結論を出しました。(大病院のデメリット5大病院のデメリット4)

最近、大病院で乳がんの治療をされた方ならば、治療を開始する時に書かされる同意書の量に驚かせれた方も多いはずです。

このことを僕は今まで良くないことだと決めつけていましたが、見方を変えると、これは長所になります。

こういった病院は「大事故や明らかな治療ミスなどは絶対に阻止する構え」のはずです。

そのせいで過剰治療気味になるかもしれませんが、手術死や薬の取り違えなどの重大な医療事故やミスには過敏なくらい警戒をしてくれている可能性が高いです。

病院側が自分達を守ろうとして対策を立てることは、必ずしも患者の不利益になるとは限らないような気も今はします。

 

他にも冒頭の本には大病院について面白いことが書かれていました。

最近は病院間で情報が共有されるシステムが確立されています。紹介を受けた患者の診断や治療が終わると、必ず紹介元の医療機関にその結果が報告される仕組みのようです。

その本ではこれを根拠にこのように書いていました。

紹介先の病院が正しい治療をして、それを紹介元の医療機関が評価するからこそ、紹介件数が増えるのだ、と。

なので、手術数が多い病院は、その治療で評価される部分があるからこそ、紹介が集まり手術数が増えている。つまり、手術数が多い病院は良い治療をしている、ということになるらしいです。

ちょっと言い過ぎなような気もしますが、大なり小なりそういう面もあるのでしょう。

また、その本では、やはり患者数が多いことは基本的には患者に不利益な面が多いという感じで書かれていました。しかし、医師以外のスタッフが多ければ、そのデメリットも解消される可能性がある、とのことでした。

なので、医師以外のスタッフが患者数に対して多い病院は良い病院の可能性が高いとされていました。

これはまったくその通りだと僕も思います。思いますが、その病院の医師以外のスタッフの人数と全体の患者数を知ることはできるものなのでしょうか?

実際に使える情報かどうかは分かりませんが、頭の片隅に置いておいても良い情報かと思います。

 

 

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乳がんは見つかってから手術も全身治療もせずにずっと放置しておくと、最後は必ず遠隔転移して、乳がんが原因で亡くなるものなのでしょうか?

それとも、一定の大きさになったら、それ以上大きくなったり転移したりしない乳がんも存在するのでしょうか?

もしそういった乳がんが存在するのならば、その割合はどのくらいなのでしょうか?

僕はそれを知りません。とても重要なことのはずですが、知りません。

多分、医師は知っているのではないでしょうか。しかし、実際の乳がん患者の方もほとんど知らないと思います。

それを知らないのに、乳がんだからとにかく標準治療を受ける、というのもおかしいような気もします。

 

放置しておくと、乳がんは必ずステージⅠ→ステージⅡ→ステージⅢ→ステージⅣとなるのでしょうか。

なんとなく、一般常識ではそうなるように言われています。ですが、僕は医師や医療関係者にそう説明されたことはありません。

もしこうなるのならば、標準治療を受ける必要性は高いはずです。こうならない可能性もあるのならば、相対的に標準治療を受ける価値は低くなるはずです。

こういった説明を誠実に行うだけで、標準治療を受けない人は減るのではないでしょうか。それとも、こういう説明をしてしまうと、逆に標準治療を受けたくなくなるものなのでしょうか。それならば、医師は患者に隠し事をしてしまっていることになります。

どちらにしても大切なことなのですから、患者には説明されてしかるべきだと思います。

全ての患者に説明する必要はないと思いますが、そういう説明を必要とする患者も多くいるはずです。

 

僕の彼女は浸潤径1.8cmで乳がんが見つかって、手術後に無治療だと再発率が20%~25%だと言われました。

それはすでに彼女は他の臓器に転移してしまっている確率が20%~25%だということなのでしょうか?僕はそう解釈していますが、違うのかもしれません。

彼女は乳がんの定期健診は受けていませんでした。もし発見がもっと遅れたならば、彼女の乳がんはもっと進行していたのでしょうか?

一般的な常識では、「発見が遅れれば進行する」と言われているので、そう感じます。

ですが、そういう説明を医師から受けてはいませんし、実際のデータで見たことはありません。

ましてや、そういったことと、「転移」を絡めた説明を、医師から受けませんでしたし、ネット上や本などでデータを見たことがありません。

もし、彼女の乳がんの発見が1年遅かったならば、腫瘍径はもっと大きくなっていたのでしょうか?

