もうすぐ、彼女のお母さんの病理検査の結果が出ます。

その病理検査の結果を受けて、お母さんは術後の全身に対する治療方針を決めるわけですが、その時に僕がどうするべきかを考えておこうと思います。

当たり前ですが、彼女が治療方針を決めた時とは、僕の立場は違います。

 

彼女が術後に全身に対する治療方針を決めた時に、僕は僕の考える治療方針を彼女に無理強いするつもりはありませんでした。

ですが、結果的に随分と彼女ともめました。

ついでに、主治医とも、もめました。

あの時になぜ話し合いが上手くできなかったのかを、少し思い出してみようと思います。

 

僕は基本的に誰かに何かを強く勧めることは、好きではないです。

ましてや、病気の治療方針ほど重要なことを無理強いしようなどとは、思ってもいないことです。

そう、自分では思っていたのですが、今から半年くらい前に彼女の乳がんの治療方針を話し合っていた時には、自分では気づかないまま、僕は彼女に自分の考え方を押し付けていたようでした。

僕はまず、考えられる範囲で、彼女が取れる治療方針の選択肢をあげました。

そして彼女に「よく考えて、この中から自分で治療方針を決めて」と言ったつもりでした。

ただそれだけのことをしたつもりでしたが、彼女から見ると、僕が自分の考えた治療方針を強く勧めているように見えたのです。

 

なぜこんなことになったのか、今考えると意外と簡単に説明できます。

ですが、当時は本当に必死でした。

まったく話し合いが出来なかったので、本気で彼女と別れようと何度も思いました。(「突然ですが、彼女と別れるかもしれなくなりました・・」「彼女と別れるかもしれません2」)

なぜ、乳がんの治療方針について、彼女と建設的な話し合いをすることが難しかったかというと、乳がんの治療は確率的にしか結果が分からないことだからです。

確率的にしか治療結果が分からないということは、どんなに万全に治療をしたとしても、乳がんの再発する可能性はゼロにはなりませんし、逆に完全に無治療だったとしても、早期の乳がんであれば、かなり高い確率で再発はしないということです。

どちらを取ったとしても、「裏目」が存在してしまうのです。

そして、彼女と僕では、決定的にその「裏目」に対する考え方が違いました。

 

僕の考え方では、乳がんの治療に対する姿勢はこうなります。

「どんなに万全を期しても、乳がんの治療は裏目に出てしまう可能性がある。だからこそ、全ての選択肢を一つひとつよく検討して、しっかりと考えて自分で治療法を選択すべきだ。」

僕の考え方では、仮に再発してしまった場合のことを想定すると、万全を尽くして治療をしたのに再発してしまったのならば、あきらめがつきます。

しかし、彼女はこの部分が真逆だったのです。

彼女は「もし再発した時のことを想像すると、タモキシフェンを飲んでいたのに再発してしまったのならば、我慢できないだろうと思う。もしタモキシフェンを飲まずに再発したのならば、まだあきらめはつく。」と言っていました。

 

僕は彼女に、ホルモン療法や抗がん剤治療、放射線治療をした場合のそれぞれの予想される効果と副作用を細かく説明して、「とにかく自分で良く考えてくれ」と言いました。

そのこと自体は問題なかったように思います。

ただ、彼女はそれぞれの治療法に対して、よく考えるのではなく、初めから持っているその治療に対するイメージで、その治療をやるかやらないかを決めているように僕には見えました。

僕はその様子をみて「もっとよく考えて、自分が後悔しない答えを出してくれ」と注文を付けたのです。

その注文が彼女には負担になっていたようでした。今になって思い返すとそう感じます。

 

僕は「よく考えた方が、少しでも良い選択になり得る」→「後悔しない」という図式が頭の中にあったのです。

ですが、さきほど書いた彼女にとっての「裏目」の定義が僕とは正反対だったため、「よく考えて答えを出す」→「それが裏目に出る」→「後悔の度合いが高くなる」という図式が彼女の頭の中にはあったようです。

辛いことがあった時に、それをどうやってあきらめるかは、その人次第です。

そのあきらめ方を人に強制はできません。

僕は姉が亡くなった直後に、彼女に「日にち薬」という言葉を言われて、反発した覚えがあります。

自分の心の整理をつけるのは自分です。そのやり方は自分に一番負担がかからないやり方にすべきです。

乳がんの治療で「どの治療法の選択肢を取れば、再発した時に一番後悔しないか」を基準にすることは、僕の考え方であって、彼女に同じように考えてもらうべきことではありませんでした。

 

お母さんの病理検査の結果が出れば、病院側から治療法の選択肢が提示されて、主治医と話し合い、術後の再発予防の治療法を決めることになります。

その時に、僕と彼女はお母さんにアドバイスをします。間違いなく、アドバイスはします。

僕と彼女がアドバイスする内容が、お母さんにとってありがたいものになるかどうかは、お母さんの心の整理はお母さん自身がするものだということを前提に、話し合いができるかどうかにかかっているのかもしれません。

 

 

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