前回と前々回のブログで、僕は小林麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことを、色々好き勝手に書かせてもらいました。
情報の少ない中で主観的な内容で書いてしまい、読んで下さった方の中に気分を害された方もいらっしゃったかもしれません。
申し訳ありませんでした。
具体的な内容はいくつか書きましたが、全体として僕が麻央さんの乳がんの治療歴について感じたことは、医師との信頼関係が築けなかったのだろう、ということでした。
僕自身が、僕の彼女の乳がん治療を通して「医師との信頼関係を築けなかった」と強く感じているので、それを麻央さんの治療歴に投影してしまっているのかもしれません。
ただ、現在の標準治療と呼ばれる多くの病院で行われている乳がんの治療の流れには、本質的に患者と医師が信頼関係を築けない危険性があると僕は感じています。
残念ながら、現在はまだ100%乳がんを治す治療法はありません。多くの治療法が開発されていますが、それらは、乳がんの進行や再発を確率的に減らすことができるだけです。
なので、乳がん患者に対する医師の説明は、「この治療法をすれば、再発率が~%下がる」などのようになります。全ては数字の話になります。
僕の彼女も、「手術後に何も転移再発の予防をしなければ、20%~25%の可能性で再発します。タモキシフェンを飲めば10%前後再発率を下げられます。」というように説明を受けました。
(まあ、実際はこのように明確には説明されませんでした・・・明確に説明してもらえなかったことで、僕と彼女は主治医に不信感を持ってしまうことになるのです・・・)
基本的に、乳がんの患者に対する医師の説明は確率的な数字を元にします。
また、前々回のブログで書いたように、乳がんは検査の段階でも確率的に処理されます。エコーやマンモグラフィー、MRIなどの画像の検査の結果で、確率的に乳がんの可能性の高い患者だけに、確実に乳がんかどうかを判別するための針の生検を行います。
そして、この確率というものは非常に曲者なのです。
確率に対する感じ方は人によって大きく違います。慎重なタイプの人から見た場合と、強気な人から見た場合だと、同じ数字の率でも全く違って見えます。
僕の彼女は恐ろしいほど強気なタイプで、「無治療で再発率が20%~25%程度ならば、75%~80%は何もしなくても治るということ。私はそれに賭けたい」と当初は言っていました。
逆に、「どんなに副作用があろうとも、転移再発率を1%でも下げられる治療法があるならば、その全てをやりたい」という乳がん患者も多くいるはずです。
つまり、患者によって、医師から提案される(確率的な)治療法の受け取り方が全く違う可能性があるのです。
しかし、医師からすると、副作用と効果のバランスを考え合わせた効率の良い治療法を、正しい治療法として患者に勧めるしかないです。
医師からバランスの良い治療法や検査方法が提案されたとしても、乳がんを強く心配する患者からは「どうしてもっとしっかり(完璧に)検査や治療をしてくれないんだ」と不満が出る可能性があります。
逆に僕の彼女のように強気な患者からは「10%程度、再発率を下げるために長い期間に渡って女性ホルモンを抑えるような薬を飲みたくない」と文句が出るのです。(彼女が今飲んでいるタモキシフェンは女性ホルモンを抑える薬で、5年間服用を続けることが一般的です。)
医師が誠意を持って忠実に職務の全うを目指したとしても、このように患者に不満を持たれてしまう可能性があるのです。
そして、多少なりとも医師側に大人の事情が加わってしまうと、乳がの治療において患者と医師の信頼関係が築けない可能性はさらに高くなります。
乳がんの治療は、医師から患者への治療法の医学的な説明とは別に、患者と医師の治療姿勢に対する話し合いが必要だと思います。
彼女と僕は、主治医と今に至るまで一切話し合いはできませんでした。
「先生から提案していただいた治療法の重要性は分かります。ですが、彼女の心理的な抵抗感から、その治療法はやりたくないです。やらない場合のリスクはどのくらいになるのでしょうか?やらないという選択肢はありませんか?」という問いに対して、
「病院側としての治療法はこれをすることです。患者側が治療を拒否するのならば、治療を病院側が強制することはできません。ですが、治療を受けない場合の責任は持てません。」
という回答以外には一切返ってきませんでした。
僕の彼女は比較的、自分の乳がんを恐れていないです。
ですが、乳がんが発覚してとても心配になる女性は多いはずです。
また、僕にはなかなか分からないことですが、乳がんが発覚して女性としての悩みを持つ患者も少なくないと思います。
そういった乳がん患者に対して、医学的な正論のみを押し付けようとする医師は非常に危険です。
そもそも、乳がんの治療は確率的なものです。
乳がん治療で得られる確率的なメリットの中に、患者本人の心理的なメリットも含めて、全体の治療方針を医師と患者でよく話し合うべきだと思います。
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