そして、手術後の転移再発率はもっと高くなっていたのでしょうか?

もしそうなら、それはつまり、1年経った分腫瘍が大きくなって、その間に転移した可能性があるということなのでしょうか?

例えば1年後には1.8cmの腫瘍が3cmくらいになっている可能性があるのでしょうか?

そして、そこで手術したのならば、その後の無治療の転移再発率は30%~35%などのように1年前に手術した場合より、上がっているのでしょうか?

つまり、腫瘍径が1.8cmから3cmになる間に、10%くらいの可能性で転移が起こったと予想されることなのでしょうか?

 

これらのことは、全て当たり前のことのように感じますが、どうやら当たり前のことではないようなのです。

彼女を含めた乳がん患者は、これらのことを当たり前のこととして治療にのぞむと思いますが、どうやら、その限りではないようです。

腫瘍がいくら大きくなっても転移が発生しない場合や、ごく小さい腫瘍の内に転移してしまう乳がんも多いらしいのです。その場合は転移と腫瘍径は関係ないです。

おそらく日本で一番有名な乳がんの転移再発予想検査であるオンコタイプDXに提出する項目に腫瘍径がないと聞いています。つまり、腫瘍径と転移が必ずしも直結しないということです。

 

早期発見早期治療は重要なことですが、早期発見早期治療が一般的に言われているほど万能なものではないようです。標準治療が万能なものではないのと同じです。

早期発見早期治療にとっても、標準治療にとっても、患者に対して説明したくない都合の悪い部分があります。それを言ってしまうと、患者が検診や標準治療を受けたくなくなるものです。

ステージⅢ以前での抗がん剤やホルモン療法などの全身療法は、手術後にすでに転移しているかいないかが今の技術では判断できないために、確率的に行うしかないということなどです。

転移していない患者に対しては、全く意味のない治療になってしまうということです。副作用の被り損です。

標準治療は全て確率的に行うので、基本的にこの「副作用の被り損」が発生する可能性があるのです。

そういったことはなかなか患者には説明されません。

また検診で早期発見しても、すでに転移してしまっていたり、放置しても転移しない可能性もあるのです。

それらも、はやり検診を受ける人間にはなかなか説明されないことと言えます。検診損やそれによる手術損も生まれる可能性が一定程度あります。

 

しかし、そういう損をしてしまうようなデメリットも含めて、トータルでデメリットよりメリットが上回るのが、標準治療のはずです。

副作用の被り損も含めてトータルのメリットを出すのが標準治療なのに、その副作用の被り損の部分を説明しないことに、僕は納得できませんでした。

それに納得できず、標準治療を拒否する人や、拒否するまではいかずとも、治療を受けるのが嫌になる人は多いかもしれません。

患者は治療のメリットとデメリットの全てを正確に説明されて、その治療を受けるかどうかを決めるべきです。

そのためには、乳がん治療において、もっと転移について説明されければならないと思います。

また、転移についてまだ分かっていないことは、分かっていないと患者に知らせるべきです。

 

 

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僕は小林麻央さんの訃報を聞き、麻央さんがどのような治療歴をたどったのかを調べました。

そして、麻央さんの治療歴について、なるべく「分析」という形ではなく、同じ乳がん患者(の彼氏)の目線から感じたことを書いてみました。(「小林麻央さんの乳がん治療歴について」「小林麻央さんの乳がん治療歴について2」)

乳がんの状態やそれに対する医師の診断などは詳しく分かりませんでしたが、それがどうだったにしろ「医師と信頼関係が築けなかったのではないか」ということを僕は感じました。

それは、彼女と僕が乳がんの治療で強く味わったことなので、そのせいでそう感じてしまったのかもしれません。

 

仕事の同僚やプライベートの友人、ご近所さんなど、どんな人間関係においても信頼関係は大きいです。基本的に信頼関係がなければお互いに何もできません。

相手がいつ裏切るか分からない状態だったり、厚意でしてあげたことが相手に悪意に取られてしまう状態であれば、お互いが持っている有用な能力を一切出せません。お互いに委縮します。

