薬の心理的な作用
タモキシフェンのことを検索していると、「安心するためにも飲んでいる」という書き込みをよく目にします。
確かに、薬は安心を得るために飲む部分も大きいのではないでしょうか。
僕も何かの薬を飲む時は、その薬の期待できる効果と被ってしまうかもしれい副作用を考えますが、最後には「取りあえず飲んでおけば安心」という理由がつく場合も多いです。
乳がんに対する薬ならば、飲むことで得る心理的な安心感は、その薬の役割の大きな部分を占めると思います。
僕は「間違い」の回のブログで書いたのですが、彼女にはとにかく乳がんの治療法選択において後悔して欲しくないのです。「人事を尽くして天命を待つ」ということをして欲しかったのです。とにかく、よく考えて答えを出して欲しかった。
しかしここでよくよく考えてみると、どうも「人事を尽くす」ということが「安心感を得る」ということになってしまっていたような気がしてきました。
そして、彼女はとてつもなく豪気な性格なので、安心感など欲していないことを思い出しました・・・
僕は彼女に安心して欲しかった。そして彼女は安心などいらなかった。
いや、いくら彼女でも、100%安心がいらない訳でも、100%乳がんの再発が恐くない訳でもないです。
ただ、その割合が一般的な女性の乳がんの患者よりも圧倒的に少ないのです。
そして、彼女にとって自身の女性的な魅力の価値は、一般的な同世代の女性よりも大きいのです。
彼女の心理的なメリット&デメリットを考えると
タモキシフェンを飲むことで得られる安心感<タモキシフェンでエストロゲンを抑えることによる精神的な不快感
となっていたようなのです。
一般的な女性の乳がんの患者ならば、やはりタモキシフェンで乳がんの再発の可能性を減らせる安心感は大きいはずです。なので、タモキシフェンを飲むことのメリットは、そもそもの薬効にプラスして心理的なメリットもあるわけです。
しかし、恐怖というものを知らない彼女にとっては、タモキシフェンを飲む心理的なメリットは小さい。むしろ女性ホルモンを抑えてしまうことによる(実際の身体的な副作用ではない)心理的なデメリットがとても大きい。
薬の効果が同じでも、その薬を飲むことで得る精神的なものがプラスなのか、逆にマイナスなのかは、とても重要です。まして、タモキシフェンは基本的に5年間もの長い間飲む薬なのです。そのプラスかマイナスかの違いは計り知れない違いです。
普通に考えるなら、タモキシフェンを飲まないことを選択して、そして乳がんが再発したならば、「どうして飲まなかったのだろう」と後悔します。(実際に飲んでみて体質に合わずに止めた場合などは別の話ですが)
しかし、彼女は逆だと言っていました。彼女は自分ならば、もし再発した場合を想像すると、タモキシフェンを飲んだのに再発したならば我慢できないだろう、と。飲まずに再発したならば、それは仕方ないと納得するだろう、と。
この彼女の発言を僕は今までまったく理解できなかったのですが、彼女がタモキシフェンを飲んだ時の心理的なメリットとデメリットを考えてみると、納得できるような気がしてきました。
彼女にとって、タモキシフェンを飲む心理的な効果は、普通の乳がん患者がタモキシフェンを飲む心理的な効果と真逆なのです。
普通ならばタモキシフェンの心理的な効果はプラスなのですが、彼女はマイナスなのです。
なので、タモキシフェンを飲んでいたにも関わらず再発した場合の心理的な影響も、彼女の場合は普通の乳がん患者の逆だったわけです。
と、僕が一人で納得しているだけなのかもしれませんが・・・
まあしかし、彼女がタモキシフェンを飲むか飲まないかを決めるために、今、僕はいろいろな情報を集めているわけです。
それならば、薬の情報を集めるのと同時に、彼女がタモキシフェンを飲みたくないと思っている理由も理解するべきなのかもしれません。
飲むか飲まないかを決めるのは、当たり前ですが彼女本人です。そして薬を飲むことには、心理的な作用もあるのです。
タモキシフェンは5年間も飲む薬なのです。本人にとっての薬の心理的な影響はとてつもなく重要です。
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ディスカッション
コメント一覧
こんばんは。
ブログを読んでいてひとつ気になったのですが、ホルモン療法の
①抗エストロゲン剤
②LH-RHアゴニスト製剤
を混同していませんか?
