彼女が術後のホルモン療法としてタモキシフェンの服用を開始してから1ヶ月が経ちました。

彼女の病院では、タモキシフェン服用開始から1ヶ月目には血液検査をすることが決まっています。

その血液検査を受けてきました。結果としては、特に問題はありませんでした。

まあ、問題がないと言っても、糖尿関係の数値に以前から少し問題があって、その数値は少し問題があるラインをキープしていたのですが・・・

 

血液検査の結果は随分多くの項目の数値が出ていました。

これは、女性にとってエストロゲンというホルモン物質は、体のあらゆる機能に影響を与えるものだということの裏返しだと思います。

タモキシフェンがエストロゲンとそのレセプターが結合することをある程度ブロックしたところで、何か新たな反応が体に起こるわけではないです。

新しい何かは起こらないのですが、今までの体の中で起こっていた反応の程度(バランス)が変わるのです。

そうすると、例えば「今まで~~くらい運動したら汗が出てきた」の「~~くらい」の程度が変わったり、「今まで頭痛が起こっても、~~くらいで治っていた」の「~~くらい」が変わることになります。

それぞれの起こった時の強さも変わる可能性があります。

何をしたらどうなる、という因果関係はまったく変わらなくても、その程度や頻度が変わってしまう可能性があるのです。

 

ですが、このような感じで起こってくるであろうタモキシフェンの副作用は、少なくても2ヶ月くらいは安定しないはずです。

そのことは主治医も言っていました。

そして、場合によっては、その安定しないことは有難い方向に変わって行くこともあるようです。

要するにタモキシフェンを飲み続けて行くと、いずれ副作用もなくなったり緩和したりするかも知れないらしいです。

こういったことは、ネット上から得られる知識からある程度予想していて、そして今回主治医の口からも聞くことができたので、取りあえずは安心できたのですが・・・

この主治医の説明は、患者を安心させるためにそういうことを言ったのではなく、「タモキシフェンの服用による体の変調は、乳腺科医である私が対処するところではない」という意味でした・・・

 

これまで、このブログでは繰り返し主治医の悪口を書かせてもらってきました。そしてその延長として、大病院やがん専門病院では、医師がそういう態度になりがちになってしまうのでは?と書いてきました。

ですが、考えを訂正させてもらいます。

この主治医がこういう人間だっただけです。

間違いないです。

彼女が不眠を訴えると「睡眠導入剤を出すが、その量の調整は自分の家の近くの医院にやってもらえ」といい、彼女が糖尿の数値のことを聞こうとすると華麗にスルーし、僕が質問をすると、嫌そうな顔をして(と彼女が言ってました)僕の目を見ずに返すのです。

何と言うか、こちらになるべく質問をさせないように説明を進めようとするのです。

そういう意味で、「今、タモキシフェンの服用開始直後だから細かい副作用が出るかもしれないけれど、いずれ無くなりますよ」と言って来たのです・・・

 

まあ、それが事実なら、それでいいことにしましょう。

術後の定期検査との兼ね合いを考えながら、転院を考えてみます。

この病院の規定だと6カ月でエコーの検査だけはやるはずなのですが、それも主治医は華麗にスルーしました・・・

なんなんだろうか・・・

診察の時は「あれ?僕の勘違いかな?」と思って突っ込めませんでしたが、帰って確認すると、やはり低リスクの患者でも6ヶ月後にエコー検査が規定でした。

以前にこの医師が「あなたが放射線治療を拒否するのは勝手ですが、だからと言って術後に他の患者よりも定期検査の回数を増やしてくれと言われても、それは駄目です。」と言われたことが頭をよぎります。

定期検査の回数を増やすどころか減らされました。

 

まあ、主治医への愚痴はこの辺りにしておきます。

処方してもらった睡眠導入剤がどの程度効くかは分かりませんが、取りあえずは使わずとも持っているだけで、彼女の睡眠不足での仕事への影響の心配を減らせます。

頭痛についても、今のところ強いものは服用開始1週間目くらいに出たもの1回だけです。

もうタモキシフェンの血中濃度はかなり上がっているはずなので、このままの状態を維持してくれるだけで、彼女にはタモキシフェンの初期の重篤な副作用は起きないことになるはずです。

