彼女と喧嘩をして、約二日間連絡を取らずにいました。その後に連絡を取ると「昨日すごく強い頭痛だった」と言われました。

かつてないくらい強い頭痛で、「夕飯を食べると吐いてしまうだろうと確信したから、食べずに寝た」と言っていました。

「過去にここまで強い頭痛に襲われたことはない」、とまで言っていました。

心から情けなく思いました・・・

こういうことが起こった時に何も力になれないのなら、なんのために、僕はいろいろ乳がんについて調べたり、彼女の診察について行ったりしているのでしょうか・・・

 

頭痛が彼女にとってのタモキシフェンの副作用になるかもしれないことは、以前から予想していました。

そう、彼女に言ったことも何回かあります。彼女は生理中に頭痛が出る傾向にありました。

そして、もともと生理の時に体の変調が大きい人に、タモキシフェンの副作用が出やすいという情報があったのです。(その逆に、生理が軽い人はタモキシフェンの副作用が出にくいようです。)

なので、彼女のタモキシフェンの副作用として頭痛を一番心配していたのです。

 

彼女がタモキシフェンを飲み始めた日から、彼女の頭痛は気にしていました。喧嘩をした日までは、頭痛は出ていなかったのですが・・・

彼女の頭痛は僕と喧嘩をしたせいなのでしょうか・・・

 

しかも、彼女は非常に強い頭痛だったにも関わらず、頭痛薬などを一切飲まなかったのです・・・飲み合わせが心配だったようです・・・

そういう人なんですよ、彼女は・・・

あれだけタモキシフェンの副作用が嫌だ何だと言っておきながら、いざ飲んで副作用が出たら耐える・・・

タモキシフェンとロキソニンやバファリンなどの頭痛薬の飲み合わせの問題はないです。

そのことは言ったと思っていたけれど、言ってなかったのか・・・

彼女には自力でそれをネットで調べて頭痛薬を飲んで欲しかった・・・

いや、飲み合わせが心配ならば、頭痛を感じた時点でタモキシフェンを一時中断して欲しかった。

そういうことを僕が事前に言っていなかったのが失敗だった。

「頭痛が出たら言ってね」と言っておいたので、その時になって僕がいろいろ言えばいいと思い、そこまで念を押して頭痛が出た時の対処方法を彼女に伝えていなかった・・・そして喧嘩をしていたから、彼女は僕に頭痛を知らせなかった・・・

その結果、あり得ないくらい強い頭痛が出て、それに何も対処せずにただ耐えるというあり得ない結果になりました・・・

 

彼女はタモキシフェンを服用する以前から、生理の時に頭痛がありました。なので頓服用として、ロキソニンを常に携帯しているはずです。

飲んでも大丈夫、飲んだ方がいい、と言えなかった。

一番大事な一言が、一番大事な時に、彼女に言えなかった。

多分、一生忘れられない僕の失敗の一つになると思います・・・

 

 

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前回の「転移再発とタモキシフェンの関係」を少し補足します。

前回のブログを読んで下さった方の中には、突っ込みどころが多いと感じられた方もいるかもしれません。

僕が書く文章はどうしてもだらだらと長くなってしまう傾向がるので、前回のブログではあれ以上補足的なことを書く余裕がなくなってしまいました・・

な、なるべく簡潔に言いたいことをまとめるように努力していこうと思っています。すみません。線虫も途中で出てきます・・

 

まず、前回のブログではタモキシフェンはがん細胞を直接的には殺すことが出来ない、ということを前提に書きました。ですが、がん細胞を直接的には殺すことが出来なかったとしても、間接的にはがん細胞を殺すことはできるかもしれません。

タモキシフェンの効果の説明として、「がん細胞の栄養となるエストロゲンとの結合を阻害する」というような表現がされる場合があります。栄養が届かなくなるわけですから、それだけでがん細胞が消滅する可能性もありますね。

ただ、腫瘍を形成してしまったような乳がんが、タモキシフェンの効果だけで消滅することは稀なようです。

もしかすると、「微細な転移巣」ならば、微細の度合いによって、タモキシフェンだけで消滅するのかもしれません。微細な内にタモキシフェンなどのホルモン療法で増殖を止めれば、その人の免疫系などの攻撃でがん細胞が消滅する可能性もあるのかもしれません。

