彼女のお母さんの乳がんについて、彼女と少しずつ話し合っています。

彼女は自分のお母さんの乳がんについて、知り得ることはなるべく知りたいようです。

まあ、彼女の何事にも動じない性格からすると、それは当然のことかもしれません。

僕は、少しずつではありますが、高齢者の乳がんについてと、トリプルネガティブの乳がんについて、情報を集めようとしている状態です。

 

お母さんの乳がんについて、一つ分かったことがあります。

前回のブログで書いた「良くない結果」の、核グレードが3であることと、ki67が20%以上であるということは、どうやらあまり気にする必要がないことが分かりました。

この2つのことは、乳がんのタイプがトリプルネガティブならば、特に珍しいことではないらしいのです。

トリプルネガティブではki67が高いことが多いらしく、核グレードはki67が高ければ、それに引きずられて高くなる可能性があります。

なので、「トリプルネガティブの上にki67も核グレードも高い」とは考える必要がないようです。

 

多分、このことはトリプルネガティブの乳がんについてある程度調べたことがある人ならば、知っている可能性が高いことなんだと思います。

僕は彼女の乳がんについて色々調べていた時に、なるべく彼女の乳がんの状態以外のことも調べようとはしていたのですが、あまり頭に入っていなかったようです。

ただ、今は乳がんについてある程度の知識があるので、新しい乳がんについての情報を理解して覚えることは、以前よりも早いような気もします。

ですが、前回のブログでも書きましたが、お母さんの乳がんの治療には選択肢がほとんどありません。

僕が何を調べて、どんなに新しい知識をつけようとも、お母さんの治療の結果には全く影響がありません。

彼女はどうやらお母さんの病状のありのままを知りたいようなので、そのために、僕はトリプルネガティブの乳がんや高齢者の乳がんについて調べています。

と、そういうことにさせてもらうことにします。
そうでないと、知識欲が先行し、彼女のお母さんの心配よりも、トリプルネガティブや高齢者の乳がんについて調べることが目的になってしまいそうになります。

 

彼女の乳がんについて調べていた時は、夜は眠れず、手も震えました。

彼女のお母さんは、彼女ほど胆力があるわけではないので、あの時の僕と同じ思いをしているかもしれません。

今僕が調べるべきことは、乳がんの治療法の効果や再発率の数字などではないのかもしれません。

 

 

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彼女のお母さんの病理検査の結果が出ました。

まだ、正確な診断書やパソコン上のカルテを見せてもらったわけではないのですが、患者へ説明するための治療方針を書いた紙をメールで送ってもらい、それを見せてもらいました。

いくつか予想(というか願望)と違っている部分があり、その中で一番予想外だったことは、乳がんのタイプがトリプルネガティブだったことです。

事前に「高齢者の乳がんは女性ホルモン陽性のタイプが多い」という情報もありましたし、彼女がルミナール型の乳がんだったので、お母さんの乳がんもルミナール型の可能性が高いと、勝手に思い込んでいました。

 

病理検査の結果について、良い状態だったことと、難しい状態だったことに分けて書いてみます。

良かった部分は、病理検査の結果による正確な腫瘍の大きさが、二つの腫瘍のうちの大きい方の腫瘍で1.6cm×1cmだったことです。

これは事前の画像診断よりも、少し小さい値です。また、術中のセンチネルリンパ節生検によって、リンパ節転移に関しても無かったことが確認できました。

なので、ステージはⅠになります。

温存手術をしたので、切除断端も調べられますが、これは陰性でした。

これらのことが、今僕に分かっている、お母さんの乳がんの状態で良い情報です。

 