なんとか、そうなってくれると嬉しいところです。

このまま行けば、強い副作用が出て、飲み続けるか中止するかを検討することはないでしょう。

 

彼女の術後のホルモン療法は、順調だと言っていいと思います。

ですが、ここへ来て非常に心配なことが起きました。

彼女のお母さんに乳がんの疑いが認められました。

まだ画像での検査の段階ですが、医師の所見としては乳がんの疑いがとても高いらしいです。

右の乳房の脇寄りのところに、自分でしこりを発見したそうです。彼女が乳がんになったことから、自分も心配になって、自ら触ってみて見つけたらしいです。

まだ詳しいことは何も分かっていません。

 

僕としても、このブログを読んで下さっている人にしても、ある程度乳がんに知識がある人ならば、乳がんはステージや悪性度によって危険性がまったく違うという認識だと思います。

なので、彼女のお母さんの乳がんについては、今はまだ何も言えません。

ただ大雑把な傾向としては、高齢者の場合の方が大人しい乳がんの可能性は高いらしいです。

また、ホルモン感受性も高齢者の場合の方がある場合が多いという情報があります。

しこりが大きくても非浸潤の場合もありますし、今はまだ余計な心配はしない方がいい段階なのかもしれません。

 

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「術後補助療法」という言葉があります。がんに関する用語で、おそらくがん患者自身やその家族ならば、そのままの意味としてすぐに理解できる言葉だと思います。

「アジュバント療法」は術後補助療法とほぼ同じ意味で使われる言葉です。

乳がんでの術後補助療法は、手術後に行われる、化学療法=抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的治療(主にハーセプチン)などです。

乳がんについてあまり知識がない人ならば、乳がんの治療は手術をして終わりだと思っている人も多いはずです。

そういう人が聞いても「術後補助療法」という言葉は分かりやすいもののはずです。手術の後にする補助的な治療だろうと、すぐに推測できる語感です。

また、乳がんに関する論文などで、この言葉はよく使われるようです。純粋に「手術後にする治療」という意味の言葉が、乳がんに関する論文では多く出てくるはずで、それら全てを指す統一された単語が必要です。

論文は英語で書かれるので、そこで「アジュバント療法」が使われるようです。

 

ただ、この「術後補助療法」という言葉ですが、現在の日本の乳がんに携わる医療機関では、(僕が検索した限りでは)あまり積極的に使われていないようです。

手術後に行われる、化学療法、ホルモン療法などを総称する用語としては、「再発予防」と呼ばれたり、基本的に薬を使うことになるので「薬物治療」などと呼ばれたりします。局所再発予防としっかり区別するために「転移再発予防」と呼ばれる場合もあります。

その場合は「手術後にやる」という意味が抜けてしまうことになるので、「術後補助療法」という言葉の意味をそのままは表せません。しかし、多少意味が変わってしまっても、あえてそう呼ぶ医療機関が多いようです。

彼女が手術を受けた病院でも「術後補助療法」という言葉は使われませんでした。「再発予防」か、もしくはただ「治療」と呼ばれました。

 

「術後補助療法」という言葉は、手術後に行われる化学療法やホルモン療法などを総称するには、語感的に非常に適切な言葉です。なのに、なぜあまり使われないのかは、僕の考えでは明白です。

「術後補助療法」はまったく「補助」ではないからです。むしろ乳がん治療の根幹部分です。

このことを患者に勘違いさせないために、「術後補助療法」という言葉は、患者に対する説明などで積極的には使われないのではないでしょうか。

 

小林麻央さんの乳がん治療歴について2」の回のブログで書いたことなのですが、例え先進の技術を使ってメスを使わずに乳房内のがん細胞を全て焼き切ったとしても、それだけでは全身に対する治療はまったくしていない状態で、無治療と言えます。

乳がんの治療は転移を阻止するための治療です。(転移が発見されたあとも、それ以上の転移を阻止する治療が大きな部分を占めます。)

乳房内に発見したがん細胞を取り除くことは、乳がん治療全体から見れば、一部分に過ぎません。

むしろ、乳房内から取り出したがん細胞を分析した病理結果から導き出される、最適な全身に対する治療が(それが「術後補助療法」と呼ばれるもの)、乳がん治療で一番重要な部分です。