その辺りのことはまだ分かっていませんが、そういう効果も含めた数字が、タモキシフェンの公式に発表されている転移再発率を下げる数字なのでしょう。

 

もし、転移巣が小さい内にタモキシフェンを飲めばその転移巣が消えるということが分かれば、タモキシフェンの重要度が今よりもさらに上がるはずです。

逆に、転移巣の大きさに関わらず、タモキシフェンはがん細胞の増殖を抑えるだけで、がん細胞を殺すことはないと分かれば、「タモキシフェンを転移してから飲み始める」ということが現実的に選択肢としてあり得ることになるかもしれません。

今よりも小さい段階でがん細胞の腫瘍が発見できる技術が確立されれば、以上のようなことが分かるかもしれません。期待するところです。

 

この「微細ながんの腫瘍まで発見できる技術」ですが、少し前にニュースになっていました。九州大学から派生したベンチャー企業と日立製作所の共同研究で、患者の尿のにおいに線虫が反応するかしないかで、体内のがん細胞の有無を知ることができる、というものらしいです。

これはがんの腫瘍がどこにあるかは分からないのですが、どこにもないという判定はできるはずです。この検査の精度が高ければ、原理的に乳がんの手術後に微細転移があるかないかの判定ができるはずです。

そうすれば、乳がんの手術後に、抗がん剤治療もホルモン療法もやらなくてもいい患者の割合が増えるはずです。

100%の精度でなかったとしても、ある程度の高い精度で実現できれば、現在よりも、抗がん剤治療やホルモン療法をやった時の効果が高いと予想される患者と、効果が低いと予想される患者がはっきりするはずです。

「微細転移がある患者に対してだけ、抗がん剤治療やホルモン療法などの全身に対する治療をやる」という理想の状態に近くなるはずなのです。

 

また、手術の時点で微細転移がある=すでに転移している患者についても、それがはっきりと分かると大きなメリットがあります。現在の標準治療よりも、副作用も効果も高い強い治療を初期の段階から行えることになります。

現在の乳がんの標準治療では、すでに微細転移があるかないかが分からず、その微細転移がある可能性の大小で、予防的治療の強さを決めている状態です。

微細転移の有無が分かれば、確率的にではなく、100%か0%で、治療を行うか行わないか、はっきりできることになります。

がん細胞の転移が微細な内に抗がん剤治療やホルモン療法などを行うメリットは大きいはずです。逆に、転移が一切ないのに、抗がん剤治療やホルモン治療を行ってしまうデメリットは大きいはずです。

その二つの体の中のごくわずかな差を判別できると、乳がんの治療方法は大きく変わる可能性があります。

 

 

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彼女の乳がんはルミナールAで、手術後無治療ならば予想される転移再発率は10年間で20~25%と説明を受けました。

そして、タモキシフェンを5年間飲むことによって、それが40%~50%くらい減らせるということでした。

別の医師に聞いたところでも、大まかには同じでした。なので、この数字は信頼性が高いと思われます。

しかし、「タモキシフェンを転移してから飲み始める」でも書いたことなのですが、タモキシフェンには遠隔転移自体を抑える力はありません。タモキシフェンはがん細胞を直接的には殺すことが出来ないです。

40%~50%も転移再発率が減らせるというのはとても大きいことだと思います。なぜ、直接的にがん細胞を殺せないタモキシフェンが、乳がんに対して高い効果を発揮するのでしょうか。

 

まず、40%~50%転移再発率が減らせるといっても、それは10年間での話です。本来10年以内に転移再発するところが、10年以降で転移再発するだけの分が、この「40%~50%」に含まれていると思われます。

これはタモキシフェンの服用年数の推奨を5年間から10年間に延ばすかもしれないと言われていることからも、示唆されています。

つまり、5年や10年、そしてそれ以上ととても長い期間の話なので、実感することは難しいのかもしれませんが、タモキシフェンの効果は乳がんの進行を遅らせるだけだという事実があるのです。医者はあまりその辺りを説明しないですが・・

