前回のブログで、僕は「タモキシフェンを飲みたくないのならば、むしろ、まずは取りあえずタモキシフェンを飲んでみろ」と無茶な結論を出しました。

どうも僕は抽象的な無理気味の結論を出す癖があるのですが、今回タモキシフェンの場合は具体的かつ現実的に考えたつもりです。

 

例えば、どうしても好きになれない人がいて、その人とトラブルになり、金輪際その人と縁を切ろうと考えたとします。知り合いのすべてと深くお付き合いすることはできないので、疎遠になってしまう人が出ても仕方のないことだと思います。

ただ、その人とともう関わらないと決めた後で、もう一度だけその人と会って話してみることは、意外と意義のあることだと僕は思います。

そこで「やはりこの人とは相性が合わない」と感じたのならば、それを確認できた意義は大きいと思います。逆に、「いつでもこの人と縁を切ってもいい」と考えながら気軽に会ったのならば、意外とそこまで嫌に感じない可能性もあります。

どちらに転んでも、損にはならないような気がします。

 

少し強引ですが、タモキシフェンについても同じことが言えると思います。

彼女がタモキシフェンを飲みたくないのならば、むしろまずは飲んでみるべきだと思います。「いつでも止められる」と気軽な気持ちで飲んでみるべきです。

そして、ある程度飲み続けてみて、それでどうしても嫌になったら止めればいいのです。止める原因がどんな理由であっても、しっかりとそれを見定めることが重要だと思います。

その方が後から後悔することがなくなると、僕は思うのです・・・もしかしたら、そこは彼女にとってはそうではないのかもしれませんが・・・

 

そもそも、標準治療内の話でも、タモキシフェン服用中に副作用が強かった場合は服用中止を検討します。どんな薬でも、これは当然のことです。

ただ普通ならば、強い副作用が出て、その副作用で被る患者のデメリットが、その薬から患者が得るメリットを上回ってしまったら、服用を中止します。

タモキシフェンの場合、10%の単位で乳がんの再発率を下げることもあるので(厳密にはそういうことではないらしいのですが)、患者が得るメリットがとても大きいです。なので、多くの人は重篤な副作用が出ないとタモキシフェンの服用は止めません。

 

しかし、僕の彼女の場合は、最初からタモキシフェンを飲まないと言っているのです。それならば、タモキシフェンの服用中止の基準を大きく下げて(例えば少しでも彼女が自分の体の変化に対して不満を持ったら中止、など)、そして気軽にタモキシフェンを飲み始めてみた方がいいと思います。

副作用がまったく出ない可能性もあるのですから。

 

このような彼女の乳がんに対する態度と、それをサポートしようとしている僕の態度は、標準治療をしっかりと受けている乳がんの患者さんから見ると、不真面目に見えるかもしれません。

このようなことをブログに書き、申し訳ないと思っています。

ただ、僕が彼女に勧めようとしている「タモキシフェンを気軽に始めて、気軽に止めてもいい」という方針は、おそらく、彼女以外の一般的な乳がんの患者さんにも当てはまる可能性があります。

すぐに思いつくのは、例えば非浸潤の場合の乳がんや、浸潤径が5mm程度などの最初期の乳がんの場合です。

そういう場合は、標準治療でも「ルミナールタイプではあるがタモキシフェンは不要」となる場合があります。「不要」と完全に結論が出ればいいのですが、微妙なところになってしまう場合も多々あると思います。

その場合は、まずは服用してみて、その人にとってのタモキシフェンの副作用の大きさを実際に測ってみて、そして服用を続けるか中止するかを検討するのが良いのではないでしょうか。

タモキシフェンのようなホルモンのバランスを変える薬ならば、副作用の出方は個人によって千差万別になるはずです。ホルモンのバランスというもの自体が、人によって大きく違い、人間の多様性のもとになっているものだからです。

 

 

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