大まかにいうと
②は女性ホルモンの分泌を抑えるものですが、①は女性ホルモンとガン細胞が結合するのを邪魔するだけです。女性ホルモンの分泌を止めるものではありません。
(と、私は医者から聞きました)
タモキシフェンは①です。
ただ、飲んだ体感では、ホルモンのバランスが崩れるような気がします。
彼女さん、無治療でもよいのでは。
服薬自体がストレスになるのならば、飲まない方がいいと思います。
しかし、部分切除で浸潤があり、放射線もホルモン療法もしないのならば、定期検診の間隔を短くしてもらったほうがいいと思います。3か月に一度は超音波を撮るとか。万が一、局所再発しても、発見が早ければ、対処もできると思います。
あとは、食事療法かな、、、。
済陽高穂(わたよう・たかほ)先生の
「100日でがんに勝つジュース&スープ」
はなかなか興味深い本でした。
何百万も出して免疫療法するよりも、身体にいい物を食べる方が、実現性が高い気がします。
私はこの本を参考に、気が向けばスロージューサーでニンジンとリンゴのジュースを作っています。スロージューサーの手入れが大変なので、面倒なときはミキサーにしちゃいます。
手作りの野菜ジュースは、ガンの再発予防だけでなく、彼女さんが大切にしたい「女性としての魅力」にも効果があると思います。飲み始めてから、顔のシミが薄くなりました。
毎度毎度、おせっかいですみません。
同じステージ1の乳がん患者として、少しでも彼女さんの、治療のヒントになれば、と思って書いています。
見ず知らずの通りすがりに、あれこれ言われて、彼女さんも不愉快かも知れません。
ご迷惑なら、もう書かないので、ブロックしてください。よろしくお願いします。
こんばんは。いつも親身に情報を提供して下さって本当にありがとうございます。迷惑なんてとんでもないです。
ホルモン療法についての理解は大丈夫です。何というか、彼女のホルモン療法に対するイメージというか思い込みが強く、その誤解を少しずつといていっているという状態です。①抗エストロゲン剤②LH-RHアゴニスト製剤、ですが、二つは作用機序は違いますが、現実的には同じ働きをするものと解釈しています。
なぜかと言うと、①はがん細胞のDNAとエストロゲンの結合を阻止するものですが、がん細胞以外の一般のDNAとエストロゲンの結合も阻止してしまうからです。体全身に影響が出てしまうことは、どちらも同じだと思います。
②の方がエストロゲンの生成を元から断ってしまう分、効果が強いという扱いなのではないでしょうか。万全を期すなら①+②ですね。
結局のところ、彼女の心の問題が大きいので、彼女に対する僕の提案が合理性に欠く場合が出てきてしまう場合があります。
その辺りは読んで下さる人を気にさせたり心配にさせてしまう部分ですが、ご容赦下さい。これから他にも無茶なことを言い出す可能性があります・・・
局所再発に関しては、僕も早期発見がキモだと思っています。いただいたアドバイスの通りにさせてもらおうと思います。
食事療法についても、いろいろ考えています。ですが、食事療法は長期戦だと覚悟しています。
勧めて頂いた本は一読させていただきます。
彼女がもしタモキシフェンを飲んでいる状態よも飲んでいない状態に少しでも危機感を感じて、そしてそれを少しでも食事療法で補おうとするならば、タモキシフェンを飲まないメリットがそこでも生まれることになりますよね。
初めまして。
乳がん患者の娘(33歳、独身)を持つ母親です。同居はしていません。
3月に乳がん(1センチ弱、転移なし、ステージ1)の切除手術をし、昨日、病理の説明があり、今後の治療は、放射線治療とホルモン療法を行うと言われたそうです。
娘には、結婚を前提におつきあいしている彼がいます。
ホルモン治療をすると、妊娠は5年間できないそうで、それで、とてもショックを受けています。また、ホルモン療法は、一時的に更年期障害状態にするこで、私自身がホットフラッシュがひどくて苦しんだ経験があるので、心配しています。
婚約者が、こんな状態だったらどんな正直心情になるのか
聞かせていただけないでしょうか?