タモキシフェンはあくまで乳がんの進行を遅らせるだけで、転移を阻止することはできないし、乳がんのがん細胞を殺す力もないです。

これはとても嫌な事実です。ですが、その事実によって、乳がんの治療方針や患者の乳がんに対する見方が変わる可能性があります。なので、僕は重要な事実だと思います。

 

このことによって分かることで、まず重要だと思われることは、タモキシフェンは残念ながら転移再発してしまった場合の方が飲んでいた価値が高かった、と言えることです。

「彼女はすでに転移しているかもしれない」の回のブログでも書いたことですが、乳がんで手術した後に転移再発が出る場合は、手術した時点ですでに微細な転移巣があったことになります。手術をしてがん細胞は取ったわけですから、当たり前ですが、その後にそこから転移はしません。

そして、手術した時点からタモキシフェンを飲んでいたわけですから、すでにあった微細転移に対して、タモキシフェンの「乳がんの進行を遅らせる」という能力を100%発揮していたことになります。

タモキシフェンを飲んでいたにも関わらず転移再発してしまった場合は、タモキシフェンの飲んでいなかったら、間違いなくもっと早く乳がんの転移再発が発見され、進行が早まっていたことになります。

そして、これにさらに付け加えると、転移再発を発見した以降も、それまでタモキシフェンを飲んでいたことによって、タモキシフェンを飲んでいたかった時と比べて、乳がんの進行が遅くなる可能性があります。

タモキシフェンを5年間服用するのと、10年服用するのを比べると、10年服用した方が効果が強いのですが、その差が15年目まで以上出る、という原理からそう言えるのではないでしょうか。

転移再発が出るまでの期間を延ばし、そして転移再発が出てからの進行も遅らせる。タモキシフェンは再発転移を抑える薬として認識されているのですが、むしろ再発転移した場合にその進行をすでに抑えていた薬、なのです。ちょっと日本語がおかしいですが。

 

これに対して、タモキシフェンを5年間飲んで再発転移が出なかった(発見されなかった)場合を考えてみます。

タモキシフェンを飲んで再発転移が出なかった場合に、その意味を大きく三つに分けることができます。

一つ目は、手術した時点でも今でも、微細な転移は一切なく、まったく転移はなかった可能性になります。はっきり言えば、この場合、タモキシフェンは飲み損です。

ですが、微細な転移巣を発見する医療技術が今のところありません。今の技術では、転移している可能性があるだけで、タモキシフェンを飲むしかないです。

おそらく、将来的には、微細な転移巣を発見できる技術も開発されるでしょうから、「あなたは転移がないので、タモキシフェンや抗がん剤などの全身に対する治療はしなくていいです」という診断が出るようになるはずです。

 

タモキシフェンを飲んで再発転移が出なかった場合で考えらえる状態の二つ目は、その時点では転移が出ていないものの、残念ながらいずれ転移が出てきてしまう場合です。

これも、残念ではありますが、タモキシフェンの乳がんの進行を遅らせるという効果が確実に発揮されている状態だと言えます。タモキシフェンを飲んでいなかったら確実に乳がんの進行は早まっていたはずですし、転移を発見した以降も、タモキシフェンを飲んでいなかったことに比べれば、進行が遅くなっているはずです。

 

タモキシフェンを飲んで転移再発が出なかった場合で考えられる三つ目は、タモキシフェンを飲んだことによって、微細な転移巣の進行が最大限に遅くなり、転移が発見されるまでの年数が天寿を超えることです。

あまりに乳がんの進行がゆっくりになり、ほぼ進行しなくなったのと同じ状態です。がん細胞が体の中にあり続けるのですが、それが分からないために、根治したことと同じ状態になっています。

タモキシフェンで乳がんの転移再発率が大きく下げられる理由は、この状態にあるのではないかと推測することもできます。

 

タモキシフェンは抗がん剤のような直接がん細胞を殺すような薬とはまったく違う経路で、転移再発率を下げることができる薬だと言えます。

 

 

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