彼女のお母さんの乳がんについて医師から受けた説明は、全体として「可能ならば温存手術をした方がいい」という感じがありました。

乳房再建についての説明も受けましたが、それを勧めているようには僕には聞こえませんでした。

このような話になると、患者や患者の家族の主観的な気持ちが強く関係してきて、もしかすると医師はそんな風に説明しているつもりはないのかもしれません。

 

乳がんの治療をする場合は、標準治療ならば基本的に手術をします。そして、全摘、温存(部分切除)、全摘+再建のうちのどれかの術式を患者の希望によって決めます。

術式に限らず、全ての乳がんの治療方法は基本的に患者の意思で決めるものです。

医師は患者の乳がんの状態をみて、どの術式でどの治療方法を選択するかを患者にアドバイスします。患者よりも乳がんについて知識の豊富な医師が、より適切な治療方法を患者に示すわけです。

しかし、困ったもので、乳がんの治療方法には絶対的な正解はないです。どの治療方法にも効果が期待される確率があるだけです。その上、それぞれの副作用も少なくないです。

また、乳がんの治療は美容的なことを含みます。

なので、乳がんの治療では他の一般的な病気と違い、医師が治療法を決定するというより、医師が患者の希望に沿って治療法を提案することになります。

 

こういった訳で、彼女のお母さんの乳がんの治療について、担当の医師は慎重に言葉を選らんだ上で、温存手術を勧めてに僕には聞こえたわけです。

どちらを勧める、というはっきりとした言葉は医師は使いませんでした。

ですが、全体の印象としては、医師は温存手術を勧めていたようです。

 

では、なぜ僕がそう感じたかと言うと、それぞれの手術や治療法を説明するたびに、お母さんが高齢であることを気にしていてくれたことがあります。

そして治療全体としては、温存手術をした方が治療の量が少なくなるという感じの説明でした。(お母さんは全摘手術をする場合は再建を希望していたので、温存と全摘+再建の手術を比べた場合の話です。)

温存手術の場合は、通常25~30回くらいの放射線照射のために病院に通います。

それは高齢者には負担になるのではないか?と尋ねたところ、医師ははっきりとは言いませんでしたが、治療自体の負担と通院の負担は別に考えるべきだという感じでした。

また、がんの取り残しがなければ、高齢者の温存手術では放射線の照射を省略する場合もあるという説明も受けました。

 

彼女のお母さんは穿刺吸引細胞診(一番細い針の生検)で乳がんの診断を受けて手術が決まったので、乳がんのタイプなどはまだ分かっていません。

なので、術後にどのような治療をするかは、まだ何も言えない状態です。そういう説明は受けませんでした。

つまり、手術の術式に関しての体への負担を考慮して、医師はお母さんに温存手術を勧めていました。

医師はお母さんの美容的な希望も丁寧に聞いてくれていましたが、そう言った希望もクリアーできるとふんで温存手術を勧めてくれていたはずです。(この辺りは僕の主観です。もしかすると、そういうことではないのかもしれません。心配です。)

しかし、医師の説明から温存手術と全摘手術の局所再発率の違いの説明は受けませんでした。

なので、乳房内再発した場合の説明も特別に受けていません。

この事実だけを取ると、少し医師の説明不足だと思えます。

ですが、おそらく説明はしていないだけで、この医師は局所再発も含む高齢者の温存手術のリスクと全摘手術+再建のリスクをトータルで比べているのではないかと思います。

 

一般的な乳がんになりやすい年齢(30代後半から50代前半)の患者と高齢の患者を比べた場合、乳がんの状態が全く同じだ仮定すると、おそらく医師は高齢の患者には若い患者と同じだけの量の治療は勧めないでしょう。

医師は乳がんの状態(ステージ、タイプ、悪性度など)が同じであるならば、若い乳がん患者の方が、多く(強い)治療を勧めるかもしれません。

相対的に、若い患者の方が副作用に対して強く耐えられるでしょうし、高齢者の方が大人しい乳がんの場合が多いことがあります。

失礼な言い方ですが、乳がんを完治させることは、残されている人生が長い若い人の方が受ける恩恵が大きいです。

がんの治療には絶対的な正解がなく、効果と副作用のバランスで治療法を決めるしかないので、相対的に考えると、どうしても高齢者の乳がんの治療は少なく(弱く)なります。

これは、おそらく乳がんに限らず、他のがんにも言えることです。

「歳を取っている方ががんの進行が遅い」というのは、実は一概には言えないことらしいのですが、そのことを抜きにしても、高齢者のがんに対する治療は、若い患者に比べると相対的に少なくなることが一般的のようです。

 

 

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前回のブログで、彼女のお母さんの乳がんの治療は温存手術をする方向になったことを報告させてもらいました。

医師や看護師の説明を聞いて、お母さんの乳がんについて新しく分かったことがいくつもありました。

また、高齢者の乳がんについての一般的な話についても分かったことがあるので、少しずつ書いて行こうと思います。

 