コメントありがとうございます。
僕と彼女の例はかなり特殊な例なので、あまり参考にはならないと思います。
ですが、このブログを書いた経緯によって、女性が乳がんになった場合のその彼氏の心情については想像できることがいくつかあるので書いてみます。
まず、乳がんになったことは、おそらく彼よりも娘さんの方が重く受け止めます。これは当たり前のことかもしれません。
そして娘さんが乳がんになったこと自体によっては、彼の娘さんに対する想いはあまり変わらないと思います。
ですが、乳がんに対する二人の見かたや対し方が違うことによって、二人の想いが離れてしまう可能性があります。
もし彼が乳がんになったこを気にしていないと言った場合は、本当に気にしていないのです。「そう言ってくれているだけ」とは受け取らない方がいいです。
娘さんが弱気になって自分からお付き合いを断ってしまうか、自暴自棄にならない限り、二人の関係は続くと思います。
妊娠については、僕があまり適当なことを言わない方がいいのかと思いますが、一応知っていることを書きます。
確か、乳がんの手術をしたことと妊娠は関係がなかったと思います。
ホルモン療法をやっている最中は妊娠はできません。なので、ホルモン療法を終えてからか、ホルモン療法をあきらめるかのどちらかになると思います。
その中間で、例えば2年間だけホルモン療法をするという選択肢もあるかと思います。ホルモン療法で下げられる転移再発率との相談になります。
おそらく娘さんのような状況はよくあることと思いますので、経験の豊富な医師に聞けば多くの選択肢を提示してくれるはずです。
娘さんの乳がんは早期でかつ大人しいもののようなので、何とでもなるのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。
彼はoomuraさんと同じく年下ですが、娘ともども、理系で、乳がんとわかったときは冷静だったそうです。ただ、娘は35歳の姉が不妊で治療していることもあって、5年後、38歳まで、妊娠できないことにかなり、衝撃をうけているようでした。
仕事が忙しかったとはいえ、診察に同伴してやるべきだったととても後悔しています。それで、卵子凍結保存の話も聞けなかったようです。
2年だけホルモン療法をして出産後、また治療を再開する患者さんの例が紹介されていた情熱大陸を、一緒に見ていたので、本人も覚えていると思うのですが、いざ、自分がその立場になるとは思っていなかったのでしょう。
oomuraさんと同じく、年下なんですが、、彼が、それとなく支えてくれていること遠くから祈るしかありません。
ところで、手術は乳腺外科で行いましたが、ホルモン療法などは担当医は内科の先生に変わるのでしょうか?
手術後に担当医が変わることはまずないと思います。いろいろな理由で、どのような規模の病院でもおそらく担当医は変わりません。
一度、なるべく早く担当医に相談してみるべきです。その病院や医師が協力的でないならば、転院も考えるべきだと思います。
娘さんの乳がんはかなり早期なので、選択肢はいろいろあるはずです。
その選択を狭めて、自分達を守るような姿勢しか見せない病院や医師かどうかを、早めに見極めることが重要だと思います。
早期の乳がんはかなり厳格なガイドラインが作られていて、多くの病院はそれに厳密に沿うだけです。
標準治療以外には及び腰になる病院や医師は多く存在すると思います。
横入りで失礼致します。
妊娠、出産は乳癌に悪影響ではありません。私の主治医は寧ろ良いと言ってます。
妊娠・出産後にホルモン治療を始めれば良いですよ。
始めまして
妊娠、出産後にホルモン治療を始めるという情報は初めてです。
もし、よろしければ病院と主治医の先生のお名前を教えていただけないでしょうか
oomura 様
この場をお借りして申し訳御座いません。
ブオッチ様
妊娠出産授乳が再発のリスクを高めないというエビデンスがあります。
授乳自体、リスク低減である事は間違いがないので妊娠期の一時的なエストロゲン過剰状態のリスクを
出産授乳が打ち消すという考え方との事。
ただし、リスクは高めないけどホルモン療法をする事による、本来プラスに働くべきポイントが加算されない
可能性はあるそうです。
娘さんの腫瘍計が1cm未満のルミナールAとの事、かなりの低リスクだと思います。
現在ご結婚されていないようですので、ホルモン治療を開始しても2ヶ月休薬すれば妊活可能です。
出産後、ホルモン治療を再開されれば良いのではないでしょうか。
余談ですが、私も情熱大陸を見てましたが正直何言ってんだろ・・・と思ってしまいました。
私の主治医の所には、あの病院からの転院組が結構多いって事だったので納得でした。
コメントありがとうございます。
私も、娘には 最高の治療を受けさせたいと、腕と人間性から推薦するよとの友人からの情報で、がん系では、西日本最大級の病院で手術をしました。ただ、その先生は標準治療以外にあまり、関心がないように、思いました。最初の病院の先生が、妊娠との関係を教えてくれましたから。ここは考えどきかもしれませんね。独身の凍結卵子保存は難しそうですし、出産率も低そうなんでこれも、再検討の余地ありですね。
彼女が、治療を嫌う原因に、薬の副作用による不快感に対する懸念はないのでしょうか?