極論すると、乳がんで手術をするのは、病理検査を正確にするためなのです。まあ、これは極論ですが・・・

ですが、乳房内に取り残したがん細胞が再び増える「局所再発」は転移することとは違い、命の危険には直接関係がないことからも、乳房(局所)の治療よりも、全身の治療の方が重要だと思えます。

 

しかし、乳房(局所)の治療よりも、全身の治療の方が重要だとなると、問題が起きます。

このブログでは何度も書かせてもらっていることなのですが、乳がんは手術が終わった段階で、もしかしたら微細な転移が既にあるかも知れないし、まったく転移はないかも知れないのです。(「彼女はすでに転移しているかもしれない」)

現在の検査の技術ではごく小さい転移巣は発見できないです。

手術時に微細な転移がまったくない場合は、乳房のがん細胞を取ればそこで治療は終了のはずです。それい以上に何か副作用のある薬を使うことは、患者にとって害にしかなりません。

手術時に(今の技術では発見できないくらいの)微細な転移が体のどこかにあった場合は、その段階で(転移巣が小さいその段階で)、全身に対する治療を十分に施したいはずです。

その二つの判別が、今の技術ではできない。なので、手術時点のステージや病理検査の結果、年齢や家族歴などの総合的なデータから転移している可能性を確率的に推測し、その確率に合わせて「術後補助療法」=再発予防=薬物治療のするしないと強弱を決めるのです。

 

微細転移がある可能性の高い患者が「術後補助療法」に対して「『補助』的な治療ならば、もういい。手術でがん細胞を取ったのだからもう十分でしょう。」と思ってしまうことは非常にまずいはずです。

大きな勘違いです。実際のところは分かりませんが、小林麻央さんのように標準治療を拒否して民間療法に頼ってしまう乳がん患者は、この勘違いをしている可能性があります。

なので、こういった患者に「術後補助療法」という言葉を使って説明することは好ましくないです。

逆に、微細転移がある可能性の低い患者に対しては、本当に「補助」的な治療になるわけですから、「術後補助療法」と呼びたいわけです。ですが、患者の乳がんの状態に合わせて、それらの治療を指す言葉を変える訳にもいかないです。

なので、「術後補助療法」という言葉は、微細転移がある可能性の低い患者に対しても使えないことになります。

 

医師は勘違いなどしないので、学会などで「術後補助療法」と呼んでもまったく問題ないのでしょう。

「術後補助療法」という言葉と同じ意味で、それに代わって患者に誤解を与えない適切な言葉が存在しないことが、現在の乳がん治療の微妙な部分を表していると思います。

 

 

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彼女はホルモン療法をタモキシフェン単独で始めました。

LH-RHアゴニスト製剤についても医師から勧められましたが、止めておきました。

ルミナール型乳がんでのLH-RHアゴニストの使用は、同型乳がんでの抗がん剤使用のように、医師間によって意見の分かれるところのようです。

(LH-RHアゴニスト製剤とは、商品名リュープリンやゾラデックスで知られている、視床下部から出るホルモン(LH-RH)に介入して、卵巣機能を制限する薬です。タモキシフェンのような抗エストロゲン剤とは作用機序が異なりますが、最終的にはエストロゲンが乳がんの細胞と結合することを防ぐ意味では同じ効果です。なので、どちらもホルモン療法としてのくくりになります。ホルモン療法はエストロゲン受容体陽性の乳がん(ルミナールタイプ)にしか行われません。)

 

抗がん剤についてもLH-RHアゴニストについても、ルミナール型乳がんで使う場合は限定されています。

抗がん剤については、前回のブログで書いたように、ki67の高いルミナールBと分類されるルミナール型乳がんに使われます。

LH-RHアゴニストについては、まず35歳以下の場合と、抗がん剤で一時閉経状態になってそれが回復した場合に、処方されるとなっています。

どちらも限定された場合で、これらの場合はしっかりとしたエビデンスがあるようです。

そして、これらの限定的な条件以外の場合だと、抗がん剤もLH-RHアゴニストも、大規模な臨床実験などの信頼できるエビデンスがない(?)ようなのです。

 