まず、僕が気になっていた、手術の前に針生検をせずに細胞診のみで乳がんの確定診断としたことについて説明を受けました。

細胞診の結果については「陽性」となっていただけでクラスの表記はないようでした。そういう細胞診なのでしょう。

いずれにせよ、やはり画像と合わせての診断で信頼性が上がっているような話でした。

医師の説明は全体的に感じが良く丁寧なものだったのですが、正直に言うと細胞診の説明についてだけは少し中途半端な印象を受けました。

「擬陽性」についての説明もいまいちでしたし。

「うちの病院はこれでやってます。他の病院のことは知りません。」的な感じの話ぶりでした。

細胞診や組織診の信頼性などの話は、病理医の領分なのでしょうか。

彼女が自分の乳がんの時の話を聞かれて「私は最初に針生検でした」というと「それは〇〇大学病院さんが(画像診断の)自身がなかったのでしょう」という答えでした・・

まあ、確かに彼女の乳がんの場合は、医師から「がんかどうかは半々くらい」という説明がありました。

つまり、話を総合すると、画像での診断で非常に強く乳がんを疑われる場合は針生検をせずに細胞診にとどめる、という手法があるということみたいです。

 

上記の話をしている最中に、お母さんが午前中に撮影した造影剤を使ったMRIの写真が診察室のパソコンに送られてきました。

これを見て、医師は「お伝えしていたように、腫瘍が2つあります。そしてその二つの間に、さらに小さい腫瘍のようなものがいくつか見えます。これは乳管に沿ってできているようです。」という説明になりました。

こちらとしては、衝撃の強い結果でした。

ですが、この後にすぐ「これならば、温存手術ができるかもしれません。」という言葉が出て、前回のブログのような感じになった次第です。

お母さんの乳房が大きい方だということと、腫瘍の場所が乳房の上の方だったことが、温存手術の条件にあっていたようです。

 

前回のブログで書いたように、僕はお母さんの少し悲しそうな顔を見ていて、具体的な説明の一つひとつはあまり気にならなかったです。

ですが、よくよく思い出してみると、一つはっきりと気になったことがありました。

それはお母さんの気持ちの問題に関わる内容です。

医師と看護師の説明では「温存手術をできるのならば、温存手術をした方がいい」という感じが随所にありました。

強制するような言い方はできないので、お勧めするような言い方です。(お勧めするともはっきりは言えませんが。)

ただ、医師が温存手術を勧めている理由を注意深く考えると、「高齢者だから」ということは間違いないようでした。

温存手術での手術後の乳房の形は、医師には保証することはできません。ましてや、今回の場合、この医師が手術をするわけではないのです。

僕は確認のために診察の最後に「温存と全摘+再建を比べた場合、温存の方が治療全体での体への負担は少ない、と思っていいのでしょうか?」と聞きました。

そうしたところ、医師は感情を込めた語気で「ええ、それはそうです。」と答えて、「(だからお母さんに温存手術をした方がいいよと言ってあげて下さい)」と言っているように感じました。

(温存手術ならば一般的に術後は放射線をかけます。これは通常25日間も病院に通うという、高齢者には大変なものです。ただ、この病院では高齢者でかつ手術の結果に断端陰性の場合は放射線は省略するという説明を受けました。)

 

お母さんは美容の意識がとても高い人で、手術後の乳房の形はかなり気にしています。

なので、医師が高齢者の体への負担を考えてお母さんへ温存手術を勧めることと、お母さんの希望が少しズレているように感じました。

僕もお母さんの乳がんの話を聞いた当初は、お母さんには温存手術を勧めるべきだと思っていました。

それにはいくつも理由がありますが、お母さんの美容意識も込みで、温存手術の方がいいのではないかと思っていました。

ただ、今回の検査の結果によって、お母さんの乳がんは乳管内の進展があることが分かりました。

このような場合に温存手術をすると、手術後の乳房の形がどうなるのかは、当たり前ですが素人の僕に想像することは一切無理です。

この条件での手術が、お母さんの希望を満たしているのか少し心配です。

 

幸いなことに、この病院では過去の温存手術の結果の写真を多く保存してあり、それをお母さんに見せてもらえました。

その中には、お母さんのような乳管内進展があった例も含まれていたようです。

医師の診察が終わった後に、たっぷりと時間をとって別室で看護師さんがその写真を見せながら丁寧に説明してくれました。

とても親切な看護師さんの多い病院でした。看護師さんが一人の患者にかかり切りになってしまっても、問題の起きない体制だということです。

乳がんの治療は他の病気に比べて患者の心のケアが重要だと思います。

その意味でも、とてもいい病院でお母さんが手術してもらえることは嬉しい限りです。

 

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彼女の地元に行って、お母さんの診察に付き合ってきました。

結論から書くと、お母さんは温存手術をすることになりそうです。

一応まだ手術方法を考えている最中で、一週間以内に決めて病院に連絡する予定になっています。

診察でMRIの結果を医師が見て、説明と共に温存手術が可能だと告げられました。

前回までのブログで書かせてもらったように、お母さんの乳房のしこりは2か所あります。

それでも、乳腺にそって紐状に切除することで、なんとか温存手術が可能らしいです。

 

