前回のブログで、彼女のお母さんの乳がんの治療は温存手術をする方向になったことを報告させてもらいました。

医師や看護師の説明を聞いて、お母さんの乳がんについて新しく分かったことがいくつもありました。

また、高齢者の乳がんについての一般的な話についても分かったことがあるので、少しずつ書いて行こうと思います。

 

まず、僕が気になっていた、手術の前に針生検をせずに細胞診のみで乳がんの確定診断としたことについて説明を受けました。

細胞診の結果については「陽性」となっていただけでクラスの表記はないようでした。そういう細胞診なのでしょう。

いずれにせよ、やはり画像と合わせての診断で信頼性が上がっているような話でした。

医師の説明は全体的に感じが良く丁寧なものだったのですが、正直に言うと細胞診の説明についてだけは少し中途半端な印象を受けました。

「擬陽性」についての説明もいまいちでしたし。

「うちの病院はこれでやってます。他の病院のことは知りません。」的な感じの話ぶりでした。

細胞診や組織診の信頼性などの話は、病理医の領分なのでしょうか。

彼女が自分の乳がんの時の話を聞かれて「私は最初に針生検でした」というと「それは〇〇大学病院さんが(画像診断の)自身がなかったのでしょう」という答えでした・・

まあ、確かに彼女の乳がんの場合は、医師から「がんかどうかは半々くらい」という説明がありました。

つまり、話を総合すると、画像での診断で非常に強く乳がんを疑われる場合は針生検をせずに細胞診にとどめる、という手法があるということみたいです。

 

上記の話をしている最中に、お母さんが午前中に撮影した造影剤を使ったMRIの写真が診察室のパソコンに送られてきました。

これを見て、医師は「お伝えしていたように、腫瘍が2つあります。そしてその二つの間に、さらに小さい腫瘍のようなものがいくつか見えます。これは乳管に沿ってできているようです。」という説明になりました。

こちらとしては、衝撃の強い結果でした。

ですが、この後にすぐ「これならば、温存手術ができるかもしれません。」という言葉が出て、前回のブログのような感じになった次第です。

お母さんの乳房が大きい方だということと、腫瘍の場所が乳房の上の方だったことが、温存手術の条件にあっていたようです。

 

前回のブログで書いたように、僕はお母さんの少し悲しそうな顔を見ていて、具体的な説明の一つひとつはあまり気にならなかったです。

ですが、よくよく思い出してみると、一つはっきりと気になったことがありました。

それはお母さんの気持ちの問題に関わる内容です。

医師と看護師の説明では「温存手術をできるのならば、温存手術をした方がいい」という感じが随所にありました。

強制するような言い方はできないので、お勧めするような言い方です。(お勧めするともはっきりは言えませんが。)

ただ、医師が温存手術を勧めている理由を注意深く考えると、「高齢者だから」ということは間違いないようでした。

温存手術での手術後の乳房の形は、医師には保証することはできません。ましてや、今回の場合、この医師が手術をするわけではないのです。

僕は確認のために診察の最後に「温存と全摘+再建を比べた場合、温存の方が治療全体での体への負担は少ない、と思っていいのでしょうか?」と聞きました。

そうしたところ、医師は感情を込めた語気で「ええ、それはそうです。」と答えて、「(だからお母さんに温存手術をした方がいいよと言ってあげて下さい)」と言っているように感じました。

(温存手術ならば一般的に術後は放射線をかけます。これは通常25日間も病院に通うという、高齢者には大変なものです。ただ、この病院では高齢者でかつ手術の結果に断端陰性の場合は放射線は省略するという説明を受けました。)

 

お母さんは美容の意識がとても高い人で、手術後の乳房の形はかなり気にしています。

なので、医師が高齢者の体への負担を考えてお母さんへ温存手術を勧めることと、お母さんの希望が少しズレているように感じました。

僕もお母さんの乳がんの話を聞いた当初は、お母さんには温存手術を勧めるべきだと思っていました。

それにはいくつも理由がありますが、お母さんの美容意識も込みで、温存手術の方がいいのではないかと思っていました。

ただ、今回の検査の結果によって、お母さんの乳がんは乳管内の進展があることが分かりました。

このような場合に温存手術をすると、手術後の乳房の形がどうなるのかは、当たり前ですが素人の僕に想像することは一切無理です。

この条件での手術が、お母さんの希望を満たしているのか少し心配です。

 

幸いなことに、この病院では過去の温存手術の結果の写真を多く保存してあり、それをお母さんに見せてもらえました。

その中には、お母さんのような乳管内進展があった例も含まれていたようです。

医師の診察が終わった後に、たっぷりと時間をとって別室で看護師さんがその写真を見せながら丁寧に説明してくれました。

とても親切な看護師さんの多い病院でした。看護師さんが一人の患者にかかり切りになってしまっても、問題の起きない体制だということです。

乳がんの治療は他の病気に比べて患者の心のケアが重要だと思います。

その意味でも、とてもいい病院でお母さんが手術してもらえることは嬉しい限りです。

 

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彼女の地元に行って、お母さんの診察に付き合ってきました。

結論から書くと、お母さんは温存手術をすることになりそうです。

一応まだ手術方法を考えている最中で、一週間以内に決めて病院に連絡する予定になっています。

診察でMRIの結果を医師が見て、説明と共に温存手術が可能だと告げられました。

前回までのブログで書かせてもらったように、お母さんの乳房のしこりは2か所あります。

それでも、乳腺にそって紐状に切除することで、なんとか温存手術が可能らしいです。

 

医師を始めてとして、看護師の人も温存手術ができるという説明を患者の(お母さんの)喜ばしいこととして話している感じでした。

そして、娘であり乳がん患者としては先輩の彼女も、お母さんが温存手術が可能だという説明を聞いて喜んでいるようでした。彼女のお父さんも、あまり話が分かっていない様子ながらも安心をしている様子でした。

診察室の中が喜ばしい雰囲気になっている中、当人のお母さんは浮かない顔をしているように、僕には見えました。

 

この時、僕は頭の中でいろいろと考えていました。気になることが多かったです。

 

一番気になったのは、MRIの結果を見て温存手術が可能だとおっしゃっているこの先生に聞いたところ、手術をする先生は別だと言っていたことです。

MRIはこの日の午前中に撮影されていて、この診察の最中に結果がパソコンに転送されてきました。つまり、この医師が初めて見たことになります。

温存手術というのは、医師の腕に頼る部分が大きいです。

温存手術で局所再発を防ぐためには、実際のがんのしこりよりもマージンを取って大きく切除する必要があります。

ですが、大きく切除し過ぎると、今度は術後の乳房の形が悪くなってしまい、乳房をせっかく残す意味が低くなってしまいます。

乳がんの温存手術では「取り残しがない範囲でなるべく小さく切除する」という非常に繊細なことが要求されます。

僕は、実際に自分で手術をする医師の所見で、温存手術が可能かどうか判断すべきなんじゃないかなと、この時思っていました。

 

ただ、その時に僕はそう思ってはいましたが、それ程強い疑問としてそれを思っていたわけではないです。

「まあ、がんセンターの乳腺科の医師なのだから、経験が豊富で、こういう例をたくさん見ているのだろうな」と思い浮かべながら、なんとなくその場にいました。

 

温存手術について、良いことも多いですが、注意しなければいけないこともたくさんあります。

次々に医師と看護師から温存手術について説明されたのですが、それらを聞いていて、僕は少しずつお母さんが可哀そうな気持ちになってきました。

僕がそういう気持ちになったのは、おそらくお母さんがそう感じているのが僕に移ったんだと思います。

 

もしお母さんが事前に乳がんのことをいろいろ調べて知識を得ていて、そして温存手術を望んでいたのであれば、温存手術が可能だという結果を知った時に喜べたのかも知れません。

ですが、お母さんには、それはあまりないようでした。

 

乳がんの手術をしたい人なんていないと思います。自分が乳がんであるという事実を受け入れたくない患者だっていくらでもいるはずです。

まだ、自分の乳がんに対して完全に受け入れる体制ができてない彼女のお母さんにとって、手術の方法を自分で考えて決めることは辛いことなのかもしれません。

 

今更ですが、これが普通で当たり前なのだと感じました。自分の病気をしっかりと把握して、前向きかつ精力的に治療できる患者などは、ごく一部です。

多くの患者さんは、治療などはしたくないと心の奥では思っていても、しないとだめだから嫌々治療をするものでした。

がんのような大病ならば、なおさらそうなるのではないでしょうか。

 

僕の彼女の感性があまりに一般的な女性と違っているので、この当たり前のことを少し忘れていたような気がします。

「治療しないともっと悪くなってしまう」と言われた場合、多くの患者さんは悲しい気持ちになりますよね。

それは、頭では治療しなければならないと理解していても、気持ち的には治療などしたくないということがあって、葛藤が生まれているからです。

ですが、僕の彼女の場合は「治療しないと、もっと悪くなってしまう」と言われても、「それでも、やりたくない治療はやらない」「私は他の人と違うので、悪くならない」と本気で言う人です。

口で言ってるだけではなくて、本気でそう思っているのです。凄まじい胆力です。多分お父さんに似たんだと思います・・・

彼女のお母さんも彼女と同じように強気なところが多いのですが、本質的な部分では一般的な女性の感性に近い人のようです。

正直に言うと、お母さんが温存手術が可能だと聞いて彼女がとても喜んでいるのに、本人のお母さんが余り喜んでいない様子を見て、僕は彼女に対してもう少しお母さんの気持ちに寄り添ってあげられたらいいのになあ・・と思ってしまいました。

彼女自身が自分で温存手術を受けていて、良い結果を出せているので、これは仕方のないことなのかも知れませんけれど。

 

お母さんの乳がんの状態に関する具体的なことは、次回以降のこのブログで書かせてもらうことにします。

お母さんがお世話になっている某がんセンターの医師や看護師の様子や、センター全体の雰囲気などのも、いずれ詳しく書くことにします。とても良い感じでした。

あそこならば、お母さんの治療は安心できると思います。

 

しかし、診察室の中でお父さんの携帯電話が鳴りだした時にはドキっとしましたが、その電話をとって普通に話し出したお父さんにも驚かされました。

彼女の胆力は間違いなくお父さんから受け継いでいるようです。

 

 

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彼女のお母さんの診察に付き合うことになりました。お母さんの次の診察は来週です。

彼女と二人で行きます。彼女の実家は少し遠く隣の地方になりますが、何とか日帰りで行って来ようと思っています。

 

前回までのブログに書かせてもらったように、僕は彼女のお母さんの乳がんの状態について、いろいろ確認したいことがありました。

お母さんと電話で話した時には、こちらから多く質問をするようなことはしませんでした。

全体としてはお母さんが自ら話すことを聞く感じにしておいて、一つ二つだけ重要だと思われることを聞きました。

手術の術式についても、針生検の有無についても、すでに決まっていることなのかどうかはっきりしない感じでした。

なので、とにかく僕か彼女かが主治医に話を聞くことが必要だと思っていました。

お年寄りが医師の説明をあまり理解できない時に、家族がしっかり聞いてあげるようなことは、乳がんに限らずよくある話だと思います。

(今回のことは、僕が家族ではないので話が少しややこしくなりました。もちろん僕が行かなかったとしても、彼女は一人で帰省してお母さんの診察に付き添います。その場合は僕が彼女に何を正確に確認すべきかを予め伝えておくつもりでした。ただ、彼女の乳がんの治療の際は僕が基本的に付き合っていたので、彼女は医師の話を聞くことを、ある程度僕に任せていた感があります。これは良くないことで、反省すべきですね。そういった経緯で、彼女は僕にも医師からのお母さんの乳がんの説明を聞いて欲しかったようです。また、このブログにも再三書かせてもらいましたが、彼女は乳がんの治療で主治医と信頼関係を築くことができませんでした。そういった理由でも、彼女はお母さんの乳がんの話を主治医とする時に、僕にもいて欲しかったのかもしれません。)

 

僕が行くことに関しては、話が順調に進みました。

ですが、少し事情が変わりました・・・

彼女が何度も電話をして、お母さんから少しずつ話を聞いていたのですが、最近になって非常に重要なことが一つ分かりました。

お母さんの乳がんのしこりは二つあり、一つは1.5cmくらいで、もう一つは小さいと聞いていたのですが、その小さい方のしこりも1cmくらいはあるらしいのです。

僕は「小さい」と聞いていたので0.5cmくらいだと想定してしまっていました。1cmのしこりは「小さい」とは言わない、と思っていました。

お母さんは「99%乳がんだろう」と、視触診とエコー、マンモの画像の検査の段階で言われていました。

なので、針生検をせずとも、細胞診で乳がんの確定診断となったのだろうと予想をしています。

細胞診だけでは1%以上の確率で擬陽性の判定が出てしまう可能性があるのですが、画像での診断の確度が高いことからの最終的な診断なのだと思います。

ですが、それは1.5cmの方のしこりの話です。

「小さい方のしこり」まで細胞診で確定の診断としてしまってよいのか疑問があったのです。

「小さい」ということは、画像からそのしこりが乳がんの特徴を備えているかは分かりにくいはずです。それに、そもそも小さい良性の腫瘍などはいくらでもあるはずで、しこりが小さければ小さいほど、一般的に良性の可能性が相対的に上がるはずです。

ですが、1cmとなると、そういったことはあまりないのかもしれません。

 

「乳がんの可能性が非常に高い1.5cmのしこりと、もう一つ小さいしこりがある」

という説明の言葉だけで、僕が勝手にいろいろお母さんにとって都合のいい方向に推測してしまっていました。

電話で話した時に、僕の勝手な推測をお母さんに語らなくてよかったです。

 

残念ですが、こうなると僕の役目はあまり多くないです。

このことも、前回までのブログで再三書かせてもらいましたが、僕はまず治療法の選択肢を全て確認して、それをお母さんに分かりやすく説明することが重要だと思っていました。

ですが、小さい方のしこりも1cmだとすると、温存手術の選択肢はないと思われます。

ごくわずかにですが、お母さんは手術をまったくしない選択肢を考えるかもしれませんが、その場合を除いて、お母さんが治療で悩む場面はあまり来ないと思います。

お母さんは美容に対する意識が高いので、全摘+再建を選択すると思います。多分全摘のみと迷うことはないでしょう。

 

術後の再発予防の全身治療に関しても、多分お母さんはあまり悩まないと思います。

やりたくない治療はやらないとすっぱり決める人です。おそらく抗がん剤治療は拒否するでしょう。

そして、今のお母さんの乳がんの状態からすると、例え抗がん剤が適用される乳がんのサブタイプであったとしても、医師も無理に勧めることはしないはずです。

 

なので、今回僕は医師の説明を覚える役目になります。

彼女と主治医のやり取りのような、何と言うか、酷いことにはならないでしょう。

お母さんがお世話になる病院も彼女が手術をしてもらったようないわゆるがん拠点病院です。その全体の雰囲気や、医師や看護師、技師の対応はどのようなものなのか、よく見て来ようと思います。

やはり、患者が多くとても忙しい感じなのでしょうか。

 

 

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