原理的には、LH-RHアゴニストを使えば血中のエストロゲンは確実に減るので、エストロゲンが原因のルミナール型乳がんには効果がありそうに思えます。

ですが、タモキシフェンですでに十分エストロゲンが阻害されていて、それ以上やる必要のない状態なのかもしれないのです。(通常、LH-RHアゴニストを使う場合にはタモキシフェンにプラスして使います。LH-RHアゴニストをタモキシフェンの代わりに使うようなことはしないようです。)

それ以上やると副作用のみを被ってしまう状態になってしまうかもしれません。

日本乳癌学会のガイドラインにも、二つの限定的な状態以外のLH-RHアゴニストの使い方で推奨されるものはありません。

 

ただ、実際にはルミナールタイプの乳がんの中で、ステージⅡ以上でかつある程度リスクがある場合には、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤に上乗せする形でLH-RHアゴニストは処方されているようです。(そして、それを推奨する記述が海外の関係機関から出ていたはずです。すみません、これについては忘れました。)

原理的にはタモキシフェンの効果を高めることは間違いない、ということで処方されるのでしょうか。しかし、エビデンスがない以上、効果と副作用のバランスは不明になってしまいます。なので、リスクが高い場合のみに使うということが合理的だと思われます。

 

話をまとめると、ルミナールタイプの乳がんの場合、抗がん剤とLH-RHアゴニストはまず特定の場合に必ず使います。抗がん剤はki67が(かなり)高い場合、LH-RHアゴニストは35歳以下の場合と抗がん剤を使った一時的な閉経が再開した場合です。

そして、それとは別にリスクが高いと判断された場合に、上の条件に当てはまらなくても、抗がん剤もLH-RHアゴニストも、医師によって処方される場合があります。

この「リスクが高い」ということに注意が必要だと思います。ここで医者の意見が分かれるのです。

「乳がんの治療で医者に頼れないこと」の回のブログで書いたことなのですが、乳がんのリスクが高いか低いか、その治療法の効果が高いか低いかというのは数字の問題であり、相対的な問題であって、最終的には主観的な問題です。

エビデンスが乏しい治療法をするかしないかなどは、まさに主観の問題です。

タモキシフェンはしっかりとしたエビデンスがあり、ルミナールタイプの乳がんの再発率を確実に下げます。だから医者は必ずやるべきだ、と強く勧めるべきです。

逆に、ルミナールタイプでの抗がん剤やLH-RHアゴニストの使用は特定の場合を除いては確実に効果があるとは言い切れないので、使うかどうかは患者の意思で決めるべきです。

 

その線引きをしっかりすべきはずなのですが、なかなか線引きが出来ていないのが現状のようです。

このブログで過去に書いていることなのですが、僕の彼女は抗がん剤もLH-RHアゴニストも、どちらも適用される条件には当てはまらなかったのに、医師は強く勧めてきました。

まあ、僕の彼女の場合は極端な例として例外扱いでいいと思うのですが、他の場合でも線引きがあいまいになって行く場合はあるようです。

例えば、ki67が高い場合にルミナールタイプの乳がんでも抗がん剤を使うのですが、その「高い」が医師によって違うのです。医師によって違うどころか、同じ医師でも、他のがんの悪性度などを考慮して、抗がん剤を使うki67の値のボーダーラインを上下させる場合もあります。(それ自体は悪いことではないはずですが曖昧にはなります。)

また、35歳以下で適用されるLH-RHアゴニストですが、40歳以下でも適用される場合があるようです。そして、医師によっては、41~42歳でも・・となっていうような書き込みも見ました。

 

患者本人が乳がんを心配してわずかにでも再発率を下げる治療を受けたいと希望する場合は、抗がん剤を使うki67のボーダーラインを下げたり、LH-RHアゴニストを使う年齢のボーダーラインを上げるようなことは必要だと思います。

ただ、そういう場合は患者の希望によって自己責任で治療をしていることははっきりさせるべきです。

効果があるかないか分からない治療法を医者が曖昧に勧めたり、そうとは知らずに患者が治療を受けることはあってはならないと思います。

ルミナールタイプの乳がんで抗がん剤治療とLH-RHアゴニスト製剤を使う場合は、こういった注意が必要です。

 

(前回と今回のブログも含め、僕が書いているブログの内容はすべて転移再発を防ぐ手術後の治療の話になっています。転移が見つかってからの治療法とは全て異なります。その説明をせずに毎回ブログを書かせてもらっています。申し訳ありません。)

 

 

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