医師を始めてとして、看護師の人も温存手術ができるという説明を患者の(お母さんの)喜ばしいこととして話している感じでした。

そして、娘であり乳がん患者としては先輩の彼女も、お母さんが温存手術が可能だという説明を聞いて喜んでいるようでした。彼女のお父さんも、あまり話が分かっていない様子ながらも安心をしている様子でした。

診察室の中が喜ばしい雰囲気になっている中、当人のお母さんは浮かない顔をしているように、僕には見えました。

 

この時、僕は頭の中でいろいろと考えていました。気になることが多かったです。

 

一番気になったのは、MRIの結果を見て温存手術が可能だとおっしゃっているこの先生に聞いたところ、手術をする先生は別だと言っていたことです。

MRIはこの日の午前中に撮影されていて、この診察の最中に結果がパソコンに転送されてきました。つまり、この医師が初めて見たことになります。

温存手術というのは、医師の腕に頼る部分が大きいです。

温存手術で局所再発を防ぐためには、実際のがんのしこりよりもマージンを取って大きく切除する必要があります。

ですが、大きく切除し過ぎると、今度は術後の乳房の形が悪くなってしまい、乳房をせっかく残す意味が低くなってしまいます。

乳がんの温存手術では「取り残しがない範囲でなるべく小さく切除する」という非常に繊細なことが要求されます。

僕は、実際に自分で手術をする医師の所見で、温存手術が可能かどうか判断すべきなんじゃないかなと、この時思っていました。

 

ただ、その時に僕はそう思ってはいましたが、それ程強い疑問としてそれを思っていたわけではないです。

「まあ、がんセンターの乳腺科の医師なのだから、経験が豊富で、こういう例をたくさん見ているのだろうな」と思い浮かべながら、なんとなくその場にいました。

 

温存手術について、良いことも多いですが、注意しなければいけないこともたくさんあります。

次々に医師と看護師から温存手術について説明されたのですが、それらを聞いていて、僕は少しずつお母さんが可哀そうな気持ちになってきました。

僕がそういう気持ちになったのは、おそらくお母さんがそう感じているのが僕に移ったんだと思います。

 

もしお母さんが事前に乳がんのことをいろいろ調べて知識を得ていて、そして温存手術を望んでいたのであれば、温存手術が可能だという結果を知った時に喜べたのかも知れません。

ですが、お母さんには、それはあまりないようでした。

 

乳がんの手術をしたい人なんていないと思います。自分が乳がんであるという事実を受け入れたくない患者だっていくらでもいるはずです。

まだ、自分の乳がんに対して完全に受け入れる体制ができてない彼女のお母さんにとって、手術の方法を自分で考えて決めることは辛いことなのかもしれません。

 

今更ですが、これが普通で当たり前なのだと感じました。自分の病気をしっかりと把握して、前向きかつ精力的に治療できる患者などは、ごく一部です。

多くの患者さんは、治療などはしたくないと心の奥では思っていても、しないとだめだから嫌々治療をするものでした。

がんのような大病ならば、なおさらそうなるのではないでしょうか。

 

僕の彼女の感性があまりに一般的な女性と違っているので、この当たり前のことを少し忘れていたような気がします。

「治療しないともっと悪くなってしまう」と言われた場合、多くの患者さんは悲しい気持ちになりますよね。

それは、頭では治療しなければならないと理解していても、気持ち的には治療などしたくないということがあって、葛藤が生まれているからです。

ですが、僕の彼女の場合は「治療しないと、もっと悪くなってしまう」と言われても、「それでも、やりたくない治療はやらない」「私は他の人と違うので、悪くならない」と本気で言う人です。

口で言ってるだけではなくて、本気でそう思っているのです。凄まじい胆力です。多分お父さんに似たんだと思います・・・

彼女のお母さんも彼女と同じように強気なところが多いのですが、本質的な部分では一般的な女性の感性に近い人のようです。

正直に言うと、お母さんが温存手術が可能だと聞いて彼女がとても喜んでいるのに、本人のお母さんが余り喜んでいない様子を見て、僕は彼女に対してもう少しお母さんの気持ちに寄り添ってあげられたらいいのになあ・・と思ってしまいました。

彼女自身が自分で温存手術を受けていて、良い結果を出せているので、これは仕方のないことなのかも知れませんけれど。

 

お母さんの乳がんの状態に関する具体的なことは、次回以降のこのブログで書かせてもらうことにします。

お母さんがお世話になっている某がんセンターの医師や看護師の様子や、センター全体の雰囲気などのも、いずれ詳しく書くことにします。とても良い感じでした。

あそこならば、お母さんの治療は安心できると思います。

 

しかし、診察室の中でお父さんの携帯電話が鳴りだした時にはドキっとしましたが、その電話をとって普通に話し出したお父さんにも驚かされました。

彼女の胆力は間違いなくお父さんから受け継いでいるようです。

 

 

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