これは、乳がんの治療において、医師と患者の関係にも当てはまると思います。

医師が提案する治療法が患者の希望と違う場合、患者は納得できずに、その医師のことを不審に思うかもしれません。

医師の側からみても、自分の体が心配で必死に医師に注文を付けている患者が、ただ文句を言ってくるクレーマー患者に見えてくる場合もあるのかもしれません。

そして乳がんの治療では、これらのことが起こる可能性が原理的に存在していると僕は思っています。なぜなら、今の乳がんの治療に100%正解と言える方法はなく、ほとんどの治療法は確率が高い治療法というだけだからです。

「1%でも可能性の高い治療法をやって欲しい」と強く願う患者に対して、「1%程度の可能性を高めるためだけに大きな副作用が発生してしまうので、その治療法は止めましょう」と説明することは、医師と患者の信頼関係なしには成立しないのです。

その逆もしかりです。僕の彼女はあまり治療をやりたがっていなかったのに、次々にあらゆる治療法をやるように勧められて、もはや主治医を信頼できない状態になってしまいました。

つまり、医師と患者の信頼関係が築けていないと、治療法の選択肢がどんどん狭まって、ステレオタイプな型にはまった治療以外不可能ということになります。

患者は不満を持ち、医師は手札を失います。

 

僕は乳がんの治療について、どうすべきかと知人などに質問を受けたならば、「まずは信頼できる医院、信頼できる医師を探すべきだ」とアドバイスするつもりでした。

そして、信頼できる医院、信頼できる医師の基準なども、僕なりにいろいろ考えていました。

ですが、前回のブログ「医師を信頼するために」の中で紹介したSさんの話を聞いてから、考え方が大きく変わりました。

彼女の親友のSさんの性格は、彼女から聞く限り本当に優しい人です。人のために尽くすタイプの人です。

Sさんは看護師の仕事をしていますが、一時期看護師が辛くなり、仕事を離れていた時期があるらしいです。医療現場にいることが、精神的に辛くなったそうです。

そのような人ならば、医師が患者に対してどう接しているかということを、誰よりも良く見て、誰よりも多くのことを知っているのではないでしょうか。

 

Sさんの話を要約すると、大多数の医師は患者の態度によって機械的にも熱心にもなり得る、ということでした。

まあ、これは僕が少し拡大解釈している部分もあるかもしれません。

僕は、熱心な医師と機械的に仕事をこなすだけの医師と、二つに分かれるものだと思っていました。

数えきれないくらいの診察や治療をして、そられに対する医師の姿勢は凝り固まって動かないものだと思っていました。しかし違うらしいです。

医師の側も患者の要求に答えようとする気持ちがある場合が多数なのだと。(彼女の主治医がこの大多数に当てはまったのかは不明ですが。)

でも、そういう医師の誠意ある態度を患者が引き出せない場合も多いのだと。

これは僕にとって、非常に大きな事実です。

患者から見れば、自分や家族に対する医師の態度しか見れません。そして、僕は彼女への医師の態度と、僕の母への医師の態度を合計すると、それなりに多く見ました。それを元に、がん医療での医師と患者の関係を推測しました。

ですが、Sさんは医師と患者との関係を見てきた数が僕とは比べ物にならないことは言うに及ばず、同じ医師が違う患者にどう接しているかを見てきているのです。同じ医師が違う患者に対してどう接するかを、多くの医師の場合で見ているはずです。

これは看護師のような人にしか絶対にできない経験です。

その結論が「医師に対する患者の接し方次第で、医師の患者に対する接し方も変わる」ということなのです。

このことは、僕のわずかな経験や屁理屈をすっ飛ばして、まず大前提にしたいと思います。

 

「医師に対する患者の接し方次第で、医師の患者に対する接し方も変わる」ということを前提にすると、少し怖い推測も生まれます。

患者次第で医師の態度が変わるならば、患者の態度次第でどんな医師でもお互いの信頼を築けない可能性が出てきます。

患者次第では「信頼できる医師を探す」ということは、無駄足だという可能性も生じてくるのです。

まあ、これは極論ですので、あまり考えなくてもいいかもしれません。

取りあえずは、「信頼できる医師や病院を探す」ことと、「患者側から医師との信頼関係を築こうとする」ことは、どちらも間違っていないということなのでしょう。

 

 

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