妊娠できないことは問題ないのですか?
私は人前で働く仕事なので、ほぼ40分ごとに大量の汗が噴き出るホットフラッシュは本当に辛かったですが。
がんの拠点病院が標準治療を遵守しようとするのは、どこも同じのようですね。
乳がんの治療と妊娠の関係について、あまり彼女と深く話し合ってはいません。
それ以前の話があまりできていない状態なので・・・
結局のところ確率的なリスクの問題になるんだと思います。
そういったリスクを大病院やがん拠点病院は取りたくないのかもしれません。
情熱大陸は僕も見ていたのですが、「臨床実験」と言っていましたし。
こんにちは。はじめまして。
標準治療はこれまでの乳がん患者の命のデータにより作られてきたものだと思います。
それは乳がん治療に対していまだ完璧なものでないことは確かですが、患者にとって最良の治療を提示するものだと思っています。
それに反する治療を選ぶということがどういうことか、確率云々だけでなく考えられたほうがいいのでは。初期治療の重要性も。
乳がんの治療は後戻りできないのですから。
はじめまして。書き込みありがとうございます。
のんさんのコメントが僕の彼女へのものなのか、ブオッチさんへのものなのか分からないのですが、返信させていただきます。
おっしゃる通りだと思います。僕は、標準治療を外れることは、自分の余命を削ることだと思っています。
ただ、彼女にはそのことを遠回しにも直接的にも何度も告げています。
それを承知で彼女が標準治療外のことをしたいと言った場合に、僕にそれを止める権利があるかどうかは難しいところだと思います。
ブオッチさんの娘さんのことも同じだと思います。ブオッチさんの場合は削る余命はかなり少ないかもしれませんが、タモキシフェンを飲まなければ
確率的に余命を削ることは間違いないです。そして出産をするということは、その分の重さがあるということだと思います。
わたしのコメントはoomuraさん宛てに書いたものです。わかりづらくてごめんなさい。
わたしは30代で親友を乳がんで亡くしました。手術後わたしの親友は非標準治療をえらびました。
当時わたしはまったく知識なくその話を聞いてました。今振り返れば、親友のため調べて止めればよかったと後悔があります。
わたしも今乳がん患者です。標準治療はこの親友の命のデータも含まれているわけなので、とても尊重しているのです。
oomuraさんに止める権利があるとは思いませんが、oomuraさんが最も親身に命の選択を伝えられる人だと思います。
(わたしはタモキシフェンと同類のフェアストンを服用して3年をすぎましたが、ホットフラッシュなど副作用はないですよ。)
心配していただいてありがとうございます。
のんさんの書き込みを彼女に読んでもらうことにします。
彼女にとってはタモキシフェンを飲まないことが非標準治療になります。
タモキシフェンについてはいろいろ考えていて、いずれブログでまとめようと思っています。
これからの彼女の人生に一番多く関わるのは、間違いなく僕です。今僕の家族は年老いた両親だけです。
もしかすると、彼女の命の重みは彼女自身より僕の方が感じているかもしれないと思っています。