それに対して、病理検査の結果で分かった少し良くない部分もありました。

まず、エストロゲンレセプター(ER)が陰性で、かつHER2タンパクの発現も陰性だったので、乳がんのタイプはトリプルネガティブになります。

トリプルネガティブという用語は、乳がんの知識のある人ならば、それをとても大きな危険性だと認識してしまうかもしれません。

ですが、おそらく、トリプルネガティブという用語は、危険だという先入観が少し先走っていると、僕は思います。この辺りはこのブログでおいおい書かせてもらいます。

それと、もう二つ良くない結果が出ています。

がん細胞の核グレードが3でした。

それとki67が「20%以上」となっています。

この「20%以上」というのは、主治医にいずれ詳しく聞いてみます。

こちらの病院ではki67の閾値のような値(カットオフ値と呼ぶのでしょうか)を20%で分けているのでしょう。

ki67については、重要な指標であるにも関わらず、未だに病院間での扱い方が違うものです。

「20%以上」が、20%をちょっと超えただけのものなのか、大きく超えているのかで、評価を変える医療機関もあります。

そのどちらかなのかによって、ki67の値は心配要素になります。

 

また、何度かこのブログで書いていますが、彼女のお母さんは肝臓に持病があります。高齢なこともあり、抗がん剤治療は、本人も医師もやる予定はありませんでした。

これは、お母さんの乳がんのサブタイプがトリプルネガティブだと判明しても変わりませんでした。

なので、お母さんの乳がんに対する全身治療は無治療だということになります。

サブタイプがトリプルネガティブの乳がんの全身治療は、現在の標準治療では抗がん剤治療しかありません。

トリプルネガティブに対する新しい薬が発売されていることは聞いていますが、やはり高齢で肝臓の悪いお母さんに上手く効果があるかは微妙なところのはずです。

 

温存した乳房への放射線治療は医師が勧めていて、お母さんも受ける気になっているらしいです。

 

僕は、これからお母さんのような状態の乳がんについて、ある程度調べてみようかと思っています。

高齢者の乳がんの治療成績に関するデータはあまり多くありません。なので、知り得ることは少ないかもしれません。

一応調べてはみるつもりですが、知り得た情報をお母さんへ伝えることは、本人から聞いてこない限りは伝えることを控えようと思っています。

彼女には伝えようと思っています。

でも、どうなんでしょう。

お母さんの乳がんの状態から予想される転移再発率は、おそらく彼女の乳がんの状態から予想される転移再発率よりも高いです。

それをそのまま、娘である彼女へ伝えていいものなのか。

そもそも、僕自身がそれを詳しく調べてしまっていいものなのか。

 

彼女の乳がんの治療に関しては、僕は調べまくりましたし、治療方針について、彼女に口を出しまくりました。

それは選択肢がいくつもあったからです。

少しでも良い選択肢が取れるかもしれないと思ったゆえに、彼女に「もっと真面目に自分の治療のことを考えて」などと発破をかけたこともありました。

でも、今回の彼女のお母さんの乳がんの治療については、選択肢がないです。

トリプルネガティブの乳がんの全身治療は抗がん剤治療しかなく、お母さんの肝臓の状態だと、間違いなく抗がん剤治療は受けられないようです。

このような状態で、僕がお母さんの乳がんについてあれこれ調べることは、無意味どころか余計な精神的な苦痛をお母さんや彼女に与えてしまいかねないかもしれません。

まずは、その辺りのことを、彼女と話し合ってみようと思います。

 

 

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もうすぐ、彼女のお母さんの病理検査の結果が出ます。

その病理検査の結果を受けて、お母さんは術後の全身に対する治療方針を決めるわけですが、その時に僕がどうするべきかを考えておこうと思います。

当たり前ですが、彼女が治療方針を決めた時とは、僕の立場は違います。

 

彼女が術後に全身に対する治療方針を決めた時に、僕は僕の考える治療方針を彼女に無理強いするつもりはありませんでした。

ですが、結果的に随分と彼女ともめました。

ついでに、主治医とも、もめました。

あの時になぜ話し合いが上手くできなかったのかを、少し思い出してみようと思います。

 

僕は基本的に誰かに何かを強く勧めることは、好きではないです。

ましてや、病気の治療方針ほど重要なことを無理強いしようなどとは、思ってもいないことです。

そう、自分では思っていたのですが、今から半年くらい前に彼女の乳がんの治療方針を話し合っていた時には、自分では気づかないまま、僕は彼女に自分の考え方を押し付けていたようでした。

僕はまず、考えられる範囲で、彼女が取れる治療方針の選択肢をあげました。

そして彼女に「よく考えて、この中から自分で治療方針を決めて」と言ったつもりでした。

ただそれだけのことをしたつもりでしたが、彼女から見ると、僕が自分の考えた治療方針を強く勧めているように見えたのです。

 

なぜこんなことになったのか、今考えると意外と簡単に説明できます。

ですが、当時は本当に必死でした。

まったく話し合いが出来なかったので、本気で彼女と別れようと何度も思いました。(「突然ですが、彼女と別れるかもしれなくなりました・・」「彼女と別れるかもしれません2」)

なぜ、乳がんの治療方針について、彼女と建設的な話し合いをすることが難しかったかというと、乳がんの治療は確率的にしか結果が分からないことだからです。

確率的にしか治療結果が分からないということは、どんなに万全に治療をしたとしても、乳がんの再発する可能性はゼロにはなりませんし、逆に完全に無治療だったとしても、早期の乳がんであれば、かなり高い確率で再発はしないということです。

どちらを取ったとしても、「裏目」が存在してしまうのです。

そして、彼女と僕では、決定的にその「裏目」に対する考え方が違いました。

 

僕の考え方では、乳がんの治療に対する姿勢はこうなります。

「どんなに万全を期しても、乳がんの治療は裏目に出てしまう可能性がある。だからこそ、全ての選択肢を一つひとつよく検討して、しっかりと考えて自分で治療法を選択すべきだ。」

僕の考え方では、仮に再発してしまった場合のことを想定すると、万全を尽くして治療をしたのに再発してしまったのならば、あきらめがつきます。

しかし、彼女はこの部分が真逆だったのです。

彼女は「もし再発した時のことを想像すると、タモキシフェンを飲んでいたのに再発してしまったのならば、我慢できないだろうと思う。もしタモキシフェンを飲まずに再発したのならば、まだあきらめはつく。」と言っていました。

 

僕は彼女に、ホルモン療法や抗がん剤治療、放射線治療をした場合のそれぞれの予想される効果と副作用を細かく説明して、「とにかく自分で良く考えてくれ」と言いました。

そのこと自体は問題なかったように思います。

ただ、彼女はそれぞれの治療法に対して、よく考えるのではなく、初めから持っているその治療に対するイメージで、その治療をやるかやらないかを決めているように僕には見えました。

僕はその様子をみて「もっとよく考えて、自分が後悔しない答えを出してくれ」と注文を付けたのです。

その注文が彼女には負担になっていたようでした。今になって思い返すとそう感じます。

 

僕は「よく考えた方が、少しでも良い選択になり得る」→「後悔しない」という図式が頭の中にあったのです。

ですが、さきほど書いた彼女にとっての「裏目」の定義が僕とは正反対だったため、「よく考えて答えを出す」→「それが裏目に出る」→「後悔の度合いが高くなる」という図式が彼女の頭の中にはあったようです。

辛いことがあった時に、それをどうやってあきらめるかは、その人次第です。

そのあきらめ方を人に強制はできません。

僕は姉が亡くなった直後に、彼女に「日にち薬」という言葉を言われて、反発した覚えがあります。

自分の心の整理をつけるのは自分です。そのやり方は自分に一番負担がかからないやり方にすべきです。

乳がんの治療で「どの治療法の選択肢を取れば、再発した時に一番後悔しないか」を基準にすることは、僕の考え方であって、彼女に同じように考えてもらうべきことではありませんでした。

 

お母さんの病理検査の結果が出れば、病院側から治療法の選択肢が提示されて、主治医と話し合い、術後の再発予防の治療法を決めることになります。

その時に、僕と彼女はお母さんにアドバイスをします。間違いなく、アドバイスはします。

僕と彼女がアドバイスする内容が、お母さんにとってありがたいものになるかどうかは、お母さんの心の整理はお母さん自身がするものだということを前提に、話し合いができるかどうかにかかっているのかもしれません。

 

 

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