今週の半ばに、彼女の術後1年目の検査の結果を聞きに行ってきます。

心配ではありますが、まだ本当に心配する時期には来ていないと思っています。

今回の検査の結果でもし何か良くないことがあるとしたら、それは彼女が温存手術をした部分での局所再発です。

 

彼女は術後の病理検査は断端陰性となっていたので、もし局所再発があるのならば、乳がんの腫瘍があった部分とは少し異なる場所になるのかもしれません。

断端陰性というのは、嫌な言葉ですが「くり抜いた」部分の外側にはがん細胞が見つからなかったということ。

断端陰性となっても一定の確率では局所再発は起こり得ます。

それがくり抜いた外側の部分以外に再発が認められるのか、それとも検査で外側にがん細胞が発見できなかっただけで、実際にはそこには取り残しがあったのか、どちらなのかは僕には分かりません。

 

もし、彼女に温存手術後の局所再発が認められてしまったら、多分僕は負い目を持つと思います。

彼女自身はそう感じなければ良いのですが・・・

彼女と僕は、術後の治療をどうするか話し合った末に、局所再発予防の放射線治療を受けないと決めました。

受けなかった理由はいくつかありますが、主に、手術で断端陰性となり局所再発の可能性が低かったことと、彼女が仕事をしていて通院しづらいという事情です。

それと、彼女が乳がんの治療を全体的にやりたがらなかったことがあります。

 

温存手術では、乳がんの状態が早期だったり、手術後に断端陰性となれば、局所再発の可能性は低くなります。

彼女が手術をした病院では、過去の彼女と同等の乳がんの状態の患者の統計により、彼女の局所再発率は9%という予想が出ていました。

温存手術後の放射線治療では、約1/3に局所再発を減らすことができます。

なので、彼女が放射線治療を受ける価値は、局所再発率の9%から1/3の3%を引いた、6%分です。

この6%という数字と、他の彼女にとっての放置療法のデメリットを天秤にかけて、彼女は放射線治療を受けないことに決めました。

僕もそれに同意しました。

 

と、いうか・・・

当時僕は、放射線治療よりも、タモキシフェンによるホルモン療法をなんとしてでも彼女に受けてもらいたかったので、正直に言うと、彼女がホルモン療法を受けるのであれば、他は無治療でもなんでもいいと思ってました。

彼女は当時、タモキシフェンを飲みたくないと言っていました。

彼女のタモキシフェンによるホルモン療法の予想される効果は、術後10年間の転移再発を10%以上下げるというものでした。15%も下げるというデータも聞きました。

直接的に命の危険のある転移再発を10%以上も下げることができる治療は、とてつもなく大きいものだと思います。

不謹慎かもしれませんが、タモキシフェンによるホルモン療法の有無の前では、局所再発を6%下げる放射線治療の有無は小さいことだったのです。

 

彼女の乳がんの手術後約1年経った今になって冷静に考えてみても、やはり、彼女がタモキシフェンを飲む決心をしてくれたことがとても大きいので、(これも不謹慎ですが)その代わりとして、放射線治療を受けなくてもいいことにした彼女と僕の判断は間違っていたとは思えません。

某がんの放置療法の著書で有名な医師は「局所再発は、もう一度くり抜けばいい」と気軽に(?)言ってくれたこともありました。極端な発言ですが、これもある意味では事実です。

いろいろありましたが、当時の判断を僕は後悔していません。

乳がんの治療は、手術以外すべて無治療すら望んだ彼女は、僕なんかよりも遥かに後悔していないはずだったのですが・・・

予想に反して、彼女は放射線治療を受けなかったことを少し後悔しているようです。

正確に言うと、放射線治療を受けなかったことを後悔しているというよりは、受けなかったことに少し罪悪感を感じているようです。

 

彼女は僕の言うことはあまり聞きません。僕の言うことも聞きませんが、基本的に周りの人の言うことは、誰の話もあまり聞きません。

ただ、多くの人が言うことは、少し不当に信じてしまうフシがあります。彼女には群集心理の影響が強いようです。

彼女は乳がんの温存手術後に、知り合いや病院の関係者と乳がんの話をするたびに「放射線治療を受けなかった」ことを驚かれたようです。

驚かれるたびに、少しずつ罪悪感がたまっていったようです。

こんなことになることを予想するのは、いくらなんでも無理ですよね・・・

 

標準治療では、乳がんの温存手術後に放置療法を省略することは基本的にないです。

なので、乳がんについて知識のある人に「放置療法をやらなかった」というと驚かれます。

ただ、彼女が手術を受けた病院では、先進的な取り組みとして、乳がんの状態が悪くない場合で断端陰性の場合は放射線治療を省略する場合があります。

だからこそ、「局所再発は9%」という数字を病院側が提示してきたのです。普通は数字に関わらず放射線治療を受けるので、局所再発率の具体的な数字などは出ないです。

彼女と僕は、その「9%」という数字と、彼女の希望や放射線治療を受けた場合のデメリットなどと天秤にかけて、放射線治療の省略を決めたのです。

ですが、そんな詳しい状況をいちいち説明しない世間話の中で「私は放射線治療を受けなかった」というと、必ず驚かれたようですし、場合によっては変な目で見られたこともあったのかもしれません。

 

実は、最近になって、何度か彼女の口から「本当に放射線治療を受けなくて良かったのかな?・・・」というようなことを何度か聞いています。

悲しいですね・・・いろいろ悲しい・・・

こんな状況で局所再発が起こってしまったら、いたたまれないですよね・・・

今回の乳がんの手術後1年目の検査の結果を聞く前に、これらのことについて、もう一度彼女とよく話し合ってから、検査の結果を聞きに行こうと思ってます。

 

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