僕は彼女が乳がんになるまでは、がんについての知識があまりありませんでした。

彼女が乳がんの診断を受けてからは心配になり、ネットで検索をしたり本を読んだりして乳がんの知識を集めました。

実際に診察や治療を受けた医師からもいろいろ聞きました。セカンドオピニオンにも行きました。

それらで知りえたことを考え合わせると、乳がんは不治の病ではなくなりつつある、というのが僕の印象です。

 

乳がんはいまだ確実には治せる病気ではありません。特に他の臓器に乳がんが転移してしまうと、非常に治療しにくくなるようです。

ただ、治療しにくくなるとは言っても、確実に進行していくというものでもないです。ステージ4でも乳がんを生活の支障とせずに暮らしていらっしゃる方も多いようです。

また、現在乳がんはステージ3までは「標準治療」と呼ばれる治療のガイドラインが定められています。

標準治療は世界的な乳がんの臨床的な研究や統計が共有されています。標準治療のそれぞれには、「この治療をすると、~%再発率が下がった」のような根拠のある研究があるようです。

 

つまり、現在の乳がんの治療は、どの乳がんも確実に治せるという治療法は存在しないですが、どの乳がんにもその乳がんが進行することを確率的に防ぐ手立てはあるということです。

現在の乳がんの治療は確率的にしか行えませんが、乳がんの進行を防げる確率は治療法の開発によって上がっている、ということです。

治療法の選択肢が増え、それらの治療法の結果が世界的に共有されているようなのです。

 

僕の彼女の乳がんの場合も、手術後の病理検査によって「何も治療しなければ20%~25%の再発が予想される。ホルモン療法をすると、その再発をする可能性が約40%下げられる」という風に確率的な数字で表されました。

手術で取り出したがんの腫瘍を細胞や組織として分析し、詳細な結果が出ます。その結果にしたがって、乳がんが進行してしまう可能性や、それぞれの乳がんのタイプにより細分化された治療法の効果が予想されるのです。

 

ただ、この「確率的な治療」というのが、なんとも言い難い微妙なものではあります。

人によっては「確率的にしか治療できないということは、確実に治るとはいないのではないか?」と必要以上に不安になってしまいます。

そうすると、心配になり、あらゆる治療法を全部やってほしいということになる。

本来、確率的な効果を期待してやる治療なのに、確率的には期待できる効果が薄い治療法まで全てやって欲しくなってしまう。

一つひとつの治療法は副作用も軽くはないです。あまり治療が過度になると、問題が出てきてしまう場合があります。

 

逆に僕の彼女のように、「何も治療せずとも確率的には治る可能性の多いのだから、副作用がある治療はしたくない」と思う人も出てくる場合もあります。

僕の彼女は自分の体や健康に対する恐怖心が異様に少ない人なので、稀なケースだとは思います。

ですが、彼女の主治医に聞いてみたところ、無治療を望む患者は、彼女以外にもごくわずかにはいるようです。

完全に無治療を望む人が彼女以外にもいることに驚きました。そして、ということは完全に無治療ではなく、最低限度くらいの少ない治療を望む人はもっと多いということになるでしょう。

 

そして、乳がんに対する治療法の進化と同時に、乳がんの検査をする機器の改良も日進月歩のようです。

確率的にしかできないという現在の乳がんの治療法の最大の欠点が、検査機器の進化によって補われる可能性があります。

現在の乳がんの治療は、乳がんのがん細胞が体の中で広がってしまうことを阻止しようとするものです。転移の阻止です。

そして、現在分かっていることによると、乳房にできた乳がんの腫瘍がまだ小さい段階で、すでに体の他の場所にがん細胞が広がってしまっている可能性があるらしいのです。

彼女はすでに転移しているかもしれない」の回のブログで書いたことなのですが、乳がんのがん細胞の成長の速度から逆算すると、手術をした段階ですでに転移するかしないかは、ある意味で決まっています。

もしそういったことが検査機器の進歩によって確認できるようになったならば、乳がんの治療方法は激変することになるはずです。

現在の乳がんの治療は、将来転移する可能性の大きい患者に対して抗がん剤を使ったり、他の治療法を行ったりして、転移を防ごうとするものです。

転移するかどうか分からない内に、先に副作用がある治療を予防的にしているのです。

もし、検査機器の進歩によって、将来転移するかどうかが今より高い精度で予想できるようになったら(=ごく小さい転移巣が発見できる検査機器が登場したら)、転移すると予想される患者だけに、現在よりも強い治療をして、転移しないと予想される患者には完全に無治療で済ませる、ということができることになります。

 

単に検査機器の精度が今よりも上がるだけで、乳がん治療の効果が現在より高くなって行くことは確実です。

そして、免疫系からのアプローチや、がん幹細胞の研究、新しい分子標的薬の相次ぐ認可など、乳がんを治療するための研究と臨床的なデータの蓄積が進んでいるようです。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

彼女と小林麻央さんの訃報について話をしました。

彼女は麻央さんのブログを読んでいたようです。

麻央さんについて聞いてみたところ、彼女は明石家さんまさんが好きで「恋のから騒ぎ」を初代(?)から見ていて、麻央さんは姉妹で出演していて~・・

と、思い出のようなことをたくさん語ってくれました。

麻央さんについて、彼女はいろいろ詳しい様子でした。

彼女は麻央さんのニュースによって自分の乳がんの恐怖が増しているというようなことは、少なそうでした。

もともと、彼女は自分の乳がんについて無治療を望むような豪胆な人なので、今回の麻央さんのニュースで、自分の乳がんの再発に過敏になってしまうようなことはないのかもしれません。

僕としては、そのことで取りあえず安心できました。

 

このブログで何度か書いていることなのですが、どうやら彼女が乳がんになったことを恐れてしまったのは、彼女自身よりも僕の方だったようです。

彼女は自分の体の怪我や病気などに耐える力が異様に強いところがあります。

なので、彼女自身があまり乳がんを恐れていなかったせいもあって(?)、彼女本人よりも僕の方が乳がんを恐れて、その結果として、僕は乳がんに関する知識を必死に集めました。

前回のブログ「乳がんを心配する方へ」でも書いたことですが、乳がんは正しい知識をつけることによって、不要な不安の大部分が解消されます。

それを僕は身をもって体験したのですが、元々精神的に強い彼女には、それを体験する機会はなかったようです。

 

彼女が乳がんの診断を受けた時期とほぼ同時期に、僕の母は肺がんの疑いがあり、いくつかの病院で肺がんの検査をしていました。

最終的に彼女が手術してもらった病院で、僕の母も肺がんの検査をしています。結果は、母は肺がんではなく、肺炎でした。

彼女と母は、それぞれ地元で最寄りの医院から始まり、いくつもの病院でいくつものがんの検査を受けました。

トータールで10人以上の医師から検査の結果の所見や、がんの検査や治療に対する話を聞きました。僕はそれらの大部分に付き合いました。

それらについての僕の感想は、必要以上に患者を不安にさせるようなことを言う医者が予想外に多かった、ということです。

 

乳がんは、乳がんの可能性のある腫瘍から細胞の一部を太い針などによって取り出して、それを顕微鏡で実際に見て、がん細胞があると確認されるまでは確定診断は出ません。それが生検と呼ばれるものです。

現在ではマンモグラフィーやエコー、CTやMRIなどあらゆる画像での乳がんの検査が可能ですが、画像だけでは乳がんだとは診断はされません。それらはあくまで針で生検をするまでの予想に過ぎません。

これは乳がんだけでなく、僕の母の場合も含む、すべてのがんに共通することです。

ですが、画像による検査の段階でも、結果は医師から知らされます。エコーやマンモグラフィーの画像を医師と患者が一緒に見ながら、医師が可能性の範囲で所見を述べます。

乳がんに関してあまり知識がない人ならば、医師が視診や触診をして、エコーやマンモグラフィーの画像を見れば、それで乳がんかどうかの判断はできるのでは?と思うはずです。

ですが、この段階では医師には乳がんの可能性がどの程度あるのかの予想をすることしかできず、そのどの程度あるかの予想ですら、まったく合っていない可能性もあるのです。

 

僕は母の検査の時も、彼女の検査と診察の時も、医師の不必要に不安を煽る説明によって不快な思いを何度もしました。

これについて、後にいろいろ考察してみました。どうやら医師側としては「大丈夫でしょう」と言って実際には大丈夫でなかった場合は責任問題が発生してしまうことを回避しようとしているのではないか?という結論になりました。

逆に「危険な状態です。最悪の事態もありえます。」と説明しておいて、実際には大丈夫だった場合に、医師の責任が問われるような大きな問題が起きるとは思えません。

あなたがもし乳がんが心配で、今まであまり乳がんの検査を受けたことがなかったが、これからは受けてみようと思っているのであれば、こういったことが起こってしまう可能性もあると覚えておいた方がショックが少なくて済むと思います。

責任が発生することを恐れて、医師は患者の病状や乳がんである可能性を少し重く見積もろうとする場合がある、ということです。

お互いに何度も顔をあわせる主治医になった医師や、地元で開業をしていて何かとお世話になる開業医ならば、そういったことは少ないかもしれません。

ですが、1年や2年に一度だけ、乳がんの検診だけをする側とされる側の希薄な関係性の中でならば、こういったことは起きやすいかもしれません。

「私はあなたが乳がんの可能性が高いことをちゃんと指摘しました。この後どうするかはあなたの責任です。私の責任ではありません。」と言わんばかりに冷たい口調で、再検査をした方がよい旨の説明を受けると、自分は絶対に乳がんだと多くの人は確信してしまうと思います。

そして、落ち込むこともあるかもしれません。

ですが、そのような過度の心配はまったく必要のない場合があります。

万一乳がんの診断が出たとしても、乳がんは多くのステージやタイプやその他細かい状態に分けられ、大部分の乳がんは命にはかかわらない病気なのです。

画像の診断の時点で心配をする必要はまったくありません。

乳がんで命の心配をするのは、画像診断が全て終わり、針生検やマンモトープ検査で乳がんだと確定診断が出て、その後に手術を受けてがんの腫瘍をメスで取り出し、その取り出したがん細胞の病理検査からがんの状態や手術の状態が全て判明した、その後でいいと思います。

そこまで行かない限り、(余程確実な転移巣を発見するなどを除けば)乳がんでの命の危険性など絶対に分からないはずなのです。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

昨日のブログは予約投稿をしていて、書いている時点では小林麻央さんがお亡くなりになったことを知りませんでした。

心よりお悔やみ申し上げます。

昨日はテレビでは麻央さんのニュースが流れ続けていました。そしてそれと同時に、このブログに恐ろしいほどの来訪者がありました。

確認をすると、このブログだけではなく、乳がんをテーマにしたブログ全てが、昨日は多くの人に読まれていたようです。

少し怖くなりました。

麻央さんがお亡くなりなったことにショックを受けた方が多いことは分かります。ですが、だからと言って僕が書くようなブログを読む気になるような人が増えるとは思えません。

いろいろ考えた結果、小林麻央さんの訃報を聞いて自分も乳がんが心配になった多くの方が、乳がんに関するブログを読んでいるのではないか、と予想しました。

それならば、あらゆる乳がんのケースのブログを読みたくなるのではないでしょうか。

もしその予想が多少なりとも当たっているのならば、僕がこのブログで今書くべきことは、乳がんが心配な人達が知っておけば少しでも役に立つことだと思います。

思い当たることを書いてみることにします。

 

まず、乳がんを心配している女性に一番知ってもらいたいことは、乳がんは正しい知識がないと必要以上に恐れてしまう可能性がある、ということです。

僕は彼女の乳がんの検査や治療に初めから付き合ってきましたが、その中で何度も強い不安におそわれた時期がありました。

しかし、今考えてみると、その不安の大部分は正しい知識があったならば不必要な不安でした。

その不必要な不安の筆頭は、乳がんの進行の速度についてです。

乳がんはがんの中でも進行が遅い部類のがんです。乳がんは数週間~数か月のような期間で「進行してしまうのではないか?」と不安になる必要はありません。

もちろん、治療をするのならば早いに越したことはないのですが、一刻を争って治療するよりも、自分が信頼できる病院や先生、納得できる治療法をしっかり決めてから治療に取り掛かるべきです。

彼女は乳がんの診断を受けてから、転院や手術待ちの期間があり、約4か月後に手術をしました。手術まで時間をかけてしまいましたが、遅くなったことに後悔はしていません。

治療前の検査などで乳がんの腫瘍の大きさが変わる場合があります。1か月以内の検査で乳がんの腫瘍が数ミリでも違っていると、それだけ進行してしまったのではないかと恐くなりますが、それは間違いなく、検査の精度の誤差です。

乳がんはそこまで速く進行するものではありません。

 

また、乳房内にしこりを発見して心配する人も多いかもしれません。ですが、乳房内のしこりの多くは(大部分は)良性のしこりです。

僕の彼女もがんの腫瘍以外に、良性の腫瘍がごく小さいものを入れると5つ以上発見されました。

良性のしこりは悪性(がん)にはなりません。良性のしこりはすべて安全です。

ただ、医者でも良性か悪性(がん)かの判断ができない場合はあります。

その場合は組織を取って検査をする、いわゆる生検をする場合もありますが、医者によっては「数か月様子を見て判断しましょう」と言う場合もあります。

乳がんを恐れる人にとっては「数か月様子を見る」というのは考えられないかもしれませんが、そういうことが行われるのが現状です。

そのくらい乳がんの進行は遅いということの裏返しです。

 

乳がんの患者はここ10数年で倍増していると言われています。その原因として、食事の欧米化や晩婚化などが挙げられています。

ですが、乳がんを見つける検査方法の精度が上がったことも、乳がんが増えている原因の一つです。過去の検査の精度ならば、発見されずに一生過ごされていた乳がんも、今は精密な検査によって発見される場合があるのです。

そして、それらのとても小さい内に見つかる乳がんは治る可能性が高いです。

少し分かりにくい話にはなってしまいますが、乳がん患者が増えていても、完治する可能性も上がっているので、乳がんで死亡する人はそこまでは増えていないことになるのです。

(日本全体の平均年齢も変わって行くので、この辺りの話はさらにややこしくなりますが・・・)

要するに、日本の乳がん患者数が倍増しているといっても、実際に乳がんで命を落とす人はそこまでは増えていないということになります。

 

小林麻央さんの訃報はとてもショッキングで、闘病生活の詳細は痛ましいと感じるかもしれません。

ですが、乳がん患者全体を平均してみると、乳がんは治りやすいがんと言えますし、進行も遅いがんだとも言えます。

現在乳がんは、がん細胞の種類によりタイプが分けられ、それぞれに有効な治療法や薬もあります。

なので、乳がんは過度に心配するべき病気ではないと、僕は思います。

もちろん、最低限度の検診や自己検診はやるべきですが。ですが、それは他の病気や他のがんでも同じではないでしょうか。

 

 

最後までお読み頂きありがとうございます
よろしければ応援クリックお願い致します




にほんブログ村

